世界における日本車といえば、円安ドル高時代に「よく走り、そこそこカッコ良くて安い車」として売りさばかれ、大いに名を挙げて今に至るというイメージですが、どっこいコスパフォーマンスだけでなく技術的な評価も高く、特に経済性に優れて故障も少ない日本製エンジンを採用、日本に輸入された車もありました。今回は、その中の一部を紹介します。
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本家も乗り出す軽セブン、ケータハムセブン130/160/165
ロータスに始まり、後にケータハムが製造権を得て今に至るスポーツカー「セブン」ですが、通称「ニアセブン」とも呼ばれる近似種が世界中で生産されており、日本でも鈴商 スパッセや光岡 ゼロワンあたりが有名どころです。
それらの中にはちょっとトレッドをツメて、スズキあたりの軽自動車用エンジンを積めば、日本でも軽自動車版セブンが売れるじゃない!と、昔からフレイザーFC4というニアセブンが存在したり、はたまた日本国内でも個人でニアセブンを作ってしまう人までが、存在します。
ならば(ロータスが”元祖”として)、本家ケータハムがニアじゃない本物の軽セブンを作ってもおかしくないじゃないか!というわけで、2014年に発売されたのがケータハム セブン160で、スズキのK6Aターボエンジンとエブリイのリアアクスルなどを使って、キチンと軽自動車登録もされました。
しかし、その頃にはもうK6AはR06Aに代替わりしており、旧式扱い。
搭載車がジムニーくらいしかなくなっていたため先は見えており、そのジムニーすらモデルチェンジでR06Aターボに換装されたため、現在ケータハムJAPANの公式HPを見ても在庫販売のみとなっています。
日本仕様は当初64馬力でセブン130を名乗りましたが、考えてみると自工会(日本自動車工業会)の会員企業ではないケータハムにとっては64馬力規制など知ったことではなく、自主規制がなければ80馬力くらい楽勝!と、すぐに80馬力のセブン160が日本でも発売され、海外仕様のセブン165と肩を並べました。
トヨタエンジン車でもっともスポーティ?ロータス エリーゼ/エキシージ/エヴォーラ
イギリスのロータスが開発した軽量オープンスポーツ「エリーゼ」およびクーペ版「エキシージ」は当初、同じイギリスのローバーから供給されたKシリーズエンジンを搭載していましたが、BMWやインドのタタなどに有名ブランドだけちぎられ、打ち捨てられたローバーが破綻してしまうと、トヨタからのエンジン供給に切り替えます。
そして、当初供給を受けていたのは1.8リッター自然吸気の1ZZ-FEおよびそのスポーツ版2ZZ-GEで、エリーゼSCやエキシージSといったハイパフォーマンスバージョンはイートン製ベースのスーパーチャージャーを組み込まれ、エキシージSなど全日本ジムカーナでも「操縦が難しいもののキマれば速いマシン」として、高価ながら主力マシンの1台になっています。
その後、トヨタでも比較的短命だった1ZZ-FEや2ZZ-GEの供給が終わると、1ZZ後継は1.6リッターの1R-FAE、エキシージ用に2ZZ後継で3.5リッターV6の2GR-FEスーパーチャージャー版を搭載。
2+2クーペのエヴォーラにも2GR-FEの自然吸気版が搭載されたほか、スーパーチャージャー版のエヴォーラSまで存在する始末です。
しかしいずれも、2021年での生産終了が決まっており、トヨタエンジンのロータスは、一旦歴史を終える事になりそうです。
「いすゞエラン」とも呼ばれたが走りは秀逸なFFスポーツ、2代目ロータス エラン
1990年に発売されたロータスの2代目エランは、ライトウェイトオープンスポーツの代名詞的存在で、ユーノス ロードスターにも大きな影響を与えたFRスポーツの初代とは異なり、FFスポーツというだけで世間を驚かせます(当時FFスポーツなんてありえない!と心ない声が多数…)。
しかしもっと驚いたのは搭載エンジンがいすゞの1.6リッターエンジン4XE1だった事で、2代目後期/3代目ジェミニ用スポーツエンジンとしてソコソコ名を馳せており、3代目ジェミニ イルムシャーR用のターボエンジン(エランSEに搭載)など、初代シビックタイプRの登場まで、テンロク最強を誇ったほどですが、何しろロータスにいすゞです。
輸入車ファンは「あのロータスにいすゞが…」と絶句し、やはり「いすゞエラン」など心ない声が多数上がりました(「GT roman」などエンスー漫画で有名な西風氏の作品でもさんざんネタにされましたが、後に大掛かりなフォロー作品も出ています)。
が、当のいすゞは当時同じGMグループのよしみでロータスとヨロシクできたのを最大限に活かし、「ハンドリングbyロータス」シリーズをバンバン出し、ついにはロータスのF1マシンに腕試しで作ったいすゞ製F1エンジンを載せて走らせてもらうなど、かなりマブダチな関係だったようです。
なお、走りの方はビッグホーンですらハンドリング・バイしちゃうロータスなだけあって抜け目はなく、当時のFFスポーツとしてはというより、見た目のミッドシップっぽさに恥じない絶妙なハンドリングだったと言われています。
しかし市場の評価はやはりFFという事で今ひとつだったらしく、後に韓国の起亜自動車に製造権が売られ、キア ビガートとして再出発。
日本にも少数が輸入されましたが、既にその頃はいすゞが乗用車生産撤退後だったため、エンジンが韓国製に変わっていたのは残念でした。
大阪とイタリアと英国の合作?!イノチェンティ ミニ
戦後スクーターメーカーをしばらくやった後、イギリスからBMCミニ(旧ミニ)のライセンス生産権を得るなど、イギリス車のイタリア版を製作。
その後1972年にBMCの後身、ブリティッシュ・レイランド傘下に組み込まれたのが、イタリアの自動車メーカー、イノチェンティです。
1974年に発表したイノチェンティ ミニは、ベルトーネがデザインしたボディへ変更したオシャレなミニ派生車で、一時は本家ミニもこのボディにしようかという話もあったのですが、ブレティッシュ・レイランドの経営破綻で頓挫し、イノチェンティはデ・トマソ傘下に収まります。
その後もしばらくは、外観はともかくメカニズム的には旧ミニのままで、エンジンも旧ミニのA型でしたが、「小さい車」、「デ・トマソ」と来れば極東の島国にも名を馳せるメーカーがあり、というわけでデ・トマソが提携したのがダイハツでした。
ダイハツは、この提携で2代目と4代目のシャレードに「シャレード・デ・トマソ」を設定。
現在に至るまでコアな人気を誇っていますが、代わりにデ・トマソはダイハツに、イノチェンティへのエンジン供給を依頼し、ダイハツエンジン版イノチェンティ ミニが1982年に誕生します。
供給されたダイハツエンジンは550cc3気筒EB、ABの輸出仕様で617cc2気筒のAD、660cc3気筒EF、シャレード用の1,000ccクラスCBおよびディーゼルのCLと多彩で、ダイハツエンジン搭載のための再設計も含め、イノチェンティ ミニの信頼性は大きく向上。
クレーム処理のコストが下がる一方で、サービスに対応するための人員が余って仕方なかったという逸話も残っています。
ダイハツは他にも、「ベスパ」スクーターで有名なピアッジオにも軽商用車ハイゼットのライセンス生産権を与え、ピアッジオ ポーターとして独自の進化を遂げるなど、何かとイタリアに縁がありますが、フィアットとの関係が深いスズキに比べると、ややマイナーで知られていないのが惜しいところです。
なお、イノチェンティ ミニは日本にも少数ながら輸入されており、2代目シャレードターボ用(つまり最初のシャレード・デ・トマソと同じ)の1リッターSOHCターボエンジンを積んだ、イノチェンティ ミニ・デ・トマソが、中古車市場へ時々出てきます。
スバルボクサーを積んだスーパーカー、セイカーGT
日本が誇る名機、水平対向4気筒の傑作、スバルEJ20ターボを搭載したスーパーカーがあってもおかしくないというわけで、登場したのがセイカーGTです。
元はニュージーランドのキットカーメーカー、ターンブルエンジニアリングが開発したマシンで、GMやレクサスのV8エンジンを搭載していましたが、その後オランダのセイカースポーツカーズが製造権を得ています(この権利についてはちょっと揉めたようですが)。
そして、どの時期からは不明ですが、4気筒のEJ20や6気筒のEZ30など、スバルの水平対向エンジンも積むようになっており、現在セイカーの公式HPに記載されている「GT」や「スプリント」などのモデルは、いずれも、スバル製2リッター275馬力エンジン(おそらくEJ20ターボ)を積むと紹介されています。
なお、セイカーGTは日本にも輸入されており、YouTubeではサーキット走行の動画も上がっているので、チェックしてみてください。
なんだかんだで三菱とダイムラーは縁がある?スマートフォーツー(2代目)3B21
紆余屈折を経て、メルセデス・ベンツなどを擁するダイムラーグループのマイクロカーブランドとなったスマートですが、2000年代前半にはそのダイムラーと日本の三菱が提携していた時期もあり、初代スマート フォーフォーは、三菱 コルトがベースでした。
さらに初代スマート フォーツーに続く次期スマートの計画初期にも三菱は関わったと言われており、初期案のひとつが後に三菱 i(アイ)へ発展したとの説もありますが、もちろん公式の話ではありません。
しかし提携解消後の2007年に発売された2代目フォーツーには、当時三菱 i専用だった3B20エンジンの排気量を999ccに拡大した三菱3B21が搭載されており、もちろん日本にも輸出され、三菱製エンジンを搭載したスマート フォーツーは「日本製エンジンを搭載した輸入車」としては、割とポピュラーな存在です。
他にも探せば出てくる?日本製エンジンを使った輸入車
他にも冒頭に画像を載せた初代フォード フェスティバのように、3ドアハッチバックはマツダ製なものの、ほかに韓国のキア製でマツダのB3エンジンなどを積んだ5ドアハッチバック「フェスティバ5」や4ドアセダン「フェスティバβ」という例もあります。
さらに、BMWに買収される前、強固な提携関係にあったホンダ傘下になるのも時間の問題と思われていた時期もあるイギリスのローバーでは、ローバー200、400、600シリーズにホンダエンジン搭載車が存在するだけでなく、ホンダ車の姉妹車が存在しました。
他にも探せば出てきそうなので、機会があればまた紹介させてください。