皆さんはどういう基準でどのような効果を狙ってタイヤを変えていますか?タイヤと一口に言ってもいろいろな部位があり、そこが変わると何が変わるのか?主に一般的な乗用車用ラジアルタイヤの例で、簡単にご紹介します。

掲載日:2017/07/20

Photo by  EveryCarListed P

 

 

タイヤが無ければ車はほとんど動けない!

 

Photo by Lee Haywood

 

もしもタイヤで転がすことができなかったら、軽くとも数百kg以上ある車を動かすのは容易なことではありません。

そんな重要なタイヤとは、人間の体で言えばどの部分でしょうか?

靴でしょうか、足でしょうか?

靴が無くとも素足で立って動けますから、タイヤに当たるのは足の裏や足の指と言えます。

人間は、四つん這いにでもならない限り2本の足の裏という狭い面積で体重を支えており、タイヤが「ハガキ1枚分」と言われる狭い面積で接地しているのと同じなのです。

そして足の指で蹴り出す、歩く、走るのと同様、タイヤの構造や溝のパターンも車が路面に留まり、走らせるのに大きな役割を果たしているのです。

 

タイヤによって異なるトレッドパターン、どういう意味がある?

 

Photo by Alex

 

レース用の特殊なタイヤの一部を除き、トレッド面(接地面)には無数のパターンを持つ溝が刻まれています。

太い溝は「グルーブ」、細い溝は「サイプ」と呼ばれますが、この2種類の溝の組み合わせにはちゃんと理由があるのです。

 

排水性で大きな力を発揮するグルーブ(太溝)

 

Photo by Dean Hochman

 

グルーブは水たまりの中にタイヤが乗り入れる時、このグルーブの中に水を導き入れ、あるいはかき出し、トレッド面を接地させる時の排水性が一番大きな役割です。

もしこのグルーブが無ければ、あるいは排水性が極端に少なければ、タイヤは水面の上に浮いて滑走する「ハイドロプレーニング現象」を起こし、ブレーキが効かなくなったりスピンしたりしてしまいます。

「タイヤの残り溝が少なくなったら交換」するのはそのためで、タイヤが摩耗し、グルーブの深さが残り少なくなったら「スリップサイン」が露出するようになっているので、交換の目安を知ることができるのです。

 

タイヤの硬さやエッジ効果を用途別に調整するサイプ(細溝)

 

Photo by XoMEoX

 

トレッド面でグルーブに囲まれた「ブロック」の硬さをコントロールしたり、路面に爪を立てるエッジ効果で路面とのグリップ力(摩擦力)を高めるのがサイプです。

舗装路や悪路に限らず高速走行を行う際には、トレッド面のヨレ(歪み)が操作性のレスポンスやグリップ力、そして抵抗増加による発熱でタイヤゴムが必要以上に柔らかくなることを防ぐため、サイプは少なくなります。

 

サイプは吸水ゴムとともに高い吸水性も狙う

 

Photo by Andy

 

サイプには路面の水を取り込む吸水性も求められます。

特にスタッドレスタイヤでは、アイスバーンを踏みつけた際に溶ける氷の水を吸収する重要な役割を吸水ゴムと共に担っているのです。

氷は凍っていればそれほど滑りませんが、氷上の水の膜は極端に滑るため、吸水によりそれを避ける効果があります。

そして水を吸われむき出しになった氷へのある程度のエッジ効果も期待できるので、スタッドレスタイヤでは多くのサイプを持つのが一般的です。

 

パターンや構造、形状により異なるロードノイズ

 

Photo by PRIOR DESIGN

 

排気音の静かな、あるいはエンジンの防音・防振対策のしっかりした車種では、交換したタイヤによってそれが転がる時に生じる「ロードノイズ」の変化がわかりやすくなります。

悪路走行用やスポーツ走行用に構造が強化されたり、グリップ力を重視したコンパウンド(タイヤゴムの成分)を使っている場合には、ゴロゴロしたロードノイズは非常に大きい傾向に。

逆にグルーブやサイプのパターン、構造で調整してロードノイズを低減したタイヤも高級車を中心に多く、トレッド面の空力効果でタイヤの風切り音低減を売りとしたものも商品化されています。

加えて、タイヤ横のメーカー名や製品名、サイズが刻印された「ラベリング面」にフィンと呼ばれる突起を設け、空気抵抗や風切り音を低減した「フィンタイヤ」も開発されており、近々市販化されるのではないでしょうか。

今やタイヤの「パターン」とはトレッド面に限らないのです。

 

インチアップによるタイヤ幅や扁平率変更による変化

 

Photo by Bill Abbott

 

どうせタイヤ交換するならとインチアップし、太くて低扁平なタイヤに履き替えるケースもありますが、いずれもサスペンションセッティングやアライメント調整を伴わない場合、乗り心地や燃費の悪化を招きます。

また、接地面の増大はグリップ力だけでなく抵抗も増すので、車種によってはパワーダウンしたかのように感じるかもしれません。

なぜなら、純正同等タイヤの接地面増大程度ならブレーキング時の制動力アップは期待できますが、純正タイヤに合わせて最適化されたサスペンションはそのバランスを崩してしまうのです。

そしてタイヤの角「ショルダー部」が固く締まった低扁平タイヤでは、ちょっとした路面の凹凸でもハンドルを取られやすくなるので、ドライバーの負担や同乗者の快適性にも大きな影響が出るでしょう。

 

 

公道で軽快に走りたい時は、高扁平で幅の狭いタイヤが楽しい

 

 

出典:http://tyre.dunlop.co.jp/tyre/lineup/other/mini/

 

公道の速度域でキビキビした走りを快適に楽しむなら、純正とあまり変わらない幅で抵抗の少ないタイヤが適しています。

高性能スポーツタイヤの下にラインナップされている、いわゆる「セカンドグレードタイヤ」はそういった意味で非常に意義が高く、ローパワー車でのレースから日常使用まで楽しめる範囲が非常に広いタイヤとして公道メインの人にはオススメです。

 

チューニングの場合は、タイヤごとにセッティングやドライビングを決める

 

Photo by www.twin-loc.fr

 

本格的なスポーツ走行のためのチューニングを行う場合は、まず使うタイヤを決めた上でサスペンションや各種パーツの選別、ボディ補強などの検討を行った方が良いでしょう。

タイヤの変更だけでも変化が起きるので、タイヤに合わせたセットアップを行い、テスト走行を重ねた上で微調整を繰り返せればベストです。

タイヤメーカーやタイヤを変えた結果、セッティングだけでなくドライビングまで大胆に変える必要があったり、たまたま変えたタイヤがドライバー好みでタイムが凄まじく縮むこともあります。

それだけタイヤが走りに与える影響は重要だということです。

 

まとめ

 

どんなチューニングをしても、どんなドレスアップをしても、あるいはどれだけ快適性に優れたり、走行性能の高い車を買ったとしても、タイヤを変えるだけでそれがガラリと変わってしまう、そんな重要なパーツがタイヤです。

今回はレース用や競技用、オフロード用など一般的では無いタイヤについてはあまり触れませんでしたが、そうした特殊なタイヤはよりシビアな変化を起こします。

現在の車は新車装着タイヤで最もバランスが取れるよう、メーカーによって考え抜かれている車がほとんどなので、カスタムする事でそこから自分の得たいプラスアルファはどういう効果なのか、最初によく考えるのが大事です。