ハンドルの持ち方は実に様々ですが、「どの握り方が正しいのか」となると、ほとんどの人はかつて教習所で教えられていた「時計の10時10分の位置」を思い出すのではないでしょうか。ところが今、その「常識」が変わってきています。最新のハンドルの正しい握り方は、「9時15分」。いったいなぜ、この握り方がベストなのでしょうか。

ハンドルの正しい握り方は?

©️Motorz

かつて教習所では「ハンドルの正しい握り方は時計の10時10分」と教えられていたものの、今では「9時15分」の握り位置がベストとされています。

その理由は「パワーステアリング装備車が当たり前になったこと」や「ギア比のクイック化」、「パドルシフトの普及」です。

パワーステアリングは「ドライバーが少ない力でハンドルを操作できる機構」であり、これとギア比のクイック化による「以前よりも少ない操舵角で車を曲げられるようになったこと」によって、ベストな操舵角が以前のものから大きく変化。

9時15分の位置はハンドルを両手で握ったときに、自然と両脇が締まり、前方に伸ばした両腕を胴体で支えられる位置でもあるため、10時10分の位置よりもも腕が疲れにくいとされています。

さらに9時15分の位置はハンドルを最も大きく切ることができる位置でもあり、俊敏なハンドル操作が可能。ドライビング時の安全性と楽しさを両立する握り方でもあるのです。

そのため現在の教習所では、9時15分の位置でハンドルを握るよう推奨しているところが、以前よりも増えています。

9時15分の位置で握ったときのハンドル操作

出典:写真AC

9時15分の位置でハンドルを握った際は、基本的に180度の操作を心がけましょう。

右にハンドルを切る際は左手を右へ180度切り、右手を反対側へ押し込むように操作します。

ハンドルの持ち替え時も9時15分の位置をキープするようにすれば、どの方向に何度ハンドルを切ったかを把握しやすくなります。

また、人間には物を握ると体が硬直しやすくなるという習性があるので、機敏な操舵を心掛けるのなら、ハンドルを握り締めるのではなく、手のひらで包んむように持ちましょう。

ハンドルに対して手のひらの設置面積を増やすことで体の硬直を防ぎ、タイヤから伝わる路面の情報を掴み、機敏な操作をすることができます。

結局どの位置でハンドルを握るのが良いのか

ハンドルを正しく握ることで、操舵もしやすく、より疲れにくい運転が可能となります。

とは言え、ハンドルをどの位置で握るのが良いかということについては、明確な正解はなく、個々人の握りやすい位置で握ることがベストです。

ただ、「絶対にやってはいけない握り方」はあり、それは「片手でハンドルを握ること」や「手をハンドルの内側に掛ける握り方」。ハンドルを片手で握る場合は、腕は時計の12時の位置にあることが多く、左腕はセンターコンソールのボックスの上か、アームレスト、ドアの窓枠に載せがちです。

この握り方でハンドルを握った場合は、体も斜めになっていることが多く、路面の凹凸や段差などで車が揺れた際に、車体をキチンとコントロールできないばかりか、咄嗟の操舵もできません。

また、この握り方で「手のひらを使ってハンドルを回す」人も居ますが、当然ながら非常に危険な行為です。

この持ち方は1980年代にパワーステアリングが普及してから広まった握り方ですが、当時とは異なり、今のパワーステアリングはそこまでハンドルを軽く回せません。

今のパワーステアリングはあくまで、操舵を「軽くアシストする」という仕様のものが多く、直進や緩いコーナーなどではある程度の操作が可能ですが、微妙な操舵や緊急事態の回避は、非常に難しくなります。

また、「手をハンドルの内側に掛ける握り方」も同じく危険で、ハンドルをスムーズに回せず、微妙な操舵が難しいばかりか、事故でエアバッグが膨らんだ際に手を離せず、骨折する可能性を高めることになります。

出典:http://www.gran-turismo.com/

もしグランツーリスモなどのドライビングシミュレーターでハンドルコントローラーを使用している方がいれば、試しに40km~60kmほどでコースを走り、片手、または内掛けで操舵してみてください。

おそらく微妙な操舵ができず、意のままに車を操ることはできないはずです。

まとめ

安全 運転

出典元:https://www.photo-ac.com/profile/1190445

筆者自身、ずっと10時10分の握り方が基本だと思っていましたが、9時15分の位置で構えれば、確かに脇が締まり、ハンドルを大きく操作することができます。

一方で、「どの握り方が正解か?」という問いに対しては、「9時15分の位置が良いが、人それぞれの握りやすい位置が良い」という結論が妥当です。

肩の力を抜き、ハンドルを握り締めずに手のひら全体で包むようにして、機敏な操舵ができるようにしていれば、緊急回避が必要な場面でも的確な操舵が可能となります。

間違っても、片手や内掛けでハンドルを握らないでください。