バイクの定番カスタムといえば、マフラーの交換。パワーやマフラー音など、マフラーを交換すれば性能アップやカッコよさにもつながります。しかし、排ガス規制と騒音規制がどんどん厳しくなり、車検に適合するマフラーの開発が難しくなっています。そこで車検に合格できるマフラーの条件や、どこまでマフラーカスタムが許されるのかを解説します。

掲載日:2019/06/14

出典:写真AC

新法の施行により厳しくなった規制基準

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二輪車・四輪車ともに、排ガス規制が年々厳しくなっていますが、カスタムマフラー(交換用マフラー)の基準も厳しくなっています。

二輪車では、マフラー交換のカスタムは定番中の定番。

マフラーを交換することで、二輪車の醍醐味である官能的なマフラー音とドレスアップ効果を望めますが、車検対応でなければマフラー音がうるさくて周りに迷惑をかけてしまいます。

もちろん公道走行は不可になるため、警察の目にとまれば、即取締りをうけることになるでしょう。

現状のカスタムマフラーの規制内容は

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マフラーの騒音規制は、バイクの年式によって基準値が異なり、新しいモデルになればなるほど騒音規制や排ガス規制の値が厳しくなっています。

また、平成28年度4月20日より法改正が行われ、以下のような取りまとめが発表されました。

・平成28年10月1日以降に生産されたバイクには、すべてのマフラーパーツに新たな基準が採用。
・マフラー音量の基準は『相対規制値』というヨーロッパ基準が採用。
・車検の必要がない250cc以下の二輪車も新基準が適用。
・リプレイスマフラーは国土交通省で型式認定されたもののみ音量基準に適用。
・音量の基準はdB(デシベル)をなくし、車種別(型式認定別)に定める。
・音量は騒音測定によって認定を受ける必要がある。
・簡易着脱が可能なバッフルの使用が禁止。
・違反で検挙された場合は『不正改造車』のステッカーが貼られ、整備命令が出される。
・整備命令から15日以内に保安基準に守った車体で車検を受けなければならず、それをしなければナンバーや車検証が没収される。
・整備命令に従わない場合は50万円いかの罰金、改造を施した人にも6ヵ月以内の懲役か30万円いかの罰金。
・違法改造と思われる車体を見かければ、一般市民が警察官や国土交通省に情報提供できる。

これらの基準以外に、公的機関による性能証明書やマフラー本体に『性能確認済』の表示が必要になります。

また、この内容に反して違反で捕まってしまえば、近いうちに必ず整備を行わなければなりません。

応じなければ、多額の反則金もしくは懲役刑を科せられる恐れもあるのです。

カスタムマフラーの騒音測定方法は

(C) 2001-2013 Japan Motorcycle Accessories Association

平成29年12月13日にカスタムマフラーの基準の見直しを定める告示改正が実施されました。

平成28年10月1日以降の新車から導入された新基準では、『近接騒音測定』、『定常走行騒音測定』、『加速騒音基準適合ASEP』の3つからなる音量測定方法『ECR R41-04』が採用され、このすべてに適合しなければなりません。

しかし、メーカーが届け出ている新車には、近接騒音規定が規制値を超える場合もあるため、規制値を超えていても、その届出値から+5dBまでを許容範囲としています。

Abc Apps 騒音測定器 (Sound Meter) / ©2019 Google

 

ちなみに、自ら測定したい場合は、スマートフォンに騒音測定のアプリをダウンロードして使えば簡単に測定できます。

近接騒音測定

エンジンの最高出力時の回転数が5,000rpmを超えるモデルの場合、停車してニュートラルに入れた状態で無負荷運転されている状態にし、最高出力回転数の50%の回転数で、排気流方向の後方45°、50cmの位置で騒音を測定する方法です。

定常走行騒音測定

最高出力時の回転数の60%で、走行した速度に達した際に発生する騒音を、7.5m離れた場所で測定する方法です。

加速騒音基準適合ASEP

定常走行状態からフル加速して、10m走行した時点で発生する騒音を7.5m離れた場所から測定する方法です。

純正装着マフラーについては、平成29年12月の改正で、加速騒音基準適合の測定方法のみでの規制となりました。

交換用マフラー騒音規制値一覧

(C) 2001-2013 Japan Motorcycle Accessories Association

平成28年10月以降の交換用マフラーの騒音規制値

平成28年10月以降に販売された新車のカスタムマフラーは、次の騒音規制をクリアしなければなりません。

自動車の種別 排気量別 規制値
加速騒音規制値 二輪車 第一種原動機付自転車 総排気量≦50cc 79dB(A)
第二種原動機付自転車 50cc<総排気量≦125cc 79dB(A)
軽二輪自動車 125cc<総排気量≦250cc 82dB(A)
小型二輪自動車 総排気量>250cc 82dB(A)
自動車の種別 排気量別 規制値
近接排気騒音規制値 二輪車 第一種原動機付自転車 総排気量≦50cc 84dB(A) 型式認定
79dB(A)以下の場合
84dB(A)
絶対値
型式認定
79dB(A)越える場合
+5dB(A)
相対値
第二種原動機付自転車 50cc<総排気量≦125cc 90dB(A) 型式認定
85dB(A) 以下の場合
90dB(A)
絶対値
型式認定
85dB(A) 越える場合
+5dB(A)
相対値
軽二輪自動車 125cc<総排気量≦250cc 94dB(A) 型式認定
89dB(A)以下の場合
94dB(A)
絶対値
小型二輪自動車 総排気量>250cc 94dB(A) 型式認定
89dB(A)越える場合
+5dB(A)
相対値

平成28年9月30日以前の交換用マフラーの騒音規制値

近接排気騒音法基準値(移行期日)
平成10年規制以前 平成10年規制 平成13年規制 平成22年規制
原動機付自転車 第一種原付車(~50CC) 近接 95dB(A) 近接 84dB(A)

新:H10.10.1
継:H11.9.1
輸:H12.4.1

近接 84dB(A) 近接 84dB(A)
加速 79dB(A)新:H22.4.1
継:H22.4.1
輸:H22.4.1
第二種原付車(50~125CC) 近接 95dB(A) 近接 95dB(A) 近接 90dB(A)

新:H13.10.1
継:H14.9.1
輸:H14.9.1

近接 90dB(A)
加速 79dB(A)新:H22.4.1
継:H22.4.1
輸:H22.4.1
二輪自動車 軽二輪自動車
(125~250CC)
近接 99dB(A) 近接 94dB(A)

新:H10.10.1
継:H11.9.1
輸:H12.4.1

近接 94dB(A) 近接 94dB(A)
加速 82dB(A)新:H22.4.1
継:H22.4.1
輸:H22.4.1
小型二輪自動車
(250CC~)
近接 99dB(A) 近接 99dB(A) 近接 94dB(A)

新:H13.10.1
継:H15.9.1
輸:H15.9.1

近接 94dB(A)
加速 82dB(A)新:H22.4.1
継:H22.4.1
輸:H22.4.1
近接:近接排気騒音
加速:加速走行騒音
新:国産新型車(国産新型車期日以降に型式認定を受けた新型車)
継:国産継続車(国産新型車期日以前に型式認定を受け、国産継続車を超えて生産される継続生産車)
輸:輸入車(輸入車期日以降に生産された輸入車)

カスタムマフラーの排ガス規制は

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カスタムマフラーの規則は、騒音規制以外に排ガス規制もあります。

それは、排ガス中の温室効果ガスや大気汚染となる物質の量を制限するものです。

平成11年度二輪車・新排出ガス規制

年度 車種 モード 一酸化炭素(CO) 炭化水素(HC) 窒素酸化物(NOX)
平成11年度 原付一種 二輪車モード 13.0g/km 2.0g 0.3g/km
原付二種
軽二輪車
小型二輪車
年度 車種 モード 一酸化炭素(CO) 炭化水素(HC)
平成11年度 原付一種 アイドリングモード 4.5% 2,000ppm
原付二種
軽二輪車
小型二輪車

平成17年度二輪車・新排出ガス規制

年度 車種 モード 一酸化炭素(CO) 炭化水素(HC) 窒素酸化物(NOX)
平成17年度 原付一種 二輪車モード 平均値:2.0g/km 平均値:0.5g/km 平均値:0.15g/km
原付二種 平均値:2.0g/km 平均値:0.5g/km 平均値:0.15g/km
軽二輪車 平均値:2.0g/km 平均値:0.3g/km 平均値:0.15g/km
小型二輪車 平均値:2.0g/km
上限値:0.2g/km
平均値:0.3g/km
上限値:0.2g/km
平均値:0.15g/km
上限値:0.2g/km
年度 車種 モード 一酸化炭素(CO) 炭化水素(HC)
平成17年度 原付一種 アイドリングモード 3.0% 1,600ppm
原付二種
軽二輪車 1,000ppm
小型二輪車

平成24年25年排ガス試験方法

年度 車種 モード 一酸化炭素(CO) 炭化水素(HC) 窒素酸化物(Nox)
単位:g/km
平成24・25年度 原付一種 WMTCモード 3.48 0.36 0.28
原付二種
軽二輪車
小型二輪車

平成28年二輪車関係排ガス規制

規制年 適用車種 一酸化炭素(CO) 炭化水素(HC) 窒素酸化物(NOX)
規制値【g/km】
平成28年規制 総排気量0.050リッター超0.150リッター未満かつ最高速度50km/h以下、又は、総排気量0.150リッター未満かつ最高速度50km/h超100km/h未満の二輪車(クラス1) 1.14 0.30 0.07
総排気量0.150リッター未満かつ最高速度100km/h以上130km/h未満、又は、総排気量0.150リッター以上かつ最高速度130km/h未満の二輪車(クラス2) 1.14※1
(1.58)
0.20※1
(0.24)
0.071
(0.10)
最高速度130km/h以上の二輪車(クラス3) 1.14※1
(1.58)
0.17※1
(0.21)
0.09※1
(0.14)
※1 規制値欄は、「平均値(最大値)」を示す。また、最大値は、小型二輪自動車のみに適用される。

測定方法は?

排ガスの値を個人レベルで測定するのはかなりハードルが高く、排ガス測定の機材だけで10万円ぐらいするため、個人がカスタムのために購入するには高額すぎます。

そのため、排ガスを測定したい場合は、予備検査場にいって測定してもらうしかありません。

JMCA認証マフラーであれば、そのバイクの生産時期と適合年度に沿ったものであれば問題はありませんが、マフラー自体の触媒を取り払ったりすれば、もちろんアウト!

また、古い使いこんだカスタムマフラーであれば、触媒が劣化していて基準値を上回ったり、マフラーに穴が開いていたりしても車検不適合となるため注意が必要です。

JMCA認証マフラーでなければ車検適応という絶対条件はない

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一般社団法人・全国二輪車用品連合(通称:JMCA)は、日本のパーツメーカーが集まった組合のようなもので、政府機関ではないため、法律を定める権限をもった機関ではありません。

しかし、法律に沿った団体独自の基準を国土交通省へ申請し、認証を得る活動は行っています。

そのため、JMCA認証プレートがあるマフラーはJMCA認証で規制値をクリアしているものがほとんどですが、国が定めたものではないため、街乗りバイクに装着する場合は、車検時に必ず検査を受けなければなりません。

よって、JMCAのプレートがなければならないという法律はなく、付いていないと違法ということはありません。

もちろんJMCAに加盟していないメーカーで認証プレートのないマフラーでも、騒音・排ガス基準をクリアしているものは多数存在します。

輸入マフラーは車検対応なのか

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海外製の輸入マフラーでも、騒音規制と排ガス規制をクリアしていれば、車検には通ります。

車検適合の基準に、公的機関による性能の証明や、マフラー本体に性能確認済の表示が必要とされますが、輸入マフラーにはJMCA認証プレートがなかったりするものがほとんど。

しかし、性能確認済の表示に関して欧州規制対応を表す『Eマーク』がついていれば、騒音・排ガス基準内に収まっている場合がほとんどです。

まとめ

出典:イラストAC

カスタムマフラーは、車体が新しい年式になるにつれ、騒音・排ガスの規制値が低減されますが、ネットオークションやフリマで購入した中古マフラーでは、基準値を超えてしまうこともあります。

車検時だけ純正マフラーに交換して通したとしても、うるさいマフラーで公道を走れば、近所迷惑もいいとろ。

警察に見つからなければ大丈夫なんて思わずに、基準値を守ったカスタムマフラーを装着するように心がけましょう。

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