時代はハイブリッド、プラグインハイブリッド、さらに100%電気で走るBEVなど、クルマは電動化の道を突き進んでいます。とはいえガソリンエンジン、ディーゼルエンジンといた内燃機関も、まだまだ重要な動力源です。そこで今回は革新的技術を採用し、低燃費技術に優れたエンジンをご紹介します。
掲載日:2020/01/15
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世は電動化、それでも内燃機関は必要だ!
クルマ業界では電動化が進み、欧州メーカーは『内燃機関廃止』を掲げるなど電動化しなければならない風潮になってきています。
では、ガソリンや軽油を燃料とするエンジンはいずれなくなるのかというと、それはまだまだ先の話。
逆にエンジンは低燃費化が進み、さらに重要となる動力源です
トヨタとホンダはHVやPHVがメイン
2019年開催のフランクフルトモーターショーで、トヨタやホンダが2030年に向けて電動車両を大幅に強化する戦略を打ち出しましたが、その内訳はハイブリッド(HV)を中心としており、BEVの比率はホンダが2030年に15%、トヨタが2025年に100万台以上です。
トヨタとホンダは電動化強化の方向性を見据えてはいますが、まだ当分の間はBEVやFCV(燃料電池車)よりHVやPHEV(プラグインハイブリッド)がメインということになります。
ガソリン・ディーゼル車廃止でもHVやPHVはOK
ガソリン・ディーゼル車の廃止を掲げる国々をみれば、ノルウェーは2030年からEVとHVのみを販売、オランダは2025年からEVのみを販売、インドは2030年からEVとHVのみを販売、イギリスは2040年からガソリン車とディーゼル車の販売禁止し、HVを含めるかどうかは検討中としてます。
オランダではあと5年でガソリン・ディーゼル車が走れなくなりますが、それ以外の国ではHVやPHEVは走行可能とされており、イギリスがHVを禁止したとしても、それは20年後のことです。
東南アジアや南米、アフリカといった発展途上国では、ガソリン・ディーゼル車を廃止にすることは現状困難で、充電ステーションのインフラ整備がほとんど進んでいないことと、高額なBEVが消費者へ浸透していないことが問題となっています。
このように、ガソリン・ディーゼルエンジンはまだまだ必要で、年々厳しくなる排ガス規制やエコロジーを考えたうえで、低燃費・低排出ガスをより高い次元で実現するエンジンの開発は、BEV専門メーカーでないかぎり必須であるということです。
新型マツダ3で実現!夢のガソリンエンジンともよばれたSPCCI
マツダから発売された新型マツダ3とCX-30に搭載されたスカイアクティブ-Xは、ガソリンとディーゼルの良いとこ取りをした新世代エンジンだと言われています。
なぜなら、従来のガソリンエンジンにはない『SPCCI(火花点火制御圧縮着火)』は、ディーゼルエンジンに似た特性があるからです。
ガソリンエンジンは、シリンダー内で圧縮した混合気を点火プラグから出る火花で着火、そして爆発によりエネルギーを得るため、『火花点火内燃機関』と呼ばれることもあります。
一方でディーゼルエンジンは、高圧縮で自動着火する軽油の特性を生かし、シリンダー内で空気をガソリンエンジンより高圧縮・高温にし、そこへ直接軽油を噴射して高温の空気と軽油が混ざり合い、着火・爆発を起こします。
そのため、ディーゼルエンジンには点火プラグが存在せず、『圧縮着火』という方法が採用されています。
そしてスカイアクティブ-XのSPCCIはディーゼルエンジン同様、高圧縮・高温化によりガソリンエンジンよりも強い爆発力を発生。
従来のガソリンエンジン同様に点火プラグを使用して膨張火球炎を作り出すことで着火しますが、火花点火内燃機関よりも薄いガソリンと空気が、理想的とされる混合比で混ざった混合気を、ディーゼルエンジン並の圧縮比で爆発させるのです。
混合気の空燃比を最適化し、圧縮比をディーゼル並に高くすることで、熱効率を引き上げ、一度の爆発で得られるエネルギーを増幅。これにより低回転域でのトルクアップと、燃料消費を削減することに成功。
マツダはSPCCIを実用化することにより、低燃費・低排出ガス化と出力/トルクアップを両立させることを実現し、より理想的なガソリンエンジンを生み出したのです。
次世代のガソリンエンジン!日産・可変圧縮エンジン『VCターボ』
日産は、BEVのリーフやe-POWERなどパワートレインの電動化で高い技術力を見せつけていますが、ガソリンエンジンの開発にも抜かりはありません。
可変圧縮比エンジンとターボチャージャーを組み合わせた『VCターボエンジン』には、革新的な技術が組み込まれています。
ピストン上/下死点位置を連続的に可変させ、回転数にあわせて最適な圧縮比を自在に切り替えることができ、圧縮比が可変できるエンジンの量産は世界初。
VCターボエンジンは1998年から研究が開始され、日産が20年かけて作り上げた最高傑作です。
新型ヤリスに搭載!『ダイナミックフォース』エンジン
トヨタ新型ヤリスは、すでに、2020年自動車業界の最大トピックス候補ですが、その中でも搭載される新型エンジンはパワーと燃費をこれまで以上にアップさせています。
1リッターエンジンの1KR型は従来モデルの大幅改良モデルで、1.5リッターのM15A-FKS型とHVに搭載されるM15A-FXE型は完全新設計のエンジン。
RAV4などに搭載される2リッター直4エンジンの1気筒をカットした、トヨタが推し進めるTNGA技術のひとつです。
さらに、M15A型エンジンは『ダイナミックフォースエンジン』の第3弾であり、1.5リッター直列3気筒エンジンと発進ギア付ワイドレンジCVTの組み合わせによりNAエンジンモデルで最高出力120馬力/最大トルク14.8kgmと、なかなか強力。
燃費はWLTCモード総合21.4km/L、市街地15.7km/L、郊外22.6km/L、高速24.1km/Lを実現しました。
現行のヴィッツ1.3リッター NAガソリン車でJC08モード25.0km/Lですが、より実燃費に近いWTLCモード表示で総合21.4km/Lであるため、現行モデルより優れた驚くべき燃費値となっています。
これらの驚異的な性能は、熱効率をこれまで以上に向上させており、M15A型の熱効率は40%の大台を超える見込みです。
熱効率40%以上とは、メーカーワークスのレーシングカーに搭載されるエンジン並。
スーパーGT500のマシンで40%以上、F1エンジンでは50%以上とされているため、トヨタがレースで培ってきた技術もM15A型エンジンに応用されているのかもしれません。
まとめ
日本メーカーはHVやPHEV、e-PWOERといったエンジンとモーター/バッテリーを組み合わせたパワートレインの技術では世界トップクラスですが、BEVとなれば話は別。一部で『日本の自動車開発はガラパゴス化している』とも言われています。
しかし、これまで水素を用いたFCV(燃料電池車)を量産化し、日産 リーフが世界で最も販売されているEVであることを考えれば、海外メーカーよりも劣っているということはないでしょう。
おそらく、2020年は国産メーカーから多くのBEVが登場するはず。
また、ガソリンエンジンでより効率良くエネルギーを引き出し、低燃費・低排出ガスを実現するエンジンの開発においては、欧米メーカーよりも優れており、クルマ従来通りの駆動源をエンジンのみとすることで、安価で故障しにくいクルマを生み出しているのも事実です。
ガソリン/ディーゼルエンジンが将来的に廃止され、すでに内燃機関が悪者扱いされている風潮がありますが、現段階では低燃費・低排出ガスのエンジン開発技術はエコロジーに十分役立っています。
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