ロータリーエンジンはマツダが誇る技術のひとつ。搭載されたモデルはRX-7やRX-8が有名ですが、ほかにもロータリーエンジンを搭載したモデルはいくつか存在しました。ここではあまり知られていないロータリーエンジン搭載のモデルを6台ご紹介します。
掲載日:2020/04/09
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マツダが送り出した量産車初のロータリー搭載モデル
ロータリーエンジン(以下:RE)は排ガス規制の強化により、現在搭載されているモデルはラインナップにありません。
しかし、過去にはRX-7やRX-8など輝かしいスポーツカーが世に送り出されました。
また、国産メーカーで初めてル・マン24時間を制したマツダ・787Bは、4ローターが搭載されたCカーで、マツダREはモータースポーツにおいても多大な影響を及ぼしています。
RX-7/8はREの比較的新しいモデルです。
時代をさかのぼると、他にもRE搭載モデルがいくつも販売されており、今となっては希少車で中古車市場ですらあまりお目にかかることができません。
そんなREの量産に成功したのはマツダのみですが、メルセデスベンツもREを搭載したコンセプトカー『C111』を発表したり、アウディは発電用の245ccREを搭載したしたプラグインハイブリッドモデル『アウディA1 e-tronプロトタイプ』を発表するなど、海外メーカーもREの市販化に乗り出そうとした過去があることから、マツダ以外のメーカーもREの可能性に魅力を感じていたのでしょう。
ロータリーエンジンを搭載した名車たち
コスモスポーツ
世界で初めてREが搭載された市販車はNSU社が制作したヴァンケルスパイダー、そして、世界初のRE実用・量産モデルはマツダ コスモスポーツです。
マツダが初めてREを試作したのが1961年11月で、当時の社名はマツダではなく、その前身の東洋工業でした。
しかし、REの開発は難航し、REを生み出したドイツのNSU社でさえもヴァンケルスパイダーを継続的に生産するまでに至っていません。
マツダもREの市販化まで開発は困難を極めましたが、耐久テストを重ねて総距離300万キロの走行テストを乗り越え、1967年に2シーターREスポーツカー コスモスポーツを発売したのです。
そしてコスモスポーツの生産終了から3年後の1971年、2代目モデルとなるコスモAPが登場します。
その後、1981年に世界初のターボ装着RE搭載モデル 3代目コスモ、そして1990年には3ローターのユーノスコスモとコスモシリーズは4モデル生み出され、マツダのRE伝説はコスモシリーズと共に進化していきました。
ファミリア ロータリークーペ
マツダ ファミリアは、ファミリーカーの代表モデルとして1960年代から2004年まで生産されました。
大衆車であるため、2代目モデルは1,000~1,200ccのコンパクトなレシプロエンジンが搭載されていましたが、2代目ファミリアが発売されてから1年後にRE搭載のファミリア ロータリークーペが登場します。
コスモスポーツに搭載された491cc×2ローターのREを採用し、100psまでパワーアップ。
見た目は大衆車のコンパクトクーペおよびセダンでしたが、最高速は180km/h、0→400m加速は16.4秒を実現し、まさに羊の皮をかぶった狼と呼べるモデルでした。
ルーチェ ロータリークーペ
マツダ ルーチェはファミリアよりもワンサイズ大きく、モデルラインナップ上の中級クラス的な位置付けで販売されました。
初代モデルは1966年8月に発売され、1967年の東京モーターショーに出品されたRX87のプロトタイプもルーチェ ロータリークーペとして1969年10月に発売となります。そのため、このモデルはRX87と呼ばれることも。
デザインはイタリアのベルトーネが手掛け、傾斜の強いレザートップのハードトップにしたスタイルが斬新かつエレガントなスタイルでした。
エンジンは655cc×2ローターを搭載し、126ps発揮、最高速度は190km/hを実現します。
カペラ ロータリークーペ
マツダ カペラはファミリアの上位クラスとして1970年に登場。
RE搭載モデルは初代モデルと2代目モデルで、1978年まで生産されました。
ファミリアやルーチェ同様にレシプロエンジンとRE搭載モデルを並売し、ファミリア同様に一般大衆車ルックでしたが、REを搭載したことで、最高速度190km/h、0-400メートル15.7秒を実現しています。
また、REで世界初のAT仕様を登場させたのもカペラでした。
このように同クラスの他モデルと比較すれば、オーバースペックなカペラ ロータリーですが、これはマツダの創立50周年を記念して企画されたモデルだったため、開発費にはかなりのお金がかけられており、贅沢すぎるとクルマとなっています。
そのためカペラ ロータリークーペGSの価格は87万円で、当時、2.0リッター直6エンジンを搭載した日産 フェアレディZの国内仕様、84万円より高額でした。
サバンナ
マツダはRE開発後、ファミリアやカペラなど普段乗り向け乗用車にREを搭載したスポーツモデルを展開してきましたが、サバンナだけは純スポーツカーとしてレースで華々しい成績を残してきたモデルです。
当時サバンナは、コスモ、ファミリア、ルーチェ、カペラに続くREモデル第5弾として登場し、輸出仕様のモデル名はRX-3でした。
この名前からわかるように、RX-7やRX-8の先代モデルに相当するモデルで、エンジンはコスモスポーツと同じ491cc×2ローターの10A型エンジンを搭載。
レース出場のためのスポーツキットも開発されています。
1971年にレースデビューすると、12月に開催された富士ツーリストトロフィ500マイルで総合優勝を果たし、当時無敵だったスカイラインGT-Rの50連勝を阻止することに成功。
その後、国内レースだけでなくデイトナ24時間やルマン24時間などのビッグレースにも参戦し、REスポーツが世界へ進出していくきっかけとなりました。
ロードペーサー
マツダ ロードペーサーはトヨタ センチュリーや日産 プレジデントに対抗するために開発された、マツダが誇る最上級モデルです。
といっても、ロードペーサーが発売されたのは1975年のことで、当時のマツダは大型サルーンのシャシーを持っておらず、オーストラリアのGMホールデンからフルサイズセダン『HJ』の最上級グレード『プレミオ』のフレームを調達。
そこに、654cc×2ローターの13Bエンジンと日本自動変速機(現:ジヤトコ)製の3速ATを搭載し、開発されたのがロードペーサーでした。
車体は全長4,850mm、全幅1,885mmと超大型ボディで、装備にはパワーステアリング、パワーウィンドー、パワードアロック、電動調節式アウトサイドミラーなど、当時としては最先端の機能がほぼすべて詰め合わされています。
価格は5人乗りが371万円、6人乗りが368万円です。
ちなみに、1975年の大卒初任給が89,300円だったため、誰でも買えるクルマではなく、当時のセンチュリーやプレジデントを上回る超高級車でした。
いくらREが搭載されていたとはいえ、この価格帯では売れるはずもなく、5年間だけ生産され、販売台数は799台。
現存していれば超希少モデルであることは間違いありません。
まとめ
マツダは、1960年代後半からスポーツモデルまたはグレードにREを搭載し、独自のエンジンフィールや加速感でクルマ好きを魅了させてきました。
排ガス規制の強化や低燃費が重要視されるようになり、2012年のRX-8生産終了から事実上REは消滅してしまいました。
しかし、REはレシプロエンジンよりも軽量コンパクトに設計できることや、シンプルな構造で小排気量でもパワーを出せる特性から、現在も開発が進められています。
トヨタはマツダと共同開発でRE搭載のシリーズ式ハイブリッドを開発することを発表し、マツダも次期REスポーツとされるRX-9の開発を進めているとウワサされるなど、まだまだREの可能性は絶大です。
多くの名車を生み出してきたマツダREは、間違いなく素敵な次世代REモデルを登場させてくれるでしょう。
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