歴史のあるポルシェ911ですが、993、996、997などモデルの区別は難しいところです。そこで今回は、911歴代モデルの年式や特徴などの見分け方を紹介します。
掲載日:2019.10/19
CONTENTS
ポルシェ911の誕生
ポルシェ911は、1963年の発表から50年以上もポルシェのフラグシップモデルとして生産され続けているモデルです。
ポルシェは、第二次世界大戦直後に送り出した356の後継型として、新しいスポーツカーの開発を敢行。
開発時のタイプナンバーを、そのまま正式なモデル名に採用します。
開発にいたっては、VW(フォルクスワーゲン)との提携関係により、システムを統一化させるため、当時のVWが使用していた900番台の数字を採用。
6気筒エンジンを901、4気筒エンジンを902とする予定でした。
そして、1963年9月に開催されたフランクフルトモーターショーで901を発表し、1965年から生産を開始します。
しかし、フランスのプジョーが2桁目に0を使用した3桁数字のネーミングを商標登録しており、ポルシェへ異議申し立てを行ったため、ポルシェは”0″を”1″に変え、911と名称を変更。
名前を変更するまでに、82台の901が生産されていたため、初代モデルは開発コードそのままの901型と称されます。
901【コンパクトなナローボディから始まった初代911】
初代モデル911は通称『ナロー』と呼ばれていますが、ナロー(narrow)は「(長さに比べて幅の)狭い、タイト」という意味で、356よりも車幅が短かったことから、「ナローポルシェ」と呼ばれることもあります。
また、車名の『911』から初代モデルを特定するために、初代モデルは車体形式から「タイプ901」や「901型」と呼ばれ、現在に至るまでの歴代モデルそれぞれが車体形式で呼ばれることになりました。
ちなみに、登場した1963年モデルの車体サイズは、全長4,135mm/全幅1,600mm/全高1,273mm/ホイールベース2,211mmと、5ナンバーサイズ枠に収まるコンパクトカー並みのサイズで、搭載された空冷・水平対向6気筒SOHCエンジンの排気量は、1969年までは1,991cc、1970~1971年の間は2,195cc、1972~1973年は2,341ccでした。
伝説のナナサン・カレラ
後継型930が登場する直前の1973年に911カレラRSが登場。
名前のRSは、ドイツ語の『RennSport』の略で、レースモデルを意味します。
レース出場の公約要件を満たすために開発された、いわゆるホモロゲーションモデルで、当初グループ4規定を満たすために500台限定で販売されますが、グループ3規定も満たすために、さらに1,000台以上が追加生産されました。
エンジンは2.7リッターまで排気量をアップさせ、最大出力210馬力/最大トルク261N・mを達成。
1964年モデルの911が130馬力、174N・mだったのに比べれば、倍近いパワーアップでした。
930ターボ登場後も1977年までは901を生産
1974年にターボが搭載された930が登場する一方で、NAモデルは77年モデルまで、901をそのままアップデートさせていきました。
901は登場した1963年から1977年までのモデルを、それぞれ”O”、”A~L”のアルファベットで表されることが多く、1974~1977年モデルはH(1974年)、I(1975年)、K(1976年)、L(1977年)とシリーズが分かれます。
1974年モデルからは911カレラRSと同様に排気量を2.7リッター化させ、最終的に911カレラ3.0では2,994ccまで排気量が上げられました。
912/912E【911シリーズ唯一の4気筒エンジン】
ポルシェは901型と356型の間を埋めるべく、水平対向4気筒エンジンを搭載した902を登場させる予定でしたが、プジョーの異議申し立てにより、902は912へモデル名を変更して発売。
1965~1969年まで生産された912は、1.6リッター空冷水平対向4気筒エンジンが搭載されました。
さらに、北米市場で売り出すための912Eも1976年に登場し、排気量が2リッターまでアップされています。
912の外見は901と大きな違いはありませんが、911シリーズ唯一の4気筒モデルであり、生産期間も短かったため非常に希少価値の高いモデルです。
930【911シリーズ初のターボ搭載車両】
2代目911にあたる930型は、1975年モデルから911シリーズで初めてターボが搭載され、リアフェンダーは通常より12cmワイドになっています。
NAモデルの開発が遅れて、ターボ搭載の930型を先行販売するも、NAモデルは従来の901型が継続販売され、1978年に『911SC』と呼ばれる新型NAモデルが登場しました。
930型は、通称『ビッグバンパー』と呼ばれます。
ビッグバンパーは、米国の安全基準において速度5マイル以下で車体が破損しないバンパー装着が規定されたことから取り付けられた大きなバンパーで、930の特徴のひとつです。
930型は1973~1989年の16年間という長い間生産され、歴代911シリーズのなかで一番のロングセラーモデル。
930型ターボの排気量は2,994ccで、最高出力260馬力・最大トルク329N・mを発揮し、4速MTを搭載しています。
1978年には排気量が3,299ccまで拡大されて、インタークーラーも採用されたことで300馬力を発揮するまでのハイパワーマシンとなり、1989年モデルでは4速MTから5速MTへと変更されました。
当時は、人気漫画『サーキットの狼』に登場したり、スーパーカーブームが到来したことで、日本で911シリーズが一気に知名度を上げます。
しかし、当時の日本では輸入車にも馬力規制が設定されていたため、日本仕様は245馬力に制限されていました。
911SC【930型のNAエンジンモデル】
1978年にはNAモデルも930ターボとデザインが共通化され、モデル名は911SC(Super Carrera)となりますが、1984年以降のSCは再びカレラとなります。
911SCはカレラよりワイドボディに設計され、ボディカラー同色の電動調整式ATS製の15インチアルミニウム鋳造ホイールが採用されました。
エンジンは3.0リッター水平対向6気筒エンジンが搭載され、180~204馬力を発揮します。
964【911シリーズ初のティプトロ搭載】
930型が販売された16年の間に19万8,469台を生産する大ヒットモデルとなり、3代目モデルの964には930を超える性能と販売力が期待されました。
しかし、964は1987年10月19日(月曜日)に起こった世界的な株価大暴落『ブラックマンデー』直後に発表。
大きなセールスを記録することができなかったものの、1988~1993年の5年間で生産台数6万3,762台の達成しています。
930が大ヒットした影響もあり、964は930の面影を残す外観となりますが、80%のパーツを一新されてエンジンはNAで3,600cc、ターボで3,299cc、964ターボ3.6のみ3,600ccとなりました。
また、930型のボディサイズが全長4,300mm/全幅1,650mm/全高1,350mm/ホイールベース2,272mmだったのに対し、964型では全長4,245mm/全幅1,660mm/全高1,310mm/ホイールベース2,272mmと、若干幅広になり全高も低くなっていますが、大幅に異なることはありませんでした。
しかし、911シリーズで初めての4WDモデルとなる『カレラ4』の登場や、AT仕様のティプトロニックATが採用されたのも964型が初でした。
993【911シリーズ空冷エンジン最終モデル】
993型は空冷エンジンの最終モデルであるため、空冷式エンジンで最も完成されたモデルとして今でも高値で取引されています。
シルエットは964型よりもヘッドライトが小さく傾斜され、テールデザインも一新され直線状のテールランプが特徴的です。
ATモデルはティプトロニック4速ATを継続採用し、MTは6速化。
ターボは片バンク一基ずつタービンを搭載したツインターボ化され、大きなインタークーラーも装着されたことで、408馬力を発揮。
路面へのトラクション伝達を優先させるために、ターボモデルを全輪駆動としたのは993が初でした。
また、911シリーズの最上級グレートとされたGT2は993で初めて設定され、FIA-GT2クラスの規定を満たすように設計されて57台が生産されています。
996【911シリーズ初の水冷エンジン】
911シリーズのなかで、エンジンが水冷化された最初のモデルが996です。
1997~2004年まで生産され、前期モデル(1997~2001年)と後期モデル(2002~2004年)で仕様は大きく異なります。
996で一番の特徴が涙目型のヘッドランプですが、前期モデルではボクスターとフロントマスクを共通化。
911ターボは、カレラやGT3とヘッドランプの形状が同じでした。
しかし、後期モデルになると、ヘッドランプは全モデル、911ターボの形状が採用されています。
997【涙目から丸目に!ATモデルにPDK搭載】
997型は996をベースに80%以上の部品が一新され、多くの911ユーザーから酷評された涙目型ヘッドランプが、993までの丸目型に戻されした。
そして2004~2011年まで生産され、そのうち2008年6月のマイナーチェンジで、前期モデルと後期モデルに分かれます。
前期モデルでは6速MTと5速ティプロトニックSのトランスミッションが搭載され、後期モデルでは5速ティプトロニックSが7速デュアルクラッチのPDKに変更されました。
991【911全モデルがツインターボ化】
991は外観上997と大差はなく、見分けるのは困難です。
ボディサイズで比較すれば、997が全長4,435mm/全幅1,810mm/全高1,310mm/ホイールベース2,350mmに対し、991は全長4,500mm/全幅1,810mm/全高1,305mm/ホイールベース2,450mm。
さらに、タイヤサイズは997が18インチ、991が19インチのため、991はロングホイールベースとタイヤの大径化により、997より一回り大きくなっています。
また、991は2011~2019年までの生産期間中に行なわれた2015年のフランクフルトモーターショーでマイナーチェンジ版が発表され、2016年モデルから後期モデルとなりました。
後期モデルは911全モデルをツインターボエンジン化するビッグマイナーチェンジとなったため、『991.2』または『991Ⅱ』とも呼ばれます。
マイナーチェンジ以前、ターボモデル以外は3.4リッター/3.8リッターのNAエンジンでしたが、991Ⅱでは『カレラ』『カレラ4』『カレラS』などグレード名にターボが付かないモデルのほとんどが3.0リッターツインターボエンジンとなり、『911ターボ』『911ターボS』などグレード名に”ターボ”が付くモデルと『911GT2 RS』は3.8リッターエンジンを搭載。
『911GT3』のみ、4.0リッターNAエンジンが搭載されました。
992【911シリーズ最新モデル】
992は2019年2月に発売され、9月に日本へのデリバリーが開始となりました。
大きな特徴は、テールランプを993のように一直線のデザインにして、フロントタイヤを20インチ、リアタイヤを21インチまで大径化。
992とボディサイズで比較すると、全長で19mm、全幅で42mm、ホイールベースで100mm延長され、ワイドボディ、ロングホイールベース化されています。
トランスミッションのPDKは991の7速から992では8速化され、7速、8速がオーバードライブ化されたことにより、高速クルーズでのエンジン回転数適正化と快適性向上を実現。
メーターにはナビゲーションマップの表示、インフォテインメントシステム『PCM(ポルシェ コミュニケーション マネージメントシステム)』、レーンキープアシスト、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)の採用や、ウェットモードの新設など、最新の運転支援システムや電子制御などが搭載され、991よりも格段に多機能化をはたしています。
まとめ
911は水平対向6気筒エンジンとRR駆動の設計を半世紀以上も継続させ、スポーツカー市場では唯一無二の存在です。
ポルシェの歴史をたどっていくと、911の進化はポルシェブランド自体の飛躍を表しているように思えます。
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