アメリカンカスタムカーの元祖ともいえるホットロッド。大きなV8エンジンとむき出しになったホイールの姿は、日本のカスタムカーにない迫力です。しかも、ベースは第二次世界大戦前に生産された大昔のクルマにもかかわらず、今でも整備して公道を走る熱狂的な愛好家がいるほど。そんなコアなカスタムカテゴリーの歴史を紹介します。

掲載日:2020/02/24

Photo by Jane drumsara

アメリカンカスタムカー文化!ホットロッド

アメリカのモータリゼーションは、日本よりはるか昔に発展し、カスタムカーも深い歴史を持ちます。

その象徴が『ホットロッド』!

100年近く前に生産されたビンテージカーをベースに、エンジンの載せ替えや屋根を切り取りロールーフ化、派手なペイントなどが主流のカスタムです。

日本でも熱狂的な愛好家がホットロッドを所有しており、専門店もいくつか存在。

世界中からホットロッドが集まる、ヨコハマ ホットロッドカスタムカーショーが年々盛り上がりをみせ、ホットロッド文化が日本にも少しずつ浸透。日本のカスタム文化に、大きな影響を与えています。

ホットロッドとは

Photo by John

ホットロッドは、1930年代に生まれたアメリカンカスタムカーのジャンルです。

『ホットロッド』の起源は明らかにされていませんが、有力な説として”ホット(Hot)”はパフォーマンスを向上させる意味、”ロッド(Rod)”はOHVエンジンのプッシュロッド、またはオープンカーの”roadstar”を短縮させたものを意味するといわれています。

起源は大戦前のオールドカーカスタム

ホットロッドの起源は、1930年代にフォード モデルTやモデルA、モデルBなどをベースにカスタムされたクルマで、ロサンゼルス北東部の乾燥した湖底で、レースが行われていました。

カスタムカーは軽量化するためにフェンダーが取り外され、パワーを出すためにフォードフラットヘッドV8エンジンを搭載。

空気抵抗を減らすためにルーフを切り取り、フロントウィンドウを狭くして、リアタイヤのトラクションを高めるために、タイヤを極太化。

1945年以前のホットロッドは、フォード35本ワイヤースポーツホイールを装着していました。

第二次世界大戦後に帰還兵の間で人気を博し、特に1950~1960年代にロックやロカビリー、ドゥーワップといったサブカルチャーを愛していた若者層である『グリーサー』の中では、ホットロッドに乗ることが、一つのステータスとされたほどです。

ホットロッドはドラッグレースの元祖!?

第二次世界大戦前からホットロッドカルチャーが盛り上がるにつれ、ホットロッドのドラッグレースが盛んに行われるようになります。

といってもドラッグレースは公道や空軍基地の滑走路で行われていたため、1951年にドラッグレース協会『ナショナル・ホットロッド・アソシエーション(NHRA)』が発足。

その後、ドラッグレースのルール作りや公式レースが開催されるようになります。

これに伴いホットロッドをベースに競技用のドラッグレース専用マシンが製作され、ホットロッドから派生したトップフューエルマシンは、最大で1万馬力、最高速度500km/h以上をたたき出すまでになりました。

Drag Racing Top Fuel/ Photo by ANDRA Drag Racing

戦後はホットロッドからストリートロッドへ

1950年代に入ると、ホットロッドのベースマシンとして、フォード ポピュラーやクライスラー ウィンダーの人気が高まります。

そして、エンジンはフォードエンジンからクライスラー エンジンへと変わりました。

その後、フォード マスタングをはじめとするマッスルカーの人気が高まり、ホットロッドの人気は衰退していきますが、1973年の石油ショックでユーザーが燃費性能を重視するようになると、マッスルカーが衰退していきます。

代わって、ホットロッドが見直され、ホットロッドからレースに出場するマシンを彷彿させる『ストリートロッド』が登場。

『ナショナル・ストリートロッド協会(NSRA)』が設立され、ストリートロッドのイベントなどが開催されるようになりました。

ホットロッドは車検に通るの?

出典:写真AC

ホットロッドカーは、むき出しになったタイヤや、ほとんど直管のような形状のマフラーなどから、確実に車検は通らないように見えますが、多くがナンバーを取得して公道を走ることが可能です。

日本の車検制度は、バスやタクシーといった公共交通機関の車両の安全性を確保するために、1930年に実施されのが始まりで、現在に比べれば緩い規制内容でした。

1951年から乗用車を対象とした本格的な車検制度が制定されたのですが、それ以前に生産されたクルマはその当時の制度が適用されるため、戦前に生産された車両をベースに作られたホットロッドは、現行車のような車検規制はありません。

といっても、2年に1度は車検に通すことが必要であり、検査項目にはサイドスリップ検査、ブレーキ検査、燈火器検査、スピードメーター検査、下廻り検査などがあります。

排ガス検査はなく、マフラーの音量規制もありませんが、著しくうるさいと検査官の判断で落とされることもあるようです。

このように、古いクルマであるがゆえに車検はかなり緩いため、明らかに違法改造車両のように見えても、実は合法なクルマなのです。

まとめ

ホットロッドは、100年近く前に生産されたアメ車に乗るため、メンテナンスや維持は現行車に比べ大変です。

しかし、国産や欧州車にはない強い独自性をもち、歴史を重んじながらも、最新かつ最良の方法でアップグレードするといったアプローチは、いかにもアメリカらしいところ。

アメ車好きやアメリカンサブカルチャー好きの方は、究極の趣味車ホットロッドに乗って、古き良きアメリカンカスタムカルチャーを味わってみてはいかがでしょうか。

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