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鈴鹿8耐レースの裏側。搬入〜レース終了までトップチームでは何が行われているのか知っていますか?【RS-ITOH&FA.COM保険職人】

2016年7月28日~7月31日に三重県の鈴鹿サーキットで開催された2016 FIM世界耐久選手権シリーズ第3戦”コカ·コーラ ゼロ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第39回大会。その中で、限りなく市販車に近い状態で争われるSST(スーパーストック)クラスに参戦し、見事優勝を飾ったRS-ITOH&FA.COM保険職人の熱い戦いをまとめてレポートしたいと思います。

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SST(スーパーストック)クラスとは?

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スーパーストックモーターサイクルのフロント、リヤ、およびプロフィールは(特 記されない限り)原則として公認された形状(当該マニュファクチュラーが本来 製作した形状)に合致しなくてはならない。エキゾーストシステムの外観はこの 限りではない。

FIMロードレース世界耐久選手権の技術規則書抜粋

SSTクラスは、FIMロードレース世界耐久選手権の技術規則書に定められている通り、基本的には公道を走行可能な市販車ベースのマシンで、

「エンジン」「サスペンション」「ブレーキ」など、その多くを市販状態で戦うクラスです。

EWCクラスのようなタイヤクイックチェンジシステムが使用できないのも特徴で、タイヤ交換に時間がかかります。

その為、ピットワークの手際の良さもレース結果に大きく影響する、よりチームワークが求められるレギュレーションとなっています。

RS-ITOH&FA.COM保険職人

Photo by KenjiFujime

Photo by KenjiFujime

RS-ITOHは埼玉県東松山市でオートバイショップを20年以上続け、1995年からは全日本ロードレース選手権や鈴鹿8時間耐久レースといったビッグレースへの参戦も続けている伊藤一成監督率いるプライベートチームです。

 

鈴鹿8耐ライダー構成

第1ライダー:東村伊佐三

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出典:https://www.facebook.com/

プロフィール

生年月日:1967年1月2日

出身地:愛知県 名古屋市出身

 

1984:ロードレースデビュー”スーパーノービス”の一人に名を挙げられる。『SSイシイ』所属

1987:鈴鹿4時間耐久ロードレース 3位 (チームスポーツショップISHII)

1990:国際A級昇格 以後、全日本ロードレース選手権GP250クラスに参戦し、国内最高峰のGP500クラスにスポット参戦。

1991: FIM世界耐久選手権 鈴鹿8時間耐久ロードレース 初参戦

1993: FIM世界耐久選手権 鈴鹿8時間耐久ロードレース 参戦

以後23年連続決勝出場中。最高順位13位 (2012年、2013年 RS-ITOH)

1998: 全日本ロードレース選手権 SUPER BIKE(現・JSB1000)クラス参戦『RS-ITOH』所属。

途中『BEETレーシング』への移籍を経て、2013年までの最高年間ランキング7位。

2015:『TEAM TENMEI  SAKURA PROJECT』より鈴鹿8耐参戦。『E.Village133ライディングスクール』始動

公式フェイスブックページ → https://www.facebook.com/%E6%9D%B1%E6%9D%91%E4%BC%8A%E4%BD%90%E4%B8%89-1452634401706323/home

 

第2ライダー:岡村光矩

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出典:https://www.facebook.com/

 

プロフィール

生年月日:1988年9月15日

出身地:福岡県

 

2009:九州選手権&サウスチャレンジカップ 両タイトル獲得
鈴鹿4時間耐久ロードレース 7位完走・鈴鹿NGK杯 優勝

2010:全日本ロードレース選手権ST600スポット参戦 オートポリス(6位)・岡山(DNS)鈴鹿(11位)年間ランキング22位

2011:全日本ロードレース選手権ST600フル参戦 ランキング12位

2012:全日本ロードレース選手権ST600フル参戦 ランキング13位・アジア選手権スポット参戦(AP)

2013:Faito Tsukigi Racingに移籍 アジア選手権SS600フル参戦 ランキング14位・鈴鹿8耐 25位完走(ガレージハラダ)

2014:全日本ロードレース選手権ST600フル参戦 ランキング5位(RS-ITOH)

2015:アジア選手権 SS600 フル参戦

2016:全日本ロードレース選手権ST600 第2戦よりスポット参戦

公式フェイスブックページ → https://www.facebook.com/mitsugo1/home

 

第3ライダー:石塚健

Photo by FumioYosida

Photo by FumioYosida

 

プロフィール

生年月日:1995年7月22日

出身地:埼玉県

2013:筑波選手権 ST600 ランキング2位・もてぎ選手権 ST600 チャンピオン

2014:全日本ロードレース選手権ST600参戦 ランキング13位

2015:全日本ロードレース選手権J-GP2参戦 ランキング17位

2016:全日本ロードレース選手権J-GP2参戦

参戦マシン

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2016年型Kawasaki ZX-10R

レース専用モデルNinja ZX-10Rは、WSB(スーパーバイク世界選手権)に参戦しているファクトリーマシンから多くのフィードバックを受けた、強大なパワーと扱いやすいエンジンに加えIMU(イナーシャルメジャメントユニット)の搭載により前後、左右、上下、3方向の加速度とロール、ピッチを測定。さらにECU内のカワサキ独自のダイナミックモデリングプログラムによりヨー方向の動きも緻密に演算。 この6自由度の車体姿勢の計測と様々な電子デバイスの制御により高い次元でマシンコントロールを可能にしています。また、高い剛性とコントロール性を追求したフレームにはSHOWAと共同開発のバランスフリーフロントフォークを装備し、サーキット走行時に優れた減衰力特性を発揮し、コーナー進入時等の安定性向上に貢献。マシンのポテンシャルを最大限に引き出すことを可能にしています。

主な特長
・IMU搭載により優れたマシンコントロールが可能
・SHOWAと共同開発のバランスフリーフロントフォークを装備
・フロントにブレンボ製ブレーキシステムを搭載
・レース専用モデルとしてABSを非装着
・2016年WSBに参戦するファクトリーマシンと同イメージのカラーとグラフィックを採用

https://www.kawasaki-motors.com/mc/lineup/ninjazx-10r/

 

 

レースWEEKレポート

7月27日:搬入

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鈴鹿8耐レースWEEK1日目。まずは搬入から始まります。RS-ITOHの本拠地である埼玉県をAM7時に出発し、12時過ぎに鈴鹿サーキットに到着しました。

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翌日からの走行に備えて、快適なピット作り、そしてマシンの整備をしていきます。

 

 7月28日:公式車検・8耐特別走行

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鈴鹿8耐レースWEEK2日目は公式車検からスタート。ここで各チームが作り上げたマシンがFIMロードレース耐久世界選手権のレギュレーションに違反をしていないか、不備は無いかなどのチェックを受けます。

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そして、特別走行に備えてマシン調整を行います。そのまま8耐特別走行1本目がスタート。

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この時点でのライダー構成は、第1ライダー:岡村光矩、第2ライダー:石塚健、第3ライダー:東村伊佐三。

まずは、岡村選手からサブマシン(Tカー)でコースイン。
8耐は、8時間の耐久レースなので、全日本などのスプリントレースとは違い、タイム以外にも重要になる部分がたくさんあります。

特にSSTクラスはタイヤ交換に時間がかかるので、いかにタイヤを温存しながらタイムを落とさないで走行できるかがとても大切となってきます。その為、どのタイヤを選択してどんな走り方をするのが効率的かなど、色々なテストを行い、最善を選択していきます。

そんな確認作業の中で、順調に周回を重ねていく岡村選手。
そして、ライダーチェンジ時のピットワークの練習を経て、コースインした石塚選手。順調にタイヤの耐久性を試していく中で、転倒してしまいます。

幸いライダー本人にも怪我は無く、マシンも軽症。メカニックの必死の修復作業により、2本目の特別走行からテストを再開。東村選手のスティントで、どれぐらいの周回でタイヤのグリップ力をどれぐらいキープできるのかを試すためのロングランを行うなど、決勝を見据えての確認事項を着々とクリアしていきました。

 

7月29日:8耐フリー走行・ピットウォーク・公式予選

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鈴鹿8耐レースWEEK3日目。まずは2時間のフリー走行からスタートします。そして、午後からの公式予選に向けてのマシンのセッティングを固めていくのです。

 

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今年のRS-ITOHの作戦は、1走行ごとのタイムアップを目指すのではなく、常に決勝を見据えた形でのセットアップをする事に力を祖ぞぎこみました。
着々と決まるマシンセッティングとライダーのライディング。そのまま1本目の公式予選に突入します。

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1本目の予選結果は、第1ライダー:岡村光矩 2’13’307、第2ライダー:石塚健 2’12’713、第3ライダー:東村伊佐三 2’13’654でした。

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そして、応援してくれるファンの人たちの声援を直接聞くことができるピットウォークでたくさんの人に元気をもらい、予選2本目に挑みます。

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予選結果は、第1ライダー:岡村光矩 2’12’361、第2ライダー:石塚健 2’11’929、第3ライダー:東村伊佐三 2’12’072.

総合28位、SSTクラス2番手でした。

Photo by KenjiFujime

Photo by KenjiFujime

夜間走行ではライダーの頑張りをピットワークでロスしない為に、何度も何度もピットワークの練習が行われました。

7月30日:8耐フリー走行・前夜祭

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鈴鹿8耐レースWEEK4日目。この日は8耐決勝前最後のフリー走行となります。マシンセッティングの最終確認はもちろんの事、ライダー、メカニック、ピットクルーの全ての役割分担を再度確認します。

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そして、ピットウォークを経て最後のフリー走行スタート。大きなトラブルも無く、全体がしっかりとまとまってきていて、後は決勝を走り切るのみ。チーム全体が、そんないいフィーリングを感じながら、この日はフリー走行を終えました。

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出来る事は全てやりきった。それでも、まだ何かタイムを短縮できる部分があるはずだと、SSTクラスの複雑なノーマルのタイヤ交換をコンマ1秒でも短縮できる方法を時間の限り模索していきます。

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リアタイヤの交換はかなりスムーズにできるのに、フロントタイヤの交換にどうしても時間がかかってしまう。その問題を解決する為の試行錯誤は夜中まで続きました。

7月31日:ピットウォーク・8耐決勝

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8耐決勝日当日は、まずはピットウォークから始まります。この後の過酷な8時間の戦いの直前にファンの方々から直接声援を頂ける最後のピットウォークで、色々な方から声援を頂き、ライダー、メカニック、チームスタッフ一同、必ずSSTクラスで優勝すると改めて気合を入れていきます。

そして、最後のウォームアップ走行を経て、スタート直前にライダー構成を変更。第1ライダー:東村伊佐三、第2ライダー:岡村光矩、第3ライダー:石塚健で戦う事に決定します。

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そして迎えた決勝のスタート進行。ここまでのフリー走行で、様々なトライ、そしてエラーを繰り返し、少しずつ着実に成長を遂げ、確実にいい状態になっていたZX-10R。

後は自分たちを信じて8時間走り切るだけです。誰もがそう思ったスターティンググリッドで、まさかの電気系トラブルが発生。原因不明のトラブルで、電子制御が全て機能しない状態でのスタートを余儀なくされます。トラクションコントロール、ウィリー制御システム、フライバイワイヤスロットル、アップシフター、ダウンシフター全てが無効となったマシンでどう戦うか。

全く想定していなかった状態でのスタートにチーム全体が動揺を隠し切れません。

 

幸い、スタート直前のライダー変更により、スタートライダーはベテランの東村選手。
東村選手は3人のライダーの中で唯一、電子制御がない時代からレースをしているベテラン中のベテランライダー。今までの経験と自身のポテンシャルで、電子制御無しのZX-10Rで驚異の2分15秒ラップで第1スティントを走り切り、岡村選手に繋ぎます。

走行中はメカニックがトラブル解消の為の情報収集や試行錯誤をし、ライダー交代のピットインのタイミングでトラブル解消を試みます。

しかし、第2スティントの岡村選手の走行時にはトラブルは解消せず、電子制御が効かない状態で走行を開始します。
この日の為に試行錯誤してきたテストとは全く違うマシンでの走行に、ライダーのポテンシャルに頼り切るしかない状況。それでも、誰もSSTクラスでの優勝を諦めなかったRS-ITOH&FA.COM保険職人は、第3スティントで石塚選手にライダー交代をするピットインのタイミングで、原因不明だった電子制御の不具合を解決する事に成功するのです。

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そして、万全の状態での第3スティント開始。

トラブルを解決してからは、順調に順位を上げ、一気にSSTクラスTOPに浮上します。そこからは、SSTクラス2番手を走行中の#74 Akeno Speedとの一騎打ち。最初のトラブルを解消してからのRS-ITOH&FA.COM保険職人のチームワークは完璧で、安定したピットワーク、そして安定した走りで2位との差を広げていきます。

しかし、レース終盤のAkeno Speedの驚異の追い上げに、少し危機を感じたRS-ITOH&FA.COM保険職人。

状況的にも、タイム的にもこのままSSTクラス1位でチェッカを―受けられる可能性は十分ありましたが、相手は強豪AkenoSpeed。このまま大人しく勝たせてくれる相手ではありません。そこで、RS-ITOHは残り3時間、タイヤ交換をしないで走り続けるという賭けに出る事を決断します。

Photo by YukioNakamura

残りの3時間をタイヤ交換無しで走行する。テストでも試したことが無い未知の領域ですが、確実にクラス優勝を手にする為に切る詰められる部分はそこしかありません。

後は、ライダー達がどこまでアベレージタイムを落とさずにタイヤを温存できるかに頼るのみ。RS-ITOH&FA.COM保険職人が最後の賭けに出る事を決めたました。

そのとき、ピットのモニターに飛び込んできた黄色いマシンの転倒映像。2番手を走行中だったAkeno Speedが転倒します。残り時間は2時間。チームの全員が優勝を確信した瞬間でした。

「転倒さえしなければ、マシンさえ壊れなければクラス優勝できる!!!」

新たな2番手との差は4Lap以上。2位に追付かれるという心配が消えたRS-ITOHは、転倒リスクを減らすため、急遽新品タイヤの投入を決定します。

 

Photo by KenjiFjime

Photo by KenjiFjime

最後のスティントは、岡村選手がエンジンブローしないよう、そして転倒しないよう落ち着いた走りで、19時30分に無事8時間を走り切りチェッカーを受けました。

結果は合計207Lap、総合21位、SSTクラス優勝!!!

Photo by KnjiFujime

Photo by KnjiFujime

 

鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦し続けて22年目のRS-ITOH!念願のタイトル獲得の瞬間でした。

 

まとめ

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埼玉県東松山市にある、小さな1軒のバイクショップが成し遂げた、FIMロードレース世界耐久選手権のSSTクラス優勝という偉業。

22年間参戦し続けるというだけでも決して簡単ではない道のりを諦めることなく実現し続けた伊藤監督。そして、その監督の人柄や生き様に憧れ共感し、集まってきたライダーやメカニック、ピットクルー。応援してくれたスポンサー企業やファンの方々。その全てが揃ったからこそ手にすることができた、SSTクラス優勝。本当に本当に嬉しかった。

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私はそんなRS-ITOHの8耐参戦22年間の歴史の中で6年間をチームの一番近くで応援してきました。

『転倒しても、何があっても、ピットにさえマシンを戻してくれたら、絶対に修復してコースに送り出してやる。』

初めての8耐で聞いた伊藤監督やメカニックのこの言葉を、目の前で体現して見せてくれる。私はその姿勢に感動し一瞬で夢中になりました。

レースの世界は、ライダーが速いというだけでは決して勝てません。色々な人たちのサポートや応援があってこそ成し遂げられる世界。

そして、だからこそ達成した時の感動は何にも代えられない。どんなに辛くても、苦しくても、また来年この場所に帰ってきたいと思う、不思議な魅力で全ての人を魅了する鈴鹿8時間耐久ロードレース!SSTクラス優勝を達成したRS-ITOH&FA.COM保険職人のこれからの活躍にも是非、注目して頂きたいと思います。

RS-ITOH 公式HP → http://www.rs-itoh.com/

 

Writer Introduction
Chika Sakikawa

モデル・ライターをしながらモータージャーナリスト目指して奮闘中( *´艸`) 好奇心旺盛で、モータースポーツを観戦するのも挑戦するのも大好き! そんな大好きな世界の魅力を伝えていきたいと思います。http://chika-sakikawa.com/

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