まだ、ホンダの国内販売網が3系列あった頃、そしてまだセダンの需要があると思われていた1990年代後半、クリオ店専売だったアコードの姉妹車で、プリモ店/ベルノ店で販売するための4ドアセダンとして誕生したのが「トルネオ」でした。アコードより日本人向きなフロントフェイスで一時は本家をしのぐ人気でしたが、結果的には最後のアコード姉妹車として2002年で販売を終えています。

ホンダ トルネオ SiR / 出典:https://www.honda.co.jp/news/1997/4970904.html

5ナンバー回帰!プリモ店/ベルノ店向けの6代目アコード姉妹車「トルネオ」

ホンダ トルネオ ユーロR / Photo by orion

1985年にプリモ店を設立したことで、ベルノ店、クリオ店、プリモ店の3チャンネル体制となったホンダの国内販売網ですが、クリオ店とプリモ店で併売していた「アコード」が1989年にモデルチェンジした4代目からクリオ店の専売となります。

同年からクリオ店では4代目アコード姉妹車の初代「アスコット」を販売するようになり、さらに1993年にアコードが5代目へフルモデルチェンジ、主要市場のアメリカを基準にした3ナンバー車となると、同年デビューした2代目アスコットと、その姉妹車でベルノ店向けに新登場した「ラファーガ」は、アコードとは別系統なFFミッドシップの5ナンバーセダンになりました。

そして1997年にアコード/アスコット/ラファーガが一斉にモデルチェンジするタイミングで、ホンダは「冗長性を持たせたプラットフォームをベースに、各市場ごとで需要に合わせたアコードをそれぞれ開発・生産する」という方針へ転換。

6代目アコードの日本仕様は「日本で扱いやすいサイズにこだわった」5ナンバー車となり、アスコット/ラファーガもアコード姉妹車「トルネオ」に統合されて廃止、プリモ店とベルノ店で併売される事になりました。

アコードとの違いは前後デザインとワゴンの有無

ホンダ トルネオ ユーロR / 出典:https://www.favcars.com/honda-torneo-euro-r-cl1-2000-02-wallpapers-253248.htm

アコードセダンとトルネオはグレードが共通で、当初のラインナップは1.8L/2.0LのSOHC VTECエンジン搭載車(1.8VTS/2.0VTS)と、2.0Lエンジンの触媒を強化して積極的に官公庁などでの採用を狙った環境対策車(2.0LEV)、スポーツモデルのAT車(SiR・180馬力)と、リッター100馬力を誇るMT車(SiR-T)で、2.0VTSのみ4WD車も設定。

デビュー以降、特別仕様車や、エアロなどを追加した「Sパッケージ」の設定、マイナーチェンジで、エンジンを2.0L200馬力仕様のF20Bから2.2L200馬力のH22Aへ更新して内外装も一新したスポーツモデル「ユーロR」をSiR-Tに代わって設定するなどの変更も、6代目アコードと変わりません。

ただ、薄い横長グリルに大きな角目グリルで軽快感のあるフロントマスク、薄い横長テールランプなど、アコードより日本人ウケしそうな前後デザインで印象はかなり異なります。

さらに車名でも「Touring(ツーリング)とNeo(ギリシア語で「新しい」)」をかけ合わせた造語を採用した「トルネオ」は、当時まだMLBで活躍していた日本人メジャーリーガー、野茂 英雄の「トルネード投法」を思わせました。

アコードほど保守的なイメージもなく、プリモ店とベルノ店の併売でクリオ店のみのアコードより単純に販売力が強く、さらにクリオ店ではトルネオにないステーションワゴン版「アコードワゴン」も販売しており、アコードセダンと販売力が分散された事情もあって、当初トルネオはアコードセダンより好調なセールスを記録します。

しかし、当時既にセダン需要の落ち込みは激しく、新味を求めるユーザーはアコードワゴンやSUV、ミニバンへ流れ、結局は保守層から手堅い支持を受けるアコードが堅調なセールスを維持した一方でトルネオの販売は落ち込み、モデル末期の2001年頃は月販目標台数もアコードセダンの1,500台に対し、トルネオ1,000台と完全に逆転。

2021年現在の中古車市場でも、6代目アコードよりトルネオの流通台数は少なく、それもスポーツモデルとして人気だった「ユーロR」がほとんどのため、残るトルネオは廃車解体されたか、海外へ流出したと思われます。

主要スペックと中古車価格

ホンダ トルネオSiR-T / 出典:https://www.favcars.com/honda-torneo-sir-t-cf4-1997-2002-images-253246.htm

ホンダ CF4 トルネオ SiR-T 1997年式
全長×全幅×全高(mm):4,635×1,695×1,420
ホイールベース(mm):2,665
車重(kg):1,300
エンジン:F20B 水冷直列4気筒DOHC VTEC16バルブ
排気量:1,997cc
最高出力:147kw(200ps)/7,200rpm
最大トルク:196N・m(20.0kgm)/6,600rpm
10・15モード燃費:12.2km/L
乗車定員:5人
駆動方式:FF
ミッション:5MT
サスペンション形式:(F・R)ダブルウィッシュボーン

 

(中古車相場とタマ数)
※2021年4月現在
ユーロR:88万~149.8万円・12台
1.8VTS:46.2万円・1台

プリモ店/ベルノ店で最後のミドルクラスセダン

ホンダ トルネオ ユーロR / Photo by orion

2002年にアコードが7代目へモデルチェンジされる際、既に不人気ジャンルのセダンで販売不振に陥っていたトルネオは車種整理の対象となって廃止。

アコードは相変わらずクリオ店専売でしたから、2006年に「ホンダカーズ」へと販売網を統一する準備として全車種取り扱いを始めるまで、プリモ店とベルノ店ではミドルクラスセダンを販売しなくなりました。

2021年現在はレジェンド/アコード/インサイト/クラリティの4車種を細々と売るのみとなったホンダのセダンが、2000年頃までは3系統の販売店向け姉妹車をわざわざ作って何車種もあったのですから、この20年でホンダもずいぶんと変わったものです。

2020年まではさらにシビックセダンやグレイスも販売していたと思うと、ホンダは案外セダンというジャンルが好き、あるいは大事にしているメーカーなのかもしれません。