1989年に初代モデルが登場するや、日本へステーションワゴンの一大ブームを巻き起こしたスバル レガシィですが、当然ながらトヨタをはじめ各メーカーが追従していきます。そんな、次々に登場したライバルに格の違いを見せつけ、「ステーションワゴンならスバル」を決定付けたのが、2代目BG系レガシィ ツーリングワゴンでした。そんなBG系レガシィツーリングワゴンを、当時はまだ影の薄かった4ドアセダンBD系や、初登場となったグランドワゴン(後のアウトバック)を含めて紹介します。

スバル 2代目レガシィ BG系ツーリングワゴン(奥) /出典:https://www.subaru.jp/brand/technology/history/

ライバルをことごとく返り討ち!痛快な勝ちっぷりだった2代目レガシィ

スバル 2代目レガシィ BD系ツーリングスポーツ(手前)・BG系ツーリングワゴン(奥) /出典:https://www.subaru.jp/brand/technology/history/

1989年に登場した初代スバル レガシィは、先代にあたるレオーネの上級グレードが旧態依然かつマニアックすぎたことにより、日本どころか主要市場の北米すら失いかけていた危機的状況を受け、水平対向エンジン+FF/4WDという基本レイアウトを維持したほかは全面新設計とすることで、イメージを一新。

それにより、自動車メーカーとしての存続が危ぶまれたスバルをV字回復させる立役者となり、日本では特にツーリングワゴンが大ヒットとするなど、それまで商用登録のライトバンに毛が生えた、ビジネスワゴン程度の扱いだったステーションワゴンカテゴリに、大ブームを巻き起こします。

その影響はワゴンに留まらず、それまで3ドアが主力だった国産ハッチバック車も5ドアを主力とするほどの変化をもたらし、今に至りますが、当然国産車メーカー各社ともレガシィの成功を座視していたわけではありません。

トヨタは1992年に「カルディナ」を、日産も1995年ににアベニールサリューへと発展する「アベニール」を1990年にデビューさせ、マツダもカペラカーゴを1994年のマイナーチェンジで「カペラワゴンへ」と発展。同クラスワゴンをラインナップしていなかった三菱も、とにかく近い車をと1994年に5ドアセダンの「ギャランスポーツ」を投入します。

しかしそれらは、1993年10月にモデルチェンジした2代目レガシィ ツーリングワゴンに、ことごとく完膚なきまでに敗れ去ったのです。

それぞれの4ドアセダン版(コロナやブルーバード、プリメーラなど)は、2代目レガシィが初代から引き続きワゴンのイメージが強かったため、相対的にセダンが目立たなかった事もあり、ワゴンほどの惨敗は喫しませんでしたが、ことステーションワゴンだけはレガシィに販売面でもイメージでも勝てず、気持ちがいいほどの負けっぷりとなりました。

スバル 2代目レガシィ BG系ツーリングワゴン /出典:https://www.subaru.jp/brand/technology/history/

もともと、運転席/助手席のゆったり感に定評があった初代レガシィの全長/ホイールベースを50mm延長し、室内幅と室内高は変わらないものの、室内長は135mmも延長。

荷室の使い勝手に影響を与えず後席の広さや快適性を格段に向上させ、時代に乗って3ナンバー化したものすらあったライバルに対し、5ナンバー枠のままで圧倒的な差をつけたのです。

さらに1996年6月のマイナーチェンジでは素材の見直しにより、重量増加分を相殺しつつボディ剛性や衝突安全性を向上。トップグレードの2リッターツインターボエンジンはクラス最強の280馬力(当時の自主規制上限)を発揮し、さらに名門ビルシュタインの倒立式ダンパーを純正採用するなど、かなり攻めた仕様となっています。

そもそも、この時期に至ってもほとんどのライバル車は商用ライトバン兼用で、唯一マトモに対抗できたのは、アメリカからUSアコードワゴンを輸入したホンダくらいのものでした。

この2代目レガシィによって、現在の2代目レヴォーグまで続く「ステーションワゴンの王者スバル」が確立されたのです。

「最強GTワゴンならスバル」を確立したBG系ツーリングワゴン

米国ポンネビル・スピードウェイで世界速度記録を達成した、スバル 2代目レガシィ BG系ツーリングワゴン /出典:https://www.subaru.jp/brand/technology/history/

1993年9月、翌10月の発売を前に、米国ユタ州ソルトレイクのポンネビル・スピードウェイでFIA(国際自動車連盟)およびACCUS(米国自動車競技委員会)公認の世界速度記録に挑んだ2代目BG系レガシィ ツーリングワゴンGTは、新型の2リッターシーケンシャルツインターボ版EJ20を唸らせ、平均速度249.981km/hを達成。当時のステーションワゴン最速を記録します。

2代目レガシィ ツーリングワゴンは初代の同GTで大ヒット要素となった、「ステーションワゴンなのに快適で速い!」を忠実に受け継いだ正統進化モデルで、レオーネの後継車としてまだ古さを残した初代から、オリビエ・ブーレイのデザインにより脱却を果たした事や、全長・ホイールベースの延長で後席の快適性が向上されたこともあり、的確にネガを潰したモデルです。

しかもホンダのUSアコードワゴンを除き、ライバルは全モデル「同じデザインのライトバンがあるため、どうしても商用車の乗用モデルというイメージがつきまとう」という問題を抱えていた中、乗用モデル専用設計・デザインというアドバンテージ高く、走にりも快適性にも優れたレガシィ ツーリングワゴンに、死角はほとんどありません。

ただし、「GT」に搭載されたシーケンシャル・ツインターボ版のEJ20だけは、「セカンダリータービンの過給開始時に明確なトルクの谷間がある」と指摘され、4代目でツインスクロール・シングルタービン化されるまで、レガシィターボ系の数少ない弱点となっています。

そして1996年6月のマイナーチェンジでは、2リッターターボのMT車が280馬力化(同クラス初)。「GT-B」グレードにはビルシュタイ製の倒立式ダンパーが純正採用され、リアハッチに輝くビルシュタインエンブレムは憧れの的でした。

主要スペックと中古車価格

スバル 2代目BG系 レガシィ ツーリングワゴンGT-B 1996年式 出典:https://www.subaru.jp/onlinemuseum/find/collection/2nd-legacy-tw/index.html

スバル BG5 レガシィツーリングワゴン GT-B 2016年式
全長×全幅×全高(mm):4,680×1,695×1,490
ホイールベース(mm):2,630
車重(kg):1,430
エンジン:EJ20 水冷水平対向4気筒DOHC16バルブ ICシーケンシャル・ツインターボ
排気量:1,994cc
最高出力:206kw(280ps)/6,500rpm
最大トルク:338N・m(34.5kgm)/5,000rpm
10・15モード燃費:10.4km/L
乗車定員:5人
駆動方式:4WD
ミッション:5MT
サスペンション形式:(F・R)ストラット


(中古車相場とタマ数)
※2021年1月現在
30万~69万円・8台

偉大過ぎるワゴンの影になってしまった、BD系ツーリングスポーツ(セダン)

スバル 2代目レガシィ BD系ツーリングスポーツ /出典:https://www.subaru.jp/brand/technology/history/

2021年1月現在、スバル公式サイトのオンラインミュージアムを見ると、2代目BD系4ドアセダンは「ツーリンススポーツのネーミングで登場しました」と書かれており、当時のカタログにも「LEGACY TOURING SPORTS」と書かれています。

しかし、3代目からレガシィB4を名乗る以前の2代目レガシィセダンを「ツーリングスポーツ」と呼ぶ人があまりいないところを見ると、実際にはキャッチコピー程度の扱いで、全く浸透していないようです。

おまけに初代の大ヒット以来、「レガシィ」と言えば一般的にはツーリングワゴンを指すほどの主役っぷりで、1990年に参戦したWRC(世界ラリー選手権)でもパワーウェイトレシオ不足に悩まされ、インプレッサと交代する直前の1993年に最初で最後の優勝を果たしたくらいで、ライバル(ギャランVR-4など)に比べて地味な印象でした。

そのため、ツーリングワゴン同様、内外装の一新と後席快適性の大幅向上といった正常進化を遂げ、マイナーチェンジで「RS」グレードはワゴンの「GT」同様の進化を果たしていたにも関わらず(もちろんビルシュタインダンパーも装着された)、「あのレガシィのセダン版」という不本意な扱いが続いたのは、少々惜しかったところです。

ツーリングワゴンでライバルへ圧倒的勝利を遂げたスバルにとって、セダンの不振、あるいは地味っぷりは重要課題であり、次期モデル(3代目)では、「レガシィB4」として大々的な宣伝とともに再出発するキッカケとなりました。

主要スペックと中古車価格

スバル 2代目BD系 レガシィ ツーリングスポーツ(セダン) ブライトン 1995年式 /出典:https://www.subaru.jp/onlinemuseum/find/collection/2nd-legacy-ts/index.html

スバル BD5 レガシィ (ツーリングスポーツ) RS 1996年式
全長×全幅×全高(mm):4,605×1,695×1,405
ホイールベース(mm):2,630
車重(kg):1,380
エンジン:EJ20 水冷水平対向4気筒DOHC16バルブ ICシーケンシャル・ツインターボ
排気量:1,994cc
最高出力:206kw(280ps)/6,500rpm
最大トルク:338N・m(34.5kgm)/5,000rpm
10・15モード燃費:10.4km/L
乗車定員:5人
駆動方式:4WD
ミッション:5MT
サスペンション形式:(F・R)ストラット


(中古車相場とタマ数)
※2021年1月現在
39.9万円・1台

珍車とは言わせない!クロスオーバーモデルのBG系グランドワゴン

スバル 2代目レガシィ BG系グランドワゴン/ 出典:https://www.subaru.jp/brand/technology/history/

2代目レガシィにはもう1台、北米向けとして開発され、1995年8月には日本でも発売された、BG系ツーリングワゴンの2.5リッター車をベースにしたクロスオーバーモデル、「グランドワゴン」がありました。

1990年頃から大いに盛り上がったRVブームにおいて、本格オフローダー4WDではオーバースペックだけど、「それ風で快適性は普通の車」に乗りたいユーザー向けに、ミニバンやステーションワゴン、トールワゴンへオフローダー風の装飾を施したモデルが多数登場します。

後に初代トヨタ RAV4や初代ホンダ CR-VといったクロスオーバーSUVが成功すると、1990年代前半に多数登場した過渡期のRV風モデルは「なんちゃってRV」と珍車扱いされる事も多々ありましたが、今や一周回って「SUVより手軽なクロスオーバー風の車」は普通に人気があるため、流行に乗った評価というのはアテにならないものです。

一方で、BG系レガシィ グランドワゴンは「なんちゃってRV」と呼ぶにはやや本格的で、最低地上高が高めに取られており、ベースモデルより若干ワイルドなデザインとなっていました。

同時期(1995年10月)に発売されたインプレッサ グラベルEXが、「当時のなんちゃってRVそのもの」だったのとは、同じスバル車なのに大きく異なりますが、北米向けに開発されたものを日本に投入した際、変に日本仕様へと手を加えなかったのが良かったようで、落ち着きのある大人のクロスオーバーモデルとして、珍車扱いはされませんでした。

主要スペックと中古車価格

スバル 2代目BG系 レガシィ グランドワゴン 1996年式 /出典:https://www.subaru.jp/onlinemuseum/find/collection/legacy-gw/index.html

スバル BG9 レガシィグランドワゴン 2016年式
全長×全幅×全高(mm):4,720×1,715×1,555
ホイールベース(mm):2,630
車重(kg):1,420
エンジン:EJ25 水冷水平対向4気筒DOHC16バルブ
排気量:2,457cc
最高出力:129kw(175ps)/6,000rpm
最大トルク:231N・m(23.5kgm)/3,800rpm
10・15モード燃費:10.6km/L
乗車定員:5人
駆動方式:4WD
ミッション:4AT
サスペンション形式:(F・R)ストラット

(中古車相場とタマ数)
※2021年1月現在
流通なし

「ワゴンの定番はスバル」の定着に専念し、成功した2代目

スバル 2代目BG系 レガシィ ツーリングワゴン /Photo by Grant.C

2代目スバル レガシィは、ステーションワゴンとしては初代に引き続く大成功を収め、「ワゴンはやっぱりスバルが最高!」という評価を確固たるものにした一方で、セダンやグランドワゴンの販売戦略に課題を残しました。

筆者個人としては、「B4」とつかなくともスマートな2代目のセダンRSが「地味でも相当な実力を秘めた、羊の皮をかぶった狼的なスポーツセダン」として好きでしたが、スバルとしてはまずワゴンを2代続けてヒットさせ、定番化する事に重点を置いたのかもしれません。

おかげで後のレヴォーグに至ってもスバルのステーションワゴンは定番中の定番となり、1990年代の名車として語られるのは間違いなくワゴンの方ですが、2代目のセダンも「隠れ名車」としてイチオシです。

 

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