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『赤いファミリア』『陸サーファー』など社会現象化した5代目ファミリア
1980年6月に発売された5代目ファミリアは、まさに『時代を作った車』でした。
FRながらハッチバック化による使い勝手の良さで好評を得たものの、デザインが今ひとつ垢抜けなかった4代目の後継として、それまでのメカニズムを捨て去る勢いで全てを新設計。
ジアコーサ式FF(フロントエンジン・前輪駆動)レイアウトを採用して開口部の大きなテールゲートを持つハッチバック車と4ドアセダンの2タイプで発売されるや、動力性能自体は平凡なものの非凡な走りと使い勝手の良さで爆発的大ヒットを記録!
特にイメージカラーとも言える『赤いファミリア』にルーフキャリアでサーフボードを固定するファッション(本当にサーフィンしに行くとは限らない)が流行し、『陸(おか)サーファー』という言葉を生み出す原動力にすらなりました。
そして販売台数は当時の日産・サニーやトヨタ・カローラすらも軽々とぶっちぎる好調を見せ、カローラの開発者が悔しがったと言われたほど。
この5代目ファミリアをもって、マツダは1970年代の経営危機から完全復活を果たし、バブル時代に再度危機を迎えるまで快進撃を続けるのでした。
メカニズムやパッケージングにも要注目
5代目ファミリア成功の要因は、まずウェッジシェイプと呼ばれたクサビ型のシャープなデザインと、広くて開放的なグリーンハウス(キャビン上半分のガラス部分)にあります。
そこでスマートかつ知的な印象をつけておき、乗り込めばエンジンとミッションを直列&横置きするジアコーサ式FFの恩恵で広い車内。
さらにハッチバック車の場合は分割可倒式でリクライニングも独立して可能な後席を持ち、『XG』グレードでは背もたれと側面が柔らかい曲線を描いて連続する『ラウンジソファーシート』を採用。
それに加えて前席をフルリクライニングさせれば後席から足を投げ出せるフルフラットスペースにもなる、居心地のいい空間が誕生します。
とはいえ走りがイマイチであれば売れ行きには影響したはずで、実際にエンジンは平凡極まりない普通の1.3 / 1.5リッターOHCエンジンでしたが、リアサスペンションに採用したトーコントロールサスペンション『SSサスペンション』によって抜群の操縦安定性を実現。
これは一見通常のストラット式サスペンションに見えますが、リンクの配置やブッシュの剛性を最適化したことで、コーナリング時の横Gでアウト側後輪をトーインに変化、つまり旋回安定性を大幅に高めたのです。
簡単に説明するとリジッドやセミトレーリングアームをリアサスペンションに採用するFF車にありがちなコーナリング中の妙な粘りや突発的なアウト方向への動きを無くし、ハンドリングを劇的に高める効果がありました。
これは、まことにマツダらしいクルマの作り方だと言えましたが、後にエンジンも電子制御インジェクション化やターボ化(いずれも1983年)で活発になり、走りにますます死角が無くなっていく事になります。
WRCにグループAで出場、モンテカルロではクラス優勝!
走りに自信をつけた5代目ファミリアは、1982年から輸出名のマツダ323としてWRCにも出場。
まだグループB全盛期にグループAマシン、それも1.3リッター以下のクラス5(A5)での出走だったので目立ちはしませんでしたが、それでも1982年のモンテカルロラリーではクラス優勝&グループA総合3位を獲得。
翌年からは1.5リッター車で参戦し、途中から1.5リッターターボに切り換えて次代のBFファミリア4WDターボ(マツダ323 4WD)によるグループA全盛時代とWRC初期の活躍につなげていきました。
主なスペックと中古車相場
マツダ BD1051 ファミリア XGi 1983年式
全長×全幅×全高(mm):3,955×1,630×1,375
ホイールベース(mm):2,365
車両重量(kg):830
エンジン仕様・型式:E5 水冷直列4気筒OHC8バルブ
総排気量(cc):1,490
最高出力:70kw(95ps)/5,800rpm(※グロス値)
最大トルク:124N・m(12.6kgm)/4,000rpm(※同上)
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古車相場:80万円
まとめ
マツダといえば、言わずと知れたロータリーエンジンや、最近だとSKYACTIVテクノロジーなど唯一無二の技術力を誇るエンジンや、RX-7またはロードスターなどスポーツカーのイメージで、抜群の存在感を発揮しているメーカーです。
しかしその屋台骨を支えて来た縁の下の力持ちと言えば、経営危機で冷や汗をかきながらも土壇場の土俵際でエイヤッとばかりに繰り出す歴史的ヒット作なのです。
それが1980年代では今回ご紹介した5代目ファミリアであり、1990年代では初代デミオでした。
その意味ではこの5代目ファミリアこそ『典型的なマツダ車』と呼べる、愛すべき1台なのではないでしょうか
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