1970年代、それはまさにハイパワーハイスペックエンジンの戦国時代。国産各メーカーが我こそはと高性能エンジンを次々とリリースし、モータースポーツの結果を宣伝の材料としながら開発を競い合っていました。今回取り上げる2T-Gはそんな時代に生まれ、セリカやカリーナ、カローラ、スプリンター、コロナなどトヨタの主力車種に搭載。世界で最も生産されていたDOHCエンジンでもありました。その素性の良さにより、日常のお買い物からガチなレース仕様まで様々。その出生と特徴、モータースポーツシーンなどでの活躍についてみてみましょう。

掲載日:2017/07/01

出典:http://global.yamaha-motor.com/

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生産量30万基!量産DOHC誕生

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki

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1970年(昭和45年)9月、トヨタは2代目カローラ(20系)ように、追加バリエーションとして1400ccのOHVレイアウトのT型エンジン。通称「パッションエンジン」を発表します。

矢継ぎ早に、同年12月には初代セリカが登場。

最上級グレードの1600GT(TA22型)用として既にT型と同時開発されていた、排気量1600ccのDOHCエンジンである「2T-G」が搭載されることになります。

2T-GはT型エンジンをベースに、1600ccまでボアアップさせたOHV形式の2Tブロックをベースとしていました。

このブロックに、当時技術提携パートナーであったヤマハ発動機がDOHCシリンダーヘッドを提供、ツインカム化させたのが2T-Gの正体です。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki

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搭載するシリンダーヘッドによって、OHVにもDOHCにも変わるという、トヨタらしい思想が垣間見えるエンジンですね。

因みにこの2T-G以降より、トヨタはツインカムエンジンの識別符号に「G」の記号を用いるように。

当時のモータリゼーションからすると、DOHCは高級なメカニズムの位置付けであり一部のレーシングエンジン、または各車種の最上級グレードにしか設定がない時代でありました。

一般的には雑誌や写真で見るだけの憧れのエンジンだったそうで、当時の大卒初任給がおよそ1万5千円、日産の技術の粋を集結した高性能マシン、スカイラインGTRの車体価格が154万円。

そして2T-G搭載の初代セリカは87万円でした。

もちろん、この頃まだまだ自動車は十分に高価な贅沢品であり、安い買い物ではありませんでしたが、単純に比較すると「安い方であった」ということは事実のようです。

こうして、高度成長期のクルマ好きの魂を揺さぶるツインカムエンジンは、この後1980年代前半に至るまでおよそ30万機が大量生産され、乗ることも触れることも出来なかった夢のエンジンが、頑張れば誰の手にも届くところまでやってきたのです。

 

トヨタの名エンジン2T-G。

その存在について振り返ったところで、次のページではツインプラグ仕様や4バルブ仕様、レーシングカーやそのサウンドなど、様々な2T-Gをご紹介します。