イタリアはカーデザインの聖地とも呼べる場所で、カロッツェリアと呼ばれる自動車デザインを専門とする会社がいくつも存在します。歴史に残る数々のフェラーリをデザインしてきたピニンファリーナ社や、ジョルジェット・ジウジアーロ氏が創立したイタルデザイン等は有名ですよね。しかし今回は、ピニンファリーナやイタルデザイン等の流麗で正統派な美しさとは一線を画す、個性派でアクの強いスタイリングを得意とするカロッツェリア『ザガート』を紹介したいと思います。
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航空機譲りの技術で数々のイタリア社をサポート
イタリア・ミラノに本社を置くカロッツェリア、ザガート。
その歴史は古く、創立は1919年まで遡ります。
航空機製造の技術を生かし、軽量で空力の優れたボディの設計を売りにしていたザガートは、主にイタリア国内メーカーのデザイン受託をしており、マセラティ、アバルト、ランチア、フィアットといったメーカーが主なクライアントでした。
しかし、1950年代から’60年代に1度目のピークを迎え、その後、一時的に会社としての勢いは沈静化します。
1980年代、時代が求めたアグレッシブなデザイン
’70年代はミニカーの製造等の事業で細々と続いていたザガートですが、カロッツェリアとしてのプライドか、モーターショーへのショーカーの発表は断続的に行っていました。
これが功を奏し、1986年のアストンマーティン V8ザガートや、1989年に発表されたオーテックジャパン(日産の子会社)とのコラボレーションによるオーテック ザガートステルビオが話題を呼び、再びかつてのような勢いをとりもどします。
時代に適応した現在のザガート
2000年代以降のザガートは、時代に応じていくつかのビジネスを並行して行っています。
1つは少数限定のプロダクションモデルをデザインする、「プレタ・コンデュイレ」と呼ばれる部門。
もう1つは「ザガート・アトリエ」と呼ばれる完全受注生産のスペシャルモデルをデザインする部門です。
この他にも先端デジタル技術を用いて過去の名車を再現する「サンクション・ドゥエ」等、時代に応じた事業展開を行っていました。
アストンマーティン・DB4GTザガート
簡単な歴史の次は、ザガートが手掛けたいくつかの代表的モデルを振り返ってみたいと思います。
DB4GTザガートは、最も美しいアストンマーティンとの呼び声も高い、1960年から1963年にかけて作られたモデルです。
DB4GTのシャシーに、ザガート製のボディを架装した軽量モデルとなっています。
オーテック・ザガート・ステルビオ
2代目レパードのシャシーをベースとしたステルビオは、1989年にデビュー。
ハンドメイドのアルミ製ボディとカーボンファイバー製のボンネットフードを乗せた、まさにバブル期らしい贅沢な作りの1台です。
エクステリアで特に際立っているのがフェンダーに内蔵されたミラーで、日本でこそ一般的であるものの、フェンダーミラーの存在を知らないイタリアのザガートにとっては理解に苦しむものだったと言われています。
ランチア・ハイエナ ザガート
オランダの実業家であるポール・コートと、アーティストのナーニ・テデスキの描いたスケッチをベースに、ザガートの協力によって制作された1台です。
ランチア・デルタのプラットフォームを流用しているものの、外装は総アルミボディの2ドアクーペで、本格的なライトウェイトスポーツとなっています。
フェラーリ・575GTZ
イタリア・コモ湖畔にて毎年5月末に開催されているコンクールデレガンス『コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ』にて2006年に発表された、ワンオフモデルです。
575Mマラネロをベースにしており、250GTザガートからインスパイアを受けたダブルバブルルーフ等、過去の名作からヒントを得たオリジナルデザインとなっています。
この年のヴィラデステでも大きな反響を呼んだと共に、このワンオフモデルをオーダーしたのが日本人ということも、多くの自動車ファンを驚かせました。
ランボルギーニ・5-95ザガート
ザガートの創立95周年を記念して、ガヤルドをベースに制作されたワンオフモデル。
ランボルギーニのコレクターとして知られるAlbert Spiessに向けたデザインとなっており、ルーフやリアのデザインには、かつてのザガートが手掛けた「3500GT」をオマージュしたスタイリングが施されています。
まとめ
名だたるメーカーとのコラボレーションを繰り返してきたデザイン集団、ザガート。
時代に迎合しないユニークなスタイリングは万人受けを狙ったものではなく、主にコアなファンやマニア達に向けたものでした。
そんな我が道を行くこのカロッツェリアは、これからも好事家達の支持を受けつつ美しいクルマを作っていくことでしょう。
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