今でこそ軽乗用車はトールワゴンタイプかスポーツカーしか作っていないホンダですが、以前はミラやアルトに相当する軽乗用車も作っていました。特に、1980年代から90年代にかけて作っていたトゥデイはまことにホンダらしいというか、軽自動車としてはかなり特異な車だったのです。未だにレースで活躍するホンダ トゥデイとはいったい、どのような車だったのでしょうか?

 

1985年9月10日、それは闇プロジェクトをコッソリ進めた若手が夢見た「今日」が現実になった日

ホンダの歴史、特にその初期は軽自動車とスポーツカーにあったと言っても過言ではなく、S500からS800までのスポーツカーとT360に始まる軽トラが主力でした。

初代シビックに注力するた、1974年に一旦軽乗用車から撤退しますが、その後も若手中心に闇プロジェクトで新型軽自動車開発が進められていたのです。

それが形になったところで正式プロジェクトとなり、1980年代に軽乗用車に再参入することとなりますが、ライバル他社は強い懸念を示しました。

デビュー当時、あまりに画期的な高性能軽自動車だったホンダ N360に対抗すべく、あまりに過激な第1次軽自動車パワーウォーズ勃発という過去があったからです。

出典:http://www.honda.co.jp/

結局、ホンダとは関係無くターボ時代の第2次軽自動車パワーウォーズは勃発してしまいますが、ホンダはそこに加わることなく、軽トラ用の2気筒SOHCエンジンを積んだトゥデイを1985年に発売したのです。

このトゥデイは、「スポーティな軽自動車をどうしても作りたい」と情熱的な若手がコッソリ作った驚くべき性能を誇る車だったのです。

 

地を這うようなスタイルと四隅のタイヤで驚かせた、初代トゥデイ

出典:http://www.honda.co.jp/

 

トゥデイが登場した当時のコンパクトカーや軽自動車は、「トールボーイスタイル」と呼ばれ、ルーフが高く頭上空間に余裕のある車が主流でした。

その先鞭をつけたのはほかならぬホンダの初代シティで、以後軽自動車でダイハツ ミラやスズキ アルトが追随しています。

しかし、1985年登場のトゥデイはミラやアルトより80mm以上低いルーフに、4隅ギリギリにタイヤを配置したロングイールベース&ショートオーバーハングスタイルで登場。

 

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見た目には狭く快適性に劣るように思えましたが、実際はエンジンルームをミニマムに、キャビン長をマキシマムにとる「M・M思想」(Man-Maximum・Mecha-Minimum)で開発され、キャビンスペース、特に十分な足元空間を確保していたのです。

この優れたパッケージングは、ロングホイールベースによる直進安定性や低い重心によるコーナリング性能にも優れ、実用性と走りを高次元で両立させていたのです。

となれば、いくら貧弱なエンジンでもキビキビ走るトゥデイの走りが楽しくないわけがありません。

翌年デビューした2代目シティ(GA1 /2)が全く同じレイアウトとなっており、ジムカーナ競技で無敵の強さを誇ったことからも、その走りの良さは証明されました。

 

JW1トゥデイの代表的なスペックと中古車相場

 

出典:http://www.honda.co.jp/

 

ホンダ JW1 トゥデイ F 1985年式

全長×全幅×全高(mm):3,195×1,395×1,315

ホイールベース(mm):2,330

車両重量(kg):550

エンジン仕様・型式:EH 直列2気筒SOHC4バルブ

総排気量(cc):545cc

最高出力:31ps/5,500rpm

最大トルク:4.4kgm/4,000pm

トランスミッション:4MT

駆動方式:FF

中古車相場:無し(2017年6月現在)

 

段階的なパワーアップと660cc化で、最強NA軽乗用車へ

 

©DCTMダイチャレ東北ミーティング

 

ターボエンジンこそ搭載しなかったものの、軽量低重心のトゥデイは新型の3気筒12バルブエンジンの搭載や、電子制御燃料噴射(PGM-FI)化によって、NA(自然吸気)エンジンながら走りを求めるユーザーから着実に評価を上げていきました。

確かにライバルに比べて積載性は劣ったものの、ホンダのスポーツイメージが幸いしたのです。

そして、1990年に軽規格変更で660cc化されると、1988年に初期の丸目から角目に変更されていたヘッドライトなど見た目も含め、「シビックやシティの軽自動車版」になっており、既に軽自動車レースでは頭角を現していました。

 

JA2トゥデイの代表的なスペックと中古車相場

 

出典:http://www.honda.co.jp/

 

ホンダ JA2 トゥデイ XTi 1991年式

全長×全幅×全高(mm):3,295×1,395×1,330

ホイールベース(mm):2,330

車両重量(kg):650

エンジン仕様・型式:E07A 直列3気筒SOHC12バルブ

総排気量(cc):656cc

最高出力:52ps/7,500rpm

最大トルク:5.6kgm/4,500pm

トランスミッション:5MT

駆動方式:FF

中古車相場:19.8~28万円(2017年6月現在・ただし42馬力のポシェット、AT車のみ)

 

NA・FF軽自動車最強マシン、MTREC搭載のJA4誕生

 

©DCTMダイチャレ東北ミーティング

 

1993年にトゥデイは2代目JA4(4WDはJA5)にモデルチェンジしますが、ここでトゥデイにとっては「最大の商業的失敗」であり、「最高の軽スポーツ」となる重要な変更が盛り込まれたのです。

なんと、従来のリアハッチをやめ、独立トランクを採用したのです。

しかし、「ほとんどの軽自動車ユーザーは手荷物程度しか載せない」というマーケティングから採用された独立トランクですが、実用性を求めるユーザーからは「いざという時かさばる荷物が載らない」と、突き放される結果に。

これにより大不人気車となって販売は低迷、1996年のマイナーチェンジで通常のリヤハッチバック形式に戻りますが、商業的には失敗作として終わってしまいます。

ところが、この独立トランクのおかげで開口部が小さく、剛性が高まったボディは走りにはうってつけだったのです。

出典:http://www.honda.co.jp/

 

しかもビートと同じツインマップ燃料噴射制御&3連スロットル「MTREC」を搭載した高回転高出力型エンジンが、トゥデイにもラインナップされていました。

ビート用の64馬力エンジンから実用回転域を重視して58馬力へデチューンされたとはいえ、ビートより80kgも軽量だったJA4トゥデイはNAのFF軽自動車として最速マシンになっったのです。

 

JA4トゥデイの代表的なスペックと中古車相場

 

出典:http://www.honda.co.jp/

 

ホンダ JA4 トゥデイ Xi 1993年式

全長×全幅×全高(mm):3,295×1,395×1,350

ホイールベース(mm):2,330

車両重量(kg):680

エンジン仕様・型式:E07A 直列3気筒SOHC12バルブ MTREC

総排気量(cc):656cc

最高出力:58ps/7,300rpm

最大トルク:6.1kgm/6,200pm

トランスミッション:5MT

駆動方式:FF

中古車相場:38万円(2017年6月現在・2ドア5MTのXiは1台のみ)

 

軽NA・FF最強マシントゥデイ、モータースポーツでの活躍

 

©DCTMダイチャレ東北ミーティング

 

トゥデイは全モデルが軽自動車イベントで活躍しましたが、中でも660cc化されたJA2以降のモデルはクラスを超えた活躍を見せたのです。

 

初代(JW1~4 / JA1~3)はスーパーカーに負けないチューンドトゥデイが有名

 

出典:https://www.youtube.com/

 

2気筒550ccのアクティ用EHエンジンを搭載した丸目の初期型は、パワーこそありませんでしたが、軽さと低重心を武器に軽快なコーナリングから軽自動車のサーキット走行会でも非凡なところを見せていました。

しかし本領発揮となったのは3気筒550ccのE05Aを搭載してからで、軽自動車レースの550ccクラスではE07AからMTRECを移植したマシンが活躍。

660ccとなったJA2でもMTREC版E07Aを搭載したマシンがJA4より上位に来ることすらありました。

Youtube動画でエリーゼやポルシェなどスーパーカーをぶっちぎって有名になったホンダオート岡山販売のトゥデイも、JA2のE07Aターボチューン(250馬力)でした。

 

2代目(JA4 / 5)はJA4前期型2ドアのMTRECが大人気

 

©Motorz

 

前述のように、1993年にモデルチェンジしてから1996年のマイナーチェンジまで独立トランクだった2代目トゥデイ。

そのFF版JA4の中でもさらにMTREC版E07A搭載モデルで2ドアの「Xi」は、最強モデルとして引く手あまたで、程度の良いモデルは入手困難となっています。

そのため、エンジンだけ見つけてきて2ドアの通常モデルに搭載する例も多々あります。

 

©DCTMダイチャレ東北ミーティング

 

また、2ドア車が入手困難なため、4ドア車や3 / 5ドア車で妥協するケースも見られます。

 

レースでは現在もNAクラスの主力として活躍中

 

©Motorz

 

K4GPでは長年の活躍で熟成されていることから、このモデルを選ぶ段階で相当本気なチームと判断することができます。

ターボ車顔負けの速さを見せていて、今でもNA・FFの軽自動車では、「MTRECトゥデイに勝てるかどうか」というひとつのベンチマークになっていることは間違いありません。

 

ジムカーナでは「1,000cc未満幻の最速マシン」

 

©DCTMダイチャレ東北ミーティング

 

意外なことにジムカーナではJAFに競技車として登録されておらず、2003年に1,000cc未満のマシンで戦われるN1クラスが創設された時、トヨタSCP10ヴィッツに勝てるマシンと言われながらも、全日本戦などに参戦することはありませんでした。

しかし、JAF登録車両である必要の無い競技会では当然のごとく活躍しており、JMRC西日本フェスティバルのN1クラスで優勝した実績も。

 

©DCTMダイチャレ東北ミーティング

 

現在は参加クラスが事実上無いこともあって大きな競技会で活躍することは無くなりましたが、今でも軽自動車クラスなどでは、JA2やJA4が元気に走っています。

 

まとめ

 

ホンダが2017年までに作った中では、最後のロールーフ型FF軽乗用車トゥデイ。

ライバル他社のように派手な販売合戦に加わることは無かったものの、一時期軽乗用車から撤退していた時期に「スポーティな軽自動車を作りたかった」と闇プロジェクトで開発していた若い技術者たちの夢は、見事に果たされたことになります。

ビートやS660と並び、「いかにもホンダらしい軽自動車」だったトゥデイ。

もう中古車でもほとんど手に入らなくなってきた今、「またもホンダがやってくれた!」と言われるような、こうした楽しい軽自動車をいつかまた作ってくれたら…と思うのですが、ホンダさん、N-ONEの次期モデルあたりでひとつ、どうでしょう?

 

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