これまで現地取材を通して、モータースポーツの面白さや厳しさをお伝えしてきたMotorz。全盛期ほどではないとはいえ、F1やMotoGP日本グランプリの来場者は年々増加傾向で、モータースポーツは少しずつ人気を取り戻しつつあります。そこで気になるのが、本場のレース!モータースポーツが文化となっているヨーロッパと、日本のレースには違いはあるのでしょうか。バイクレースの本場、スペインで行われているCEVレプソルインターナショナル選手権で感じた、日本のレースとの違いをご紹介します。
掲載日:2019/07/09
CONTENTS
CEVレプソルインターナショナル選手権
CEVレプソルインターナショナル選手権は、現在motoGPで活躍中のマルク・マルケス選手、ホルヘ・ロレンソ選手、そして中上貴晶選手など、世界レベルのトップライダーを数多く輩出し、MotoGPへの登竜門となっているシリーズで、moto2クラス・moto3クラス、ヨーロピアンタレントカップの3カテゴリーが開催されています。
そして2019年シーズンもこのカテゴリーから、小倉 藍選手、オーガスト・フェルナンデス選手など、多くの若手ライダーがMotoGPへのステップアップを果たしました。
そこで、今回はスペイン マドリードを拠点に、CEVレプソルインターナショナル選手権 (以後CEV)moto2クラスに参戦する、本格レーシングチームのレースWEEKに密着。
本場のレースの雰囲気を、肌で感じてきました。
レースWEEKは水曜日からスタート
CEVのレースWEEKはレースがある週の水曜日から始まります。
水曜日にサーキットへのマシンや工具の搬入や、ピットの設営、コースウォークなどが行われ、木・金はフリー走行。
そして、土曜日に2本の公式予選が行われ、その総合タイムで決勝のグリッドが決定します。
日曜日はウォームアップと決勝レース。
決勝は、開催地やカテゴリーによって1レース制と2レース制があり、2レース制の場合は1日に2回レースが行われるので、スケジュールはすし詰め状態の大忙しな1日となります。
ちなみに、全日本ロードレース選手権の場合は、レースWEEKは木曜日から。
木曜日がピットの設営などの搬入日になっていて、金曜日がフリー走行。
土曜日に予選が行われ、日曜日が決勝となります。
また、決勝レースが2レース制の大会では、土曜日に予選と1回目の決勝レース。
日曜日に2回目の決勝レースが行われるので、CEVほどスケジュールが詰め詰めになる印象はありません。
また、CEVに比べてレースWEEKが1日少ない点に関しても、その前の週に事前テストと呼ばれる練習走行が行われるので、予選・決勝までの走行時間としてはそこまで大差はありませんが、全国に散らばるサーキットへの移動時間や交通費などのがレースWEEKと事前テストで倍必要となることを考えると、全日本ロードレースの方が手間と経費がかかる計算になります。
マシンは走行するごとに分解して洗浄
CEVのピット裏には、日本のレースではあまり見かけない簡易シンクのようなものが、各チームごとに置かれています。
そして、走行が終わるごとに各チームのメカニックが一斉にそのシンクを使って何かを洗っている光景が広がるのです。
これは何をしているのかと言うと、CEVではフリープラクティスなどの走行が終わるごとに各マシンを台に乗せて分解し、全てのパーツにクラックなどの傷やダメージが無いか、念入りにチェックします。
そして、全チームピット裏に用意したシンクのような台で、各パーツを1つ1つ洗浄してから再度組み立て、再びマシンの形に戻して次の走行に備えるのです。
全日本ではマシンに何らかのトラブルがあって全てをバラす事はあっても、基本的に走行後はカウルをはずして磨く程度のチームが大半の印象。
1日の終わりに分解する事はあっても、ピット裏でパーツ専用の洗浄台を見かける事はありません。
しかし、この走行ごとにパーツを分解して丁寧に洗浄する光景は、ロードレース世界選手権(以後:MotoGP)でも見られるので、この細かさが世界に通ずるレベルという事なのかもしれません。
メカニックは、サーキットでモーターホームに寝泊まり
CEVチームのトランポは、どのチームもモーターホームと呼ばれるトレーラーで、中にはベッドとシャワー、トイレやリビングなどの生活に必要な設備が全て完備されています。
そしてレースWEEK中、ほとんどのチームのメカニックは、ここで寝泊まりしているようです。
また、パドックにはキャンピングカーも多く停まっていて、このキャンピングカーを生活の拠点に、WEEK中はサーキットから出ないというチームも多々あるようでした。
こちらも、日本では基本的にバイクレースのトランポは4tトラックで、マシンや工具、ピットの設備などを積み込むための一般的な機能しかありません。
そのため、大きなレースが開催される期間中は出場チームのメンバーや関係者がサーキット付近の宿を全て押さえてしまうので、観戦客は会場からかなり離れた宿しか取れず、ホテル難民となってしまうことも多々。
もちろん中には、ハイエースで車中泊というレース関係者もいますが、チーム単位でパドックに泊まるというのは、少し新鮮でした。
食事は、特設ケータリングテント
日本のレースでの食事は、朝はホテルやコンビニで購入し、お昼はサーキットのレストランかお弁当のデリバリーを注文。
そして、夜はサーキットやホテル付近のレストランでみんなで食べるというのが一般的で、基本的にはサーキットの外で食べ物を調達するという印象です。
しかし、そこもCEVはサーキットのパドック内にいくつかのケータリングテントが設置されいて、チームはそのケータリングテントのお店と契約。
朝はホテルで朝食を取るチームも多いのですが、昼食と夕食はサーキット内で済ませる事がほとんどです。
テント内は日替わりでビュッフェスタイルの様々な料理が用意されていて、時間になるとテントごとに契約しているチームの関係者が自由に出入りし、好きなものを好きなだけ食べて、持ち場に戻ります。
各メーカーのサービススタッフがノリノリ
日本でも大きなレースが行われる際は、パドックの片隅にタイヤやサスペンションなどのパーツから、ヘルメットなどの装備まで、そのレースで使用されているメーカーのサービスブースが出展され、自社製品についての様々なサポートを行ってくれるのですが、CEVで驚いたのは、そこで働くスタッフの陽気さ。
例えばタイヤの組み換えなどの作業を行っているダンロップブースでは、大音量の音楽が途切れることはなく、前を通るとなんだかこっちまで楽しくなってくるほどです。
そして、スタッフ全員がリズムに合わせてノリノリで、楽しそうに作業をこなしている姿がとても印象的で、この仕事もいいな~と少し憧れてしまいました。
まとめ
今回は、モータースポーツの本場スペインを拠点に活動するバイクチームに同行させてもらい、CEVレプソルインターナショナル選手権のレースWEEKを体験してきました。
そこで一番強く感じたのは、スペインのレーシングチームは、「レースをする」という目的のためだけに集まった集団だということ。
そのため、基本的に走行や食事などレースWEEKの生活は全てサーキットで完結するように考えられています。
そしてレースが終われば、ピットの撤収を担当するメカニック以外は、驚くべきスピードで帰り支度をして、次のレースでの再会を約束し、各々の帰路につくのです。
それは、レースの余韻を楽しもうとする姿は全く見られないと言っても過言ではないほど、とてもさっぱりしたものでした。
とはいっても、決してドライという訳ではなく、オンオフがハッキリしているという印象で、チームを構成しているすべてのメンバーがその道のプロなのです。
これは、バイクレースが文化として確立しているからこそ成立する光景なのかもしれません。
Motorzではメールマガジンを配信しています。
編集部の裏話が聞けたり、最新の自動車パーツ情報が入手できるかも!?
配信を希望する方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みください!