初代、2代目とユーザーから好評を得たマツダ ファミリア。2代目ではロータリーエンジンを搭載、標準車と上級版ファミリアプレスト、さらにサバンナのレシプロ版グランドファミリアまでラインナップを拡充しますが、カペラやサバンナの登場で今いちど大衆車としての基本に立ち返り、オイルショックでロータリーエンジン車が厳しい時代のレシプロ量販車としてマツダを支えたのが3代目ファミリア(ファミリアプレスト)でした。

3代目ファミリアプレスト・1300クーペ / 出典:https://gazoo.com/car/newcar/vehicle_info/Pages/detail.aspx?MAKER_CD=C&CARTYPE_CD=A12&GENERATION=-1&CARNAME=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%9F%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%88
上級モデル、ファミリアプレストとして3代目にモデルチェンジ

3代目ファミリアプレスト・4ドアセダン / Photo by FotoSleuth
1967年に2代目ファミリアが発売された当時、マツダの乗用車ラインナップは高級車のルーチェと、大衆車のファミリアという2本立てでした。
しかし1970年以降、ファミリアとルーチェの中間にカペラ(1970年)、カペラとファミリアの中間にサバンナ / グランドファミリア(1971年)、そしてファミリア自身も上級グレードにやや排気量の大きなエンジンを搭載したファミリアプレスト(1970年)に改名されます。
一旦整理すると、1972年頃のマツダ乗用車ラインナップは以下のようになりました。
・ファミリアプレスト(1,000~1,300cc / 10Aロータリー 2 / 4ドアセダン、2ドアクーペ、3ドアバン)
・グランドファミリア(1,300~1,500cc 4ドアセダン、2ドアクーペ、5ドアバン)
・サバンナ(10Aロータリー 4ドアセダン、2ドアクーペ、5ドアバン / ワゴン)
・カペラ(1,500~1,600cc / 12Aロータリー 4ドアセダン、2ドアクーペ)
・ルーチェ(12Aロータリー 4ドアセダン、2ドアハードトップ)
この中でグランドファミリアは当初3代目ファミリアとなるはずでしたが、ファミリアプレストの販売好調を受けモデルチェンジ(実質ビッグマイナーチェンジ)の上で継続販売が決まり、サバンナのレシプロエンジン版となることが決定します。
そして3代目ファミリアは”ファミリアプレスト”名で1973年9月に発売。
ロータリーは搭載せず1,000~1,300ccのレシプロエンジンのみで、商用のライトバンとトラックは2代目が継続生産・販売されることになりました。
やや大きくなり、厳しい排ガス規制の時代を生きた3代目

3代目ファミリアプレスト・2ドアセダン / Photo by Riley
モデルチェンジに当たっては基本的に、2代目からプラットフォームやドアなどの基本構造は流用しつつ、フロントオーバーハングや全幅の拡大でボディサイズは一回り大きくなりました。
また、エンジンはサバンナとの差別化という意味合いも含め10Aロータリーを廃止、平凡なシングルキャブレター式の1,000cc / 1,300ccSOHCエンジンのみとなり、大衆車としての原点に回帰。
厳しい排ガス規制のため後にパワーダウンするも、大型化したボディに1,000ccエンジンでは厳しくなったため、希薄燃焼でパワーダウンしたとえはいえ許容範囲に収まった1,300ccに一本化、車名も”ファミリアプレスト1300AP”となります。
(APは”アンチポリューション”の略で、マツダでは公害対策車を意味しました。)
しかし2代目と比べて上級車種に選択肢が増えたことや、ロータリーエンジンの廃止に加えて排ガス対策エンジンでスポーティイメージを失ったこと、そしてオイルショックの下でガソリン供給が厳しくなったことで、新車販売が厳しくなっていきます。
それに加えてマツダ自体に『ロータリーエンジンという燃費の悪い車を売るメーカー』というネガティブイメージがついてしまい、無関係のレシプロエンジン車まで含め、激しい逆風にさらされる事になりました。
さらには、実質的に2代目からのビッグマイナーチェンジ版で新味に乏しい上に、サスペンション(フロント:ストラット / リア:リーフリジッド)やブレーキ(4輪ドラム)も2代目そのままで旧式化が著しく、商品としての魅力に乏しくなっていたこともハンデとなります。
それでも、3代目ファミリアは全幅拡大による居住性向上や内外装の品質向上を武器に『ワイドプレスト』とも呼ばれ、『ロータリーだけではないマツダの量販車』として苦戦しながらも、1977年まで販売を続けられました。
ちなみに4代目がハッチバックまたはライトバンボディとなったため、独立トランクを持つセダンまたはクーペのみというファミリアは、3代目が最初で最後のモデルです。
3代目ファミリア(ファミリアプレスト) 主要スペックと中古車相場

3代目ファミリアプレスト1300AP / 出典:http://www2.mazda.com/ja/stories/history/familia/lineup/
マツダ FA3PS ファミリアプレストクーペ 1973年式
全長×全幅×全高(mm):3,855×1,540×1,350
ホイールベース(mm):2,260
車両重量(kg):800
エンジン仕様・型式:TC 水冷直列4気筒SOHC8バルブ
総排気量(cc):1,272
最高出力:87ps/6,000rpm
最大トルク:11.0kgm/3,500rpm
トランスミッション:4MT
駆動方式:FR
中古車相場:皆無
サバンナのレシプロ版、グランドファミリア

グランドファミリアの輸出版、マツダ 808 / Photo By FotoSleuth
2代目の上級グレードとしてファミリアプレストが登場した直後、サバンナの兄弟車としてデビューしたグランドファミリアも、3代目にモデルチェンジしたファミリアプレストともども販売が続けられる事になります。
サバンナとはフロントマスクなどデザインは異なりますが、市場にとっては実質同じ車と見られ、サバンナのレシプロエンジン版と認識されていたグランドファミリアは、日本ではサバンナのようなパワーに恵まれなかったこともあり、こちらも苦戦。
それは、ファミリアプレストと同じ1,300ccエンジン1機種のみでサバンナと比較してアンダーパワー気味なことが原因でしたが、後にカペラと同じ1,500ccSOHCエンジンが追加され、さらに排ガス対策エンジン化で低下したパワーを補うべく1,600ccに排気量をアップ。
それでも10Aロータリーから排気量アップした12Aロータリーに換装したサバンナほどのパワーはありませんでしたが、レシプロエンジンゆえの低燃費により、ロータリーを好まないユーザー向けに販売が続けられる事に!
最後は、サバンナがサバンナRX-7へとモデルチェンジした後も、3代目カペラに統合(1978年10月)されるまで販売されていました。
グランドファミリア 主要スペックと中古車相場

グランドファミリア1600 / 出典:https://gazoo.com/car/newcar/vehicle_info/Pages/detail.aspx?MAKER_CD=C&CARTYPE_CD=A03&GENERATION=-1&CARNAME=%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%9F%E3%83%AA%E3%82%A2
マツダ SN4A グランドファミリア 1600AP 1973年式
全長×全幅×全高(mm):3,970×1,595×1,375
ホイールベース(mm):2,310
車両重量(kg):875
エンジン仕様・型式:NA 水冷直列4気筒SOHC8バルブ
総排気量(cc):1,586
最高出力:90ps/6,000rpm
最大トルク:13.0kgm/3,500rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FR
中古車相場:皆無
まとめ

3代目ファミリアプレスト・2ドアセダン / 出典:http://cp_www.tripod.com/rotary/pg17.htm
3代目ファミリア(ファミリアプレスト)およびグランドファミリアは、1970年代の厳しい排ガス規制対策時代を生き抜くと同時に、1973年のオイルショックで『燃費が非常に悪いロータリーエンジンは悪』と決まった時代のマツダにとって、極めて重要なモデルでした。
それまでロータリーに注力しすぎたマツダは、同時代のライバルのようにDOHCエンジンや電子制御インジェクションをレシプロエンジンに搭載する対応が遅れてしまいます。
しかし、そんな中でもよほどパワーを好む層を除けばマツダはレシプロエンジン車を少しでも多く販売せざるを得ない状況にあり、そのためにはレシプロ専用量販車のファミリアプレストとグランドファミリアが非常に重要だったのです。
特に1975年以降、技術や生産、総務部門の内勤社員まで広島駅から万歳三唱で全国の販社に出向させる『AM(オールマツダ)作戦』を断行するなど、マツダは第1次経営危機という苦難を極めました。
そんな時代にあって、ギリギリのところで自動車メーカーとして踏みとどまれたのは、ファミリアプレストを少々手直ししながら3代目ファミリアとして継続したことと、グランドファミリアがあったからかもしれません。
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