万が一、事故にあった際に乗員の命を守るエアバッグシステム。エアバッグはどんなときに作動するのでしょうか。エアバッグ搭載車に乗車する際の注意点は、ドライバーとして極力知っておくべきです。

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エアバッグの正しい知識をみにつけよう

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現在、現行車の運転席と助手席のほとんどに、エアバッグが標準装備され、サイドエアバッグやカーテンエアバッグなども標準装備またはオプション設定されているモデルが過半数となっています。

交通事故による死者数は毎年減少傾向で、2019年は統計以来最小数となりました。

この結果には、事故の発生数が少なくなっていることが理由に挙げられますが、エアバッグにより命を取り留めた事例も多く、衝突安全性の向上も大きな要因と言えるでしょう。

しかし、万が一エアバッグが作動するような大事故にあった際は、エアバッグ搭載車の正しい乗り方に気を付けなければ、エアバッグの効力はなくなり、逆に危ない場合もあります。

エアバッグが搭載されているから安心なのではなく、エアバッグについて正しい知識を身につけて、普段から意識することが重要です。

SRSエアバッグとはシートベルトの補助拘束装置

出典:写真AC

クルマのカタログには『SRSエアバッグ』と書かれることがありますが、このSRSとは”Supplemental(補助)”、”Resraint(拘束)”、”System(装置)”の頭文字を並べたもので、直訳すれば『補助拘束装置』です。

つまり、SRSエアバッグはシートベルの補助的な装備という位置付けとなります。

エアバッグが作動した事故でシートベルトを着用していなかった場合、着用していた時に比べ死亡率が15倍も高いという結果が出ており、シートベルトを着用しなければ、エアバッグの効果を得ることはできません。

表記にSRSが記載されていなくても『エアバッグ』、『SRSエアバッグ』は、表記が違うだけで同じもの。エアバッグ搭載車両に乗るときは、シートベルトの着用は不可欠です。

エアバッグのメカニズム

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エアバッグは、車体に衝撃が加わったことを、加速度センサーに内蔵されているフロントインパクトセンサーが検知し、その電気信号がECUのSRSコントロールユニットへ送られます。

そして、SRSコントロールユニットが、インフレータを作動させるのです。

インフレータは、エアバッグモジュール内に組み込まれており、その信号を受けるとガスを発生させて着火させ、気体を膨張させます。

エアバッグが開くところは、運転席ならステアリングのホーンパッド、助手席ならダッシュボードの上。

普段は樹脂部品の中に格納されており、エアバッグの展開の際に樹脂製の部品が当たってケガをしないよう、部品は飛散しないように設計されています。

膨らむ速さは0.01秒単位で調整!エアバッグ展開時間は0.03~0.5秒

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テスト用のクルマが壁に衝突し、中のダミー人形が慣性力で前へ出ようとするのをエアバッグがクッションになって受け止める映像を見たことはありませんか?

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スローモーション映像では、エアバッグがダミー人形を包み込むように見えますが、エアバッグの展開時間は0.01秒単位で調整されており、0.03~0.5秒でエアバッグが開くとされています。

また、気体の爆発現象でエアバッグを膨らませるため、顔面はエアバッグに強打し、かなりの衝撃を受けることになります。


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風船状のエアバッグに気体が入りきって硬いままだと、重大な傷害を追うことにもなりかねないため、対策としてエアバッグの背面に気体を出す排気口が設けられており、エアバッグと人間が衝突してもエアバッグが凹んでクッションとなるよう設計されているのです。

しかし、サイドカーテンエアバッグは頭部が直接衝突することを防ぐことが目的なるので、膨張後もガスを排出してクッション性を持たせる必要はなく、カーテン状のエアバッグが室内側面に張り巡らされます。

これらのことから、速度域が低い衝突事故でもエアバッグが展開することで、スリ傷や排出された燃焼ガスでヤケドを負うことも稀にあります。

それでも、重大事故の際に死亡や重症とならないためにも、エアバッグは瞬間的に開くことは不可欠であり、それにはガス爆発が必要となるわけです。

SRSエアバッグが作動する条件とは

出典:写真AC

エアバッグは、時速20~30km以上の速度で強固な構造物や自動車と衝突するなど、フロントインパクトセンサーが反応するような衝撃を受けたときに作動します。

事故をしたけどSRSエアバッグが作動しない場合とは

事故にあっても、エアバッグが作動しない場合も有り得ます。

例えば、電柱への衝突など、車両の一部だけが極端に変形するような衝突事故です。

また、トラックの荷台の下に滑り込んだ衝突のときも同様です。

他にも、乗用車の側面に追突してしまった際に、相手側が大きく変形、または移動するような衝突のとき。

壁などに斜めに衝突し、衝突方向が分散または自動車が衝突しながら大きく移動するような衝突のとき。

以上のような事故を起こしても、センサーが反応せず、エアバッグが作動しないことがあります。

エアバッグ搭載車両の乗車中の注意点

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エアバッグ搭載車両に乗車する際、シートベルトを装着することは必須です。

他にも、運転時に上半身がハンドルに近づきすぎないこと、助手席に座っているときに足や手を乗せた状態で座ったり、顔を極端にダッシュボード上部に近づけないことも、エアバッグ搭載車両に乗車する際の注意点です。

また、助手席のインパネにモノを置いたり、フロントテーブルやナビゲーションモニターを装着しても、助手席のエアバッグが展開したときに危険です。

まとめ

出典:写真AC

エアバッグが有るのと無いのでは、事故を起こした際の生存率が大きく異なってきます。

現行車のほとんどにエアバッグは標準装備されているため、安全性はある程度安心できますが、正しい乗車方法を守らなければ、エアバッグが開いても効力を得にくく、逆に危険を生み出す場合もあります。

当たり前のことですが、シートベルトを正しく装着する、乗車姿勢を正しくするといったことに注意すれば、エアバッグが開く状況に遭遇しても乗員の怪我を軽減し、最悪命を落とすといったリスクも下がります。

自動運転技術や予防安全装備といったシステムが普及し、事故を未然に防ぐ技術が飛躍的に向上していますが、それでも事故はまだまだ無くなりません。

万が一の事故のときに、自らと他の乗員の命を守るために、運転する前にエアバッグ搭載車両の乗車中の注意点を確認しましょう。

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