卓越した天性のドライビングテクニック、確実なノウハウで熟成された速いマシン、勝利の女神を味方につける運、それら全てが揃ってようやく手にする事の出来るWRCチャンピオンの称号。1997年から14シーズンにわたって続いたワールドラリーカー時代において、2004~2010年に7連覇を果たしたフランスの天才ドライバーがいました!彼の名はセバスチャン・ローブ。2011年以降も含めると9連覇という偉業を成し遂げたラリー界の皇帝ローブ選手に迫ります。
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ワールドラリーカーとは?
トヨタ セリカ、三菱 ランサーエボリューション、スバル インプレッサ等、数多くの日本車が活躍したグループA規定によるWRCが終焉をむかえ、1997年から新たな車両規則として採用されたのがワールドラリーカーです。
あくまでもグループAから派生した規定であるというスタイルで考案されたため、4WDターボを基本としています。
FIAはグループA末期に課題となった厳しい最低生産台数規定を改定し、比較的小規模なメーカーでも参戦出来るよう配慮されました。駆動方式の変更等が認められた事でベース車の自由度が上がり、最盛期には7つのワークスチームが参戦する賑わいを見せます。
しかし開発競争の激化はモータースポーツの常であり、WRカーも参戦コスト高騰が顕著となった2010年に終焉をむかえました。
FIA主導のカテゴリーとしては長命な部類に入るWRカー(14シーズン)。
その間には名ドライバーの世代交代が進み、新たなチャンピオンも多数誕生しています。
ちなみにWRカー規定の採用に先立って、2リッター自然吸気エンジン搭載の2WD車 ”F2キットカー”を新規定として採用しようとする動きも見受けられたのですが、その当事者であるはずのフランス系メーカーがWRC本格参戦を敬遠したため、結局は不採用になったというエピソードもあります。
フランスの英雄、セバスチャン・ローブ選手とは?
ローブ選手はフランス出身のラリードライバーで、現在42歳。
1997年にラリーデビューを果たし、わずか4年後にはWRCにスポット参戦を始めます。
2003年には惜しくも1点差でシリーズチャンピオンを逃したものの、翌2004年から前人未到のWRC9連覇を達成!
その他にも通算勝利数78、シーズン最多勝利記録11、6連続優勝等、記録ずくめ。
シトロエンワークスチーム、そしてWRCにとっても無くてはならない存在となりました。
ドライビングスタイルについては、それまでのWRCでは派手なテールスライドでコーナーを駆け抜けるスタイルが主流でしたが、ローブ選手は徹底したグリップ走法でタイヤの性能を余すところなく使い切ります。
どんなコンディションになっても冷静に状況を見極め、着実に勝利への道を進んでいく姿はストイックそのもの。
そのスタイルは後年のドライバーにも大きな影響を与え、ラリーで速く走るためのスタンダードとなっています。
ここからいよいよ各年のエピソードも交えながら、ワールドラリーカー時代後期(2004~2010年)のチャンピオンをご紹介していきたいと思います!
2004年 Citroen Xsara WRC(セバスチャン・ローブ)
グループB時代の名マシン、プジョー205T16の開発に携わったジャン-クロード・ボカール氏が生み出したクサラWRC。
ロングホイールベースに短いオーバーハングという優れた重量バランスと、不変の高次元ハンドリングを可能とする素晴らしい設計のシャシーやサスペンションが最大の武器です。
皇帝の片りんを見せ始めていたセバスチャン・ローブ選手はシーズン6勝を記録。
これは同じくフランス人ドライバーであるディディエ・オリオール選手が持つシーズン最多勝利記録に並びます。
優勝以外のラウンドでもローブ選手は2位表彰台を6回獲得しており、高ポイントを連発。
スバルのソルベルグ選手も5勝して何とか食らい付こうとしましたが、結果的には30ポイント以上の差を付けてローブ選手が自身初となるチャンピオンを獲得しました。
ちなみに2004年はラリージャパンが初開催された年でもあります。
2005年 Citroen Xsara WRC(セバスチャン・ローブ)
ローブ選手の速さが爆発した2005年シーズン。
ミシュランの新型グラベルタイヤが投入されたことで、元々ターマックを得意としていたローブ選手がグラベルでも他を寄せ付けない速さを見せました。
自身の地元である第14戦ツールドコルス(フランス)では全SSでトップタイムを記録し、WRCで初となる完全優勝を達成!
さらにシーズン中盤には6連勝を飾っており、まさに記録更新のオンパレードとなりました。
終わってみれば16戦中10勝を挙げ、シーズン最多勝利記録を大幅に更新。
圧倒的な速さで文句無しの2連覇を果たしました!
2006年 Citroen Xsara WRC(セバスチャン・ローブ)
1年間のワークス活動休止を発表したシトロエンに代わり、王者ローブ選手はセミワークス体制のクロノスからクサラWRCで参戦。
モデル末期に到達していたクサラWRCでのタイトル防衛は難しいのではとの声もありましたが、この年もシーズン8勝を挙げ、カルロス・サインツ選手が持っていた通算勝利記録を更新。
しかし第13戦を前にしてマウンテンバイクで転倒し骨折してしまいます。
その影響で以降の4戦を欠場する事となってしまい、ランキング2位のマーカス・グロンホルム選手(フォード)の結果に注目が集まりました。
第12戦終了時点でかなりのポイント差が付いていた事もあり、グロンホルム選手が逆転するためには残り4戦全てで好成績を残さなければいけませんでした。
しかしグロンホルム選手が第14戦オーストラリアで5位に沈んでしまい、その時点で残り2戦を残してローブ選手の3連覇が決定。
その際、療養中の自宅からインターネット中継を通じて「不思議な気分だ」と語っています。
ここまで全部シトロエンとローブですが、この先は更にシトロエンとローブです。
2007年以降は、車両がC4に変わり、ローブの成績も右肩上がり!