毎年、4月1日時点での書類上の所有者に請求が来る自動車税は、普通車と貨物車では金額が異なります。そこで、自動車税の観点から、普通車と貨物車はどちらがお得なのかを考えてみました。また、普通車として登録されているクルマを貨物車登録に変更できるのかという疑問も、合わせて解説していきます。
掲載日:2020/04/07
CONTENTS
普通車と貨物車の違い
まず、普通車と貨物車の違いから整理していきましょう。
普通車と呼ばれているクルマは、一般的に「乗用車」のことを指し、免許区分では主に「普通自動車」にあたります。
乗用車とは「人の運送の用に供する車」と定義されており、人が乗ることが主な用途とされています。
一方で貨物車には明確な定義が存在せず、貨物車としての条件さえ満たしていれば、乗用車も貨物車として登録することが可能です。
自動車税の違い
乗用車と貨物車の大きな違いとなるのは税金です。
冒頭でも触れた通り、4月1日時点での所有者に請求される自動車税が乗用車よりも貨物車の方が安く済む場合があるのですが、具体的にどのような違いがあるのかを見ていきましょう。
乗用車の自動車税
乗用車の自動車税は、排気量によって金額が決まります。
- ~1000cc以下 25,000円
- 1001cc~1500cc以下 30,500円
- 1501cc~2000cc以下 36,000円
- 2001cc~2500cc以下 43,500円
- 2501cc~3000cc以下 50,000円
- 3001cc~3500cc以下 57,000円
- 3501cc~4000cc以下 65,500円
- 4001cc~4500cc以下 75,500円
- 4501cc~6000cc以下 87,000円
- 6001cc~ 110,000円
貨物車の自動車税
貨物車の自動車税は、自動車の最大積載量によって金額が決まります。
- ~1t以下 8,000円
- 1t超~2t以下 11,500円
- 2t超~3t以下 16,000円
- 3t超~4t以下 20,500円
- 4t超~5t以下 25,500円
- 5t超~6t以下 30,000円
- 6t超~7t以下 35,000円
- 7t超~8t以下 40,500円
課税の基準が異なるため単純な比較は難しいものの、最大積載量を抑えることができれば、自動車税は乗用車よりも貨物車の方が明らかに安いといえます。
しかし、貨物車として登録するためには法律により定められた基準を満たす必要があるのです。
いったいどのような基準が定められているのでしょうか。
貨物車のルール
貨物自動車は法律により、床面積・開口部の寸法などが細かく規定されています。
- 床面積1平方メートル以上(軽自動車は0.6平方メートル以上)
- 乗車面積よりも積載床面積が大きいこと
- 乗車人数の重量よりも積載重量の方が大きいこと
- 開口部は縦・横800mm以上(軽自動車は、縦600mm横800mm)以上
- 積載スペース内の座席については折り畳みもしくは脱着式のもの
貨物車の条件(一部抜粋)
【物品積載設備の床面積】
自動車の物品積載設備を最大に利用した場合において物品積載設備の床面積が1平方メートル(軽自動車にあっては、0.6平方メートル、二輪の自動車でけん引される被けん引自動車にあっては、0.2平方メートル)以上あること。
【物品積載設備の床面積と乗車設備の床面積】
自動車の乗車設備を最大に利用した場合において、残された物品積載設備の床面積が、この場合の乗車設備の床面積より大きいこと。
【積載貨物の重量と乗車人員の重量】
自動車の乗車設備を最大に利用した場合において、残された物品積載設備に積載し得る貨物の重量が、この場合の乗車設備に乗車し得る人員の重量より大きいこと。
【物品の積卸口】
物品積載設備が屋根及び側壁(簡易な幌によるものであって、その構造上屋根及び側壁と認められないものを除く。)によっておおわれている自動車にあってはその側面又は後面に開口部の縦及び横の有効長さがそれぞれ800mm(軽自動車にあっては、縦600mm横800mm)以上で、かつ、鉛直面(後面の開口部にあっては車両中心線に直角なもの、側面の開口部にあっては車両中心線に平行なものをいう。)への投影面積が0.64平方メートル(軽自動車にあっては、0.48平方メートル)以上の大きさの物品積卸口を備えたものであること。ただし、物品積載設備の上方が開放される構造の自動車で、開口部の床面への投影面積が1平方メートル(軽自動車にあっては、0.6平方メートル)以上の物品積卸口を備えたものにあっては、この限りでない。
【隔壁、保護仕切等】
自動車の乗車設備と物品積載設備との間に適当な隔壁又は保護仕切等を備えたものであること。ただし、最大積載量500Kg以下の自動車で乗車人員が座席の背あてにより積載物品から保護される構造と認められるもの、及び折りたたみ式座席又は脱着式座席を有する自動車で乗車設備を最大に利用した場合には最大積載量を指定しないものにあってはこの限りでない。
【隔壁等】
自動車の運転者席(運転者席と並列の座席を含む。以下「運転者席」という。)の後方がすべて幌で覆われた物品積載装置であって、運転者席と物品積載装置との間に乗車人員が移動できないような完全な隔壁があること。
【座席】
物品積載装置内に設けられた座席は、そのすべてが折りたたみ式又は脱着式の構造のもので、折りたたんだ場合又は取り外した場合に乗車設備が残らず貨物の積載に支障のない構造のものであること。
結局どっちがお得なの?!
税金の面では安くなる可能性が高い貨物車ですが、乗用車を貨物車にするためには多くの条件をクリアする必要があります。
そのため、一般的な乗用車を貨物車として登録することは難しいといえるでしょう。
乗用車と貨物車の両方をラインナップしている車種の場合、快適な乗り心地や多くの人を乗せるのであれば乗用車登録、乗り心地や乗車定員よりも趣味の道具や多くの荷物を積載する用途がメインであれば、貨物車登録を選択するのが良いといえます。
1人や2人乗車がメインで若干ハード(良くいえばスポーティー?!)な乗り心地でも良いのであれば、貨物車の方がランニングコストはお得といえるでしょう。
また、乗り心地がいいとは言えないものの、重たいものを積載することを前提に設計されている貨物車は、意外にも踏ん張りが効いたスポーティーな走りをしてくれるのも魅力のひとつです。
具体的な費用の比較
ハイエース200系を例として車検にかかる法定費用と自動車税を比較してみましょう。
車検は、乗用車の3ナンバーが2年に1回、商用車である1ナンバー・4ナンバーは1年に1回のペースになります。
分かりやすくするため、今回は2年分で計算します。
(※ハイエースの場合、重量税がグレードやカスタマイズ内容で変わるためあくまでも参考程度でお考えください。)
3ナンバーの場合
車検にかかる法定費用と自動車税
- 自賠責保険 24ヶ月 21,550円
- 重量税 32,800円
- 検査印紙代 1,800円
- 自動車税 50,000円×2年分=100,000円
合計 156,150円
1ナンバーの場合
車検にかかる法定費用と自動車税
- 自賠責保険 20,370円×2年分=40,740円
- 重量税 16,400円×2年分=32,800円
- 検査印紙代 1,800円×2年分=3,600円
- 自動車税 16,000円×2年分=32,000円
合計 109,140円
4ナンバーの場合
車検にかかる法定費用と自動車税
- 自賠責保険 15,050円×2年分=30,100円
- 重量税 16,400円×2年分=32,800円
- 検査印紙代 1,800円×2年分=3,600円
- 自動車税 16,000×2年分=32,000円
合計 98,500円
比較すると自動車税を含めた法定費用だけでも1ナンバーや4ナンバーの方が3ナンバーの乗用車よりも安く済むことがわかります。
まとめ
ランニングコストが抑えられる貨物車ですが、貨物車として登録するためには様々な条件が必要になります。
ご自身のクルマの使い方を改めて見直し、クルマ選びや登録方法を選択してみるのも賢いクルマの乗り方なのかもしれません。
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