2016年のSUPER GT第2戦「FUJI GT500km RACE」が5月3・4日、静岡県の富士スピードウェイで開催。ゴールデンウィークの連休中の開催ということもあり2日間で85,800人を動員した。GT500・GT300ともに激しいバトルが繰り広げられたが、終盤には予想もしなかったようなまさかの展開も。500kmの長丁場戦を今回は振り返る。

2日とも晴天に恵まれ85,800人が来場

Photo by Tomohiro Yoshita

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毎年、SUPER GTの国内ラウンドでは一番の動員を誇るゴールデンウィークの富士戦。

今年は当初から決勝日が雨の予報となっており、実際に予選日夜からサーキット周辺は暴風雨に見舞われた。しかし、決勝日の朝は天候が回復。朝のフリー走行からドライコンディションでセッションが進んでいった。

この連休期間中を利用してサーキットには多くのファンが来場。特に決勝日は50,100人が訪れ、グランドスタンドはもちろん、各コーナーも多数のファンで埋め尽くされた。

GT500決勝、序盤はカルソニックGT-Rがリード

Photo by Naoki Yukioka

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予選ポールポジションを獲得したのは、カルソニックIMPUL GT-R。ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラがスタートドライバーを務め、序盤から一気に後続を引き離していく。

一方、2位以下は#46S Road CRAFTSPORTS GT-R、#38ZENT CERUMO RC F、#1MOTUL AUTECH GT-Rの三つ巴に。

GT300との混走でさらにバトルは激化し、富士の長いメインストレートで何度もサイドバイサイドのバトルが繰り広げられた。

その間にオリベイラは着実にリードを広げ10秒ものリードを築く。

完璧なレース運びを見せ38周終わりでピットイン。安田裕信にバトンタッチする。

中盤もリードを保ちたかったカルソニックGT-Rだったが、2番手争いを制したS Road GT-Rの千代勝正が開幕戦に続いて快進撃を披露。当初15秒近くあった差を最大で7秒差まで縮める気迫ある走りをみせた。

しかし主導権はカルソニックGT-Rにあるまま。このまま逃げ切りで優勝かと思われたが、500kmの長丁場戦は、後半になって急に荒れ模様の展開となる。

※ここがポイント!(1)※ 全ての明暗を分けた「セーフティカー」

Photo by Naoki Yukioka

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今回の勝敗を大きく左右したと言っていいのが、後半のセーフティカー導入。72周目に#100RAYBRIG NSX CONCEPT-GTが100R出口で左リアタイヤが突然バースト。

ちぎれたゴムがマシン後部のボディを破壊しコース脇に停車した。

幸い乗り込んでいた伊沢拓也に怪我はなかったが、コース上にばら撒かれた破片を回収するためセーフティカーが導入された。この「セーフティカー」が全ての流れを一変させてしまったのだ。

トップを猛追していたS Road GT-RにとってはSC導入で一気に差が縮まりチャンスかと見られたが、彼らにとっては逆に「不運」だった。

今年からレギュレーションが変更され、SC中のピット作業は一切禁止。違反した場合は60秒以上のストップ&ゴーペナルティを受けることになる。

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ちょうどセーフティカーが入るタイミングで2回目の作業を行おうと思っていた陣営にとって、このSC導入はかなりの痛手。

SC解除までの間にガス欠になる可能性もあったため、チームはペナルティを覚悟でピットインを決断したのだ。

後に90秒のストップペナルティを受け、大きく後退。最終的に7位でレースを終えた。

Photo by Naoki Yukioka

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さらにS Road GT-Rと2番手争いを繰り広げていた38号車ZENT RC FもSC解除後にピットストップを予定していたが、まさかのガス欠に見舞われリタイア。

これで風向きは一気にカルソニックGT-Rに向いたかと思われたが、彼らにとってもこのSCは誤算だった。

※ここがポイント!(2)※ 名門ニスモが魅せた“早技ピットストップ”

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このSCで一番順位を稼いだのがMOTUL GT-R。

12号車が2回目のストップを44秒で終えたのに対し、1号車は38.5秒。名門ニスモが誇るメカニックたちが勝負どころで迅速な作業を行い、マシンをコースへ送り出したのだ。

これでカルソニックGT-Rを一気に逆転。レース終盤は昨年何度も観た「ニスモvsインパル」の一騎打ちに突入していった。

残り3周の悲劇、MOTUL GT-Rが思わぬ形で勝利を手にする

Photo by Naoki Yukioka

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一度は1号車にトップの座を明け渡した12号車のオリベイラだが、もちろん諦めるわけにはいかない。GT300の混走をうまく利用し背後に迫ると、96周目のTGRコーナーでインを突き逆転。

再びトップの座を奪い返した。

その後もGT300をかわしながらトップを死守した12号車。2014年の第2戦富士以来、2年ぶりの勝利まで目前と迫っていた107周目。まさかの事態が起こった。

100Rを走行中に突然左リアタイヤがバースト。100号車の伊沢の時と同様にリアセクションが粉々になり、コース外側でマシンを止めた。一瞬の出来事でのトップ交代に、サーキット全体は息をのんだ。

ここまで力走を続けてきたオリベイラは、マシンを降りると力なくコース外のサービスロードヘ。

ここまでの快走が全て水の泡となり、思わず天を仰いだ。

Photo by Naoki Yukioka

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これで1号車がトップに繰り上がり、そのままチェッカーフラッグ。

#1MOTUL AUTECH GT-Rが開幕2連勝を勝ち取った。

2位には#39DENSO KOBELCO SARD RC F、3位には#37Keeper TOM’ RC Fが入り、今回は苦戦が強いられたレクサス勢が表彰台の一角を押さえた。

まとめ

Photo by Naoki Yukioka

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最後の最後まで何が起こるか分からないのがレース。

それを改めて証明させられるレースとなったが、要所要所でチャンスをつかみ、それを積み上げていったチャンピオンチームの存在感が、最終的な勝敗の分かれ目だったのではないかと筆者は感じる。

なお第3戦オートポリス大会は熊本地震の影響で中止が決定。

次回は約2ヶ月後の第4戦スポーツランドSUGOでのレースとなる。それまでに何度かテストも実施される予定。特に序盤で出遅れてしまったホンダ勢の巻き返しも含め、中盤戦のバトルも目が離せない。