Motorz

クルマ・バイクをもっと楽しくするメディア

Motorz

CATEGORYRace

スーパーフォーミュラ2016総集編!激戦と波乱に満ちたシーズン

今年はスーパーGTに勝るとも劣らない人気をみせたスーパーフォーミュラ。ヨコハマタイヤが新規参入。有力海外ドライバーの参戦。そして何より年々シビアになっていくレースに国内のみならず海外からも注目が集まった。終わってみれば全7戦9レース中6人のウィナーが誕生する乱戦となったが、その中でも特に印象に残った名勝負、名シーンをご紹介する。

©︎TOYOTA

明暗が分かれた歴代チャンピオンたち

©︎Tomohiro Yoshita

長年、国内トップフォーミュラの足元を支えてきたブリヂストンがどうカテゴリーでの供給活動を終了。代わりに今年からヨコハマタイヤがオフィシャルタイヤサプライヤーとなった。

全車ワンメイクとはいうものの、そのキャラクターは昨年まで使っていたものとは全く異なる。

そして、これが史上稀にみる激戦を生むきっかけとなり、特に歴代チャンピオンドライバーは開幕戦の鈴鹿から明暗が分かれる結果となった。

©︎Tomohiro Yoshita

予選Q1では、2010年王者のジョアオ・パオロ・デ・オリベイラがいきなりスピンを喫し脱落。さらに最終アタックに望んでいた前年王者の石浦宏明もQ1通過タイムを記録するのだが、アタック中に前のマシンがスピンし黄旗が振られているところでのベスト更新ということでタイム抹消。

普段はQ3まで当たり前のように進んでくる2人が、まさかのQ1脱落となった。

©︎Tomohiro Yoshita

 

続くQ2では2度のチャンピオンに輝いている中嶋一貴がスピンしコースオフ。僚友のアンドレ・ロッテラーもタイムを伸ばせずQ3進出を逃すことに。計5人いるチャンピオン経験者のうち4人がQ2までで姿を消すという事態にサーキットは騒然とした。

そんな中、抜群の速さを見せつけたのが、2013年王者の山本尚貴。チームとともに得意とする鈴鹿で全ラウンドトップタイムを記録。決勝でも昨年課題だったスタートを決め、その後は独走しそのまま優勝。

この勢いでシーズン前半はポイントリーダーを維持するのだが、後半戦はタイヤとマシンの合わせこみに苦戦を強いられ、失速。結局ランキング7位に終わった。

 

初走行の富士でいきなりポールポジション

©︎Tomohiro Yoshita

今シーズン一番注目を集めたドライバーといえば、やはりストフェル・バンドーン。

2015年のGP2チャンピオンに輝き、本来なら今年からF1ステップアップしてもおかしくなかったが、シートの空きがなかったことからスーパーフォーミュラでの参戦を選択。開幕戦鈴鹿では予選4番手、決勝も3位表彰台を獲得し、いきなりその才能を発揮した。

さらにF1でもリザーブドライバーを務めていたマクラーレン・ホンダから負傷欠場のフェルナンド・アロンソに代わって参戦する機会があり、そこでもデビュー戦ながら10位入賞を果たす活躍を見せた。

そのバンドーンが「今年一番印象に残ったレース」と話してくれたのが、第3戦富士だ。

序盤2レースが開催された鈴鹿、岡山はプレシーズンテストで走り込んでいたが、富士に関しては全くの初めて。しかも金曜占有走行から雨がらみという難しいコンディションだった。

©︎Tomohiro Yoshita

さらに予選では、セッションが進むにつれて路面コンディションが変化していき、最後のアタック時にはドライになりかけている路面もあった。そのラインをうまく見つけ出し、見事ポールポジション獲得。集まったファンや関係者を驚かせた。

もちろん、彼の才能という部分も大きいのだが、初走行ということでしっかり事前準備をしていたとのこと。マクラーレンのシミュレーターで10周程度走っていたという。

詳しい話は別の機会でしようと思うが、彼はどんなに限られた条件下であっても、それを言い訳にせず勝つために必要な準備は全て行ってくるという姿勢が、シーズン通して見られた。

それが功を奏し後半戦で2勝を記録。シリーズチャンピオン獲得とはならなかったが、十分すぎるほどの成果を残し、来年はF1にステップアップする。

 

これぞフォーミュラのバトル!一貴vsオリベイラ、関口vsロッテラー

©︎TOYOTA

今年の第3戦富士の決勝は、最初から最後まで目が離せないバトルが盛りだくさんだった。

まず会場を沸かせたのが、今年がデビューイヤーとなった関口雄飛。今年が参戦14年目となる大ベテランのロッテラーに対し、果敢に攻め込んでいった。

このコースでは1コーナーが一番のオーバーテイクポイントになるのだが、それ以外のポイントでも積極的に横に並びブレーキングで前に出ようとする。ロッテラーも巧みにブロックするが、勢いは完璧に関口にありレース終盤に先行を許した。そのまま前にいるマシンも次々とオーバーテイクし3位へ浮上。本人は「悔しい」と言っていたが、初の表彰台を獲得した。

©︎TOYOTA

そして、富士戦のハイライトといえば一貴vsオリベイラのトップ争い。

好スタートを決めた一貴が序盤にトップに浮上しレースを引っ張ったが、後半になるにつれてリズムをつかんだオリベイラが接近。残り10周をきって1秒を切る緊迫した接近戦が展開された。

オリベイラがオーバーテイクボタンを使用すれば、それを見て一貴も使用し応戦。ストレートから1コーナーにかけてはもちろん、各コーナーでも“逃げる側”“追う側”の駆け引きが繰り広げられ、集まったファンも2台のハイレベルなバトルに釘付けとなった。

しかし、ここまではいつものレースでよくあること。接近はしたけども、結局順位が変わらずレース終了ということがスーパーフォーミュラではよくあるのだが、今回のオリベイラは違った。

残り5周のメインストレートできっちり間合いを合わせ1コーナー手前で迷うことなくイン側へ飛び込みパス。トップを奪還し今季初優勝を飾った。

よくスーパーフォーミュラはマシンの特性もあり、なかなかオーバーテイクの機会が見られず「面白くない」というファンも少なくない。しかし、前述の関口もそうだが、今年は白熱したオーバーテイク合戦が多かったシーズンだったと思う。

これが、来年はどうなっていくのか。非常に楽しみなところだ。

 

混戦ゆえに起きた波乱

©︎Tomohiro Yoshita

今年はレース毎で勝者が入れ替わる激戦となったが、同時に波乱も多かったシーズンだった。

なかでも印象に残っているのは、この2つ。

1つ目は熊本地震により中止になったオートポリス大会の代替え戦で行われた第5戦岡山のRace1。今季初ポールポジションを獲得した一貴だったが、フォーメーションラップから戻って来た際に1番グリッドを通り過ぎてしまい、間違った場所に停車。これに他のマシンもつられてしまいグリッドは混乱。スタートディレイの原因を作ってしまったため、最後尾に回されることになった。

©︎Tomohiro Yoshita

続く第6戦SUGOではピットレーンを走行していた小林可夢偉にピットアウトした山本が突っ込んでしまうという事態が発生。これにより山本がグリッド降格ペナルティを受け最後尾からスタートすることに。

2つとも普通に考えれば有り得ないことなのだが、逆に百戦錬磨のドライバーたちでもケアレスミスをしてしまうほど、今年のレースやドライバーズラインナップは、それぞれに余裕がなく激戦中の激戦だったということなのかもしれない。

 

不可能を可能にした関口のスーパーラップ

©︎Tomohiro Yoshita

今シーズンのベストレースといえば、やはり第6戦SUGO。

ポールポジションから盤石な体制でレースをしていた関口だが、途中に入ったセーフティカーが不運にも彼の前でコースインすることになり、ピットストップのタイミングを逃してしまった。

レースを走りきるには必ず1度は給油のためのピットストップが必要。後続に対して33秒以上のリードを築かないとトップに返り咲くことはできないが、この時点で2位の中嶋大祐が真後ろにいる状態。

この瞬間に誰もが関口の勝利はないと感じたが、レースが再開されると、その予想は一気に払拭された。

毎ラップを予選のように攻め始め、1分07秒台という好ペースを連発。もちろん大祐も必死にプッシュするが、両者の差は1周1秒広がっていく。

そして、不可能と言われた33秒の貯金を作って55周終わりに給油のためピットイン。見事にトップのままでコースに復帰したのだ。

©︎Tomohiro Yoshita

ちなみに、2人の予選でのタイム差は0.146秒。それを考えると1周で1秒引き離すというのは至難の技ではなく、そもそも不可能と考える方が正しいようなもの。しかし、それを関口はやってのけ見事今季2勝目をマークした。

最終戦ではまさかの苦戦を強いられタイトル獲得こそ逃したが、“日本一速い男はオレだ!”と証明するような男気溢れるレースを披露。

間違いなく、スーパーフォーミュラで後世にわたって語り継がれる1戦となった。

 

チャンピオンをかけたスタート勝負

©︎Tomohiro Yoshita

史上稀に見る、6人ものドライバーが自力チャンピオンの可能性を残した最終戦鈴鹿。

予選では2連覇を目指す石浦がダブルポールポジションを獲得。一方チームメイトの国本雄資は2番手となり、記者会見では悔しさを滲ませていたが、そのリベンジをRace1のスタートで晴らした。

ややダッシュがつかなかった石浦に対し、国本は抜群のスタートでトップを奪い1コーナーへ。このまま最後まで走りきり、今季2勝目を飾るとともに暫定でポイントリーダーに返り咲いた。

Race2も着実に走りきり初のチャンピオンを手にした国本。シーズンを振り返った時の印象あるシーンの一つとして、「全てをかけていた」というRace1スタートを振り返っていた。

 

2015SF王者vs2015GP2王者

©︎TOYOTA

最後に筆者が最も印象に残った名勝負が、2015SF王者の石浦宏明と2015GP2王者ストフェル・バンドーンの対決だ。

現在、F1直下のカテゴリーとしては日本のスーパーフォーミュラとヨーロッパのGP2が有名だが、その2015年王者が今年は直接レースをするという、過去数年では見られなかった対決となった。

最終戦鈴鹿の予選Q3。この週末は走り始めから好調だった石浦が1分37秒026をマーク。これに誰も上回れる速さを発揮できなかったのだが、唯一肉薄したのがバンドーン。0.005秒差に迫る1分37秒031を記録した。

そして決勝Race2でのフロントロー対決。実は、同じようなシチュエーションは第3戦富士でもあった。

©︎Tomohiro Yoshita

バンドーンが初ポールポジションで石浦は2番手。スタートでは2人の意地がぶつかり合いサイド・バイ・サイドのまま1コーナーへ向かったのが印象的だった。

同じように鈴鹿でのスタートも両者今季ベストのダッシュを決めてサイド・バイ・サイドに。石浦もターンイン直前まで粘ったが、わずかにバンドーンが有利で1コーナーを先頭で通過していった。

 

©︎Tomohiro Yoshita

レッドシグナルが消えてから約9秒間。

そこには、今季のチャンピオン争いを左右する瞬間だけでなく、両王者同士のプライドをかけた競り合いも見られた。

このスタートで前に出たバンドーンが今季2勝目。スーパーフォーミュラでの最後のレースを制し、F1ステップアップへ有終の美を飾った。

 

まとめ

©︎Tomohiro Yoshita

数年前、正直スーパーGTとスーパーフォーミュラでは人気の差が確実にあり、後者の方はなかなかスポットライトが当たらない日も少なくなかった。

それがマシンが変わりF1をしのぐほどのコーナリングスピードを発揮。また今年はバンドーンのような注目海外ドライバーも参戦し、認知度、人気ともに向上したシーズンだったように感じる。

それだけに、今のレベルやレースの規模を維持するのではなく、もっとエキサイティングなものになるように変化し続けていってほしい。

そして、来年はどんなバトルが観られるのか?どんな注目ドライバーが参戦するのか?さらに目が離せないシーズンになりそうだ。

Writer Introduction
Tomohiro Yoshita

フリーのモータースポーツジャーナリスト。サーキット取材は2011年からスタートし、最近ではSUPER GTスーパーフォーミュラを全戦取材。この他にもF1をはじめとする海外レースや、2輪レースもカバー。レースに関する記事だけでなく、サーキットに来場するファンに役立つ情報発信も展開しています。http://www.kansenzyuku.com

車買取.com