ホンダ シビックは5代目から3ドアハッチバックに専念し、4ドアセダンは『シビックフェリオ』とサブネームつきになりましたが、2代目まではハッチバック同様のスポーツグレードも設定された家族旅行からサーキットまでこなせるスポーツファミリーセダンでした。しかし2000年9月にデビューし、結果的に最後のシビックフェリオとなった3代目で、そのキャラクターは大きく様変わりします。
高校を卒業して髪型やファッションが大きく変わったような『スマートシビック』
初代と2代目(シビックとしては通算5代目・6代目)のシビックフェリオは良い意味でヤンチャな部分もあり、ファミリーセダンのフリをしてもしっかりリッター100馬力オーバーのDOHC VTECグレードも設定された、『大人しいと甘く見たら痛い目に合う』スポーツセダンでした。
しかし初代シビックタイプR(EK9)の登場で、それまでのスポーツグレードは一気に色あせてしまい、2代目シビックフェリオもレーシングベースモデルが廃止されるなど、スパルタンな一面はすっかり影を潜めてしまいます。
そして迎えた2000年9月のモデルチェンジで歴代最後の通称名『スマートシビック』として登場した3代目シビックフェリオは、5ドアのみとなったハッチバック版(後に3ドアのタイプRを輸入)ともども、大きく印象を変えました。
全長・全幅は先代とほぼ変わらないものの、50mm高くなったルーフに合わせて緩くなった前後ピラーの傾斜によって大幅にキャビンは拡大。
側面衝突安全性能向上のためか室内幅こそ25mm狭くなったものの、室内長は60mm、室内高も30mm広くなっています。
そして、ややボリュームを増した前後方向のデザインと合わせ、『市民の(シビック)』から『大人の市民の』車になった、という印象です。
また、DOHCエンジンは廃止されて全車SOHCエンジンの1.7リッターまたは1.5リッターとパワーユニットがおとなしくなった事や、FF車ではフラットな床面(ただし5ドア車のようにインパネシフトではないので前後ウォークスルーは無し)も、その印象を強めます。
もはや『スーパー』『ワンダー』『グランド』『スポーツ』『ミラクル』と躍動感あふれる通称を名付けられたシビックの役割は終わり、最後の通称が『スマート(賢い)』だったのは、シビックを作ってきたホンダの心境がいかに変わったかをよく表していました。
シビック初の、そしてホンダ初のハイブリッド4ドアセダンも登場
3代目シビックフェリオの『賢さ』はそれのみにとどまらず、2001年9月には初代『シビックハイブリッド』(ES9)が発売されます。
ホンダ初のハイブリッドカー、初代『インサイト』(1999年発売)は初代トヨタ プリウスを越える低燃費を記録したものの、軽量アルミボディでバッテリーに占領されたラゲッジの実用性もほぼ皆無な3ドアハッチバック『燃費スペシャル』クーペでした。
しかし、スポーツカーとして活躍の場があるならともかく、いくら燃費で勝っても実用性皆無では意味が無いとは当時からよく言われていたのでホンダもよくよく考えたようで、当時のハイブリッドシステムIMAを搭載して実用性を持たせられる国内向けホンダ車はシビックのみ。
しかもプリウスへの対抗となると後席を使用でき、ラゲッジスペースもマトモな使い勝手を持たせる必要があります。
そこで、シビックフェリオをベースに初代インサイトより小型化したニッケル水素バッテリーとPCU(パワーコントロールユニット)をまとめたIPU(インテリジェントパワーユニット)を後席裏に配置し、どうにか実用的なトランク容積を確保しました。
とはいえ、こうした苦心作の割に通常のシビックフェリオと外観上の相違点は少なく、『新世代のパワーユニットを積んだ車らしいが新鮮味に欠ける』という問題は、次代の(ハッチバックがタイプRユーロ以外消滅したためフェリオの名が消えた)シビックまで引きずる事になります。
主なスペックと中古車相場
ホンダ ES3 シビックフェリオ RS 2000年式
全長×全幅×全高(mm):4,435×1,695×1,440
ホイールベース(mm):2,620
車両重量(kg):1,110
エンジン仕様・型式:D17A 水冷直列4気筒SOHC16バルブ VTEC
総排気量(cc):1,668
最高出力:96kw(130ps)/6,300rpm
最大トルク:155N・m(15.8kgm)/4,800rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古車相場:10万~65.8万円(シビックハイブリッドを含む)
まとめ
ガラリと印象を変えた『スマートシビック』版3代目シビックフェリオでしたが、初代シビックハイブリッドともども賢くなった結果、無口になって存在感が希薄になってしまった感が強いかもしれません。
ショートワゴン的な性格の強かった5ドアハッチバックに当初はスポーツグレードが無く、一部グレードを除いて4輪ディスクブレーキや5速MTを持ち、エアロ仕様の『RS』すら設定されていたフェリオの方がスポーティだったのですが、それにしても地味です。
ただし、新車販売当時の人気度から中古車価格も安かったため、価格で選んだつもりのユーザーが何の期待もせずにステアリングを握ったところ、思いがけずよい走りをするので驚いたというエピソードが伝わっているあたり、シビックらしさはまだ健在でした。
この時期のホンダは既に、『タイプR』が設定された車種ではそれ以外のグレードで商品力の高さをアピールしにくい病にかかっており、3代目シビックフェリオも乗ればわかるところまでユーザーを引っ張っていけない弱さで、だいぶ損をした1台かもしれません。
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