初代CR-Vを作る前のホンダはSUVを作っていませんでしたが、いすゞとの相互OEMが始まったのを契機にSUVの販売に乗り出し、販売台数はともかくラインナップは充実していました。それに加えて、提携していたイギリスのローバーからランドローバー ディスカバリーのOEM供給を受けて販売していたのが、初代クロスロードです。

 

初代ホンダ クロスロード / 出典:http://www.en.japanclassic.ru/booklets/115-honda-crossroad-1993-lj.html

 

RVブームの中、OEM供給を受けラインナップを充実させたホンダ

 

初代ホンダ クロスロード / Photo by Riley

 

後にミニバンとSUV、軽自動車が販売の大半を占めるようになるホンダですが、1980年代から1990年台前半にかけてはまだまだ若い自動車メーカーとしての拡充期にあり、車種ラインナップも現在とはかなり異なりました。

初代シビック(1972年発売)の大ヒットでようやく4輪車メーカーとしてのし上がるチャンスを得たホンダは1974年以降、シビックに社運をかけて生産を集中。

一時はシビックとTN(軽トラ)しか作っていない時期があったほどです。

しかしその後、初代アコード(1976年発売)をはじめとして車種ラインナップの拡充をはかりますが、他社のようにクロカン4WDや1BOX車まで作っている余裕は無く、1980年代から盛んになったRV(レクリエーショナル・ビークル)のブームでは完全に蚊帳の外でした。

そんなクロカン4WD車については1990年代に入ってようやく、いすゞへ『ドマーニ(いすゞ ジェミニ)』『アコード(同アスカ)』を供給する代わりにいすゞから、ビッグホーン/ロデオ/ミュー/ミューウィザードの供給を受ける相互OEM関係となって、ホンダブランドRVの販売を開始。

それまでもチェロキーなど『ジープ』ブランドのRVは販売していましたが、ホンダブランドとなればメーカー名も車名も変え、エンブレムも独自のものを装着できます。

他にも当時のホンダはイギリスのローバーグループと提携しており、買収も間近と言われるほど深い関係にあったことから、同グループのランドローバー ディスカバリーもOEM供給を受け、1993年11月に初代クロスロードを発売しました。

 

OEMとはいえホンダブランド唯一のV8エンジン搭載車

 

初代ホンダ クロスロード / 出典:https://www.favcars.com/photos-honda-crossroad-lj-1993-98-14731-800×600.htm

 

初代クロスロードそのものはエンブレム類を変えた程度でOEM元のランドローバー ディスカバリーそのままであり、3.9リッターV8 OHVエンジンを搭載したフルタイム4WD車でした。

それは高級RV ランドローバー レンジローバーの普及版というべきモデルで優れた悪路走破性や快適性などは受け継がれており、ボディサイズこそホライゾン(いすゞ ビッグホーンのOEM)より一回り小さかったものの、車格は1クラス上です。

しかしOEMとはいえ、現在までホンダの市販4輪車史上初のV8エンジン搭載車であり、エンジンのダウンサイジング化が進んでいる現状を考えると、史上唯一になるかもしれません。

スマートな見かけから軟派なクロスオーバーSUV的な雰囲気を感じますが、実際にはレンジローバー譲りの屈強なシャシーに別体ボディが乗せられ、センターデフロック付きフルタイム4WDシステムは2段副変速機付きで、ローにした時のギア比はかなりのローギアード。

フロントのアプローチアングル、リアのデパーチャアングル(いずれもタイヤとバンパーを結ぶ線と地面の角度)も大きいため、ロー選択時のクロール走行ではかなり険しい悪路も突破できる、トヨタ ランドクルーザーや日産 サファリにもヒケを取らない実力派でした。

なお、当初は3ドア2列シート5人乗り仕様と5ドア3列シート7人乗り仕様が販売されていましたが、1994年7月にマイナーチェンジでフェイスリフトを受け、本革シートなど装備を充実させた『V8 i ES』グレードが追加されると、3ドアモデルは廃止されました。

 

主なスペックと中古車相場

 

初代ホンダ クロスロード / © TOYOTA MOTOR CORPORATION.All Rights Reserved.

 

ホンダ LJ クロスロード V8 i 1993年式

全長×全幅×全高(mm):4,535×1,800×1,950

ホイールベース(mm):2,540

車両重量(kg):1,970

エンジン仕様・型式:水冷V型8気筒OHV8バルブ

総排気量(cc):3,947

最高出力:132kw(180ps)/4,750rpm

最大トルク:312N・m(31.8gm)/3,100rpm

トランスミッション:4AT

駆動方式:フルタイム4WD

中古車相場:皆無

 

まとめ

 

初代ホンダ クロスロード / 出典:http://www.en.japanclassic.ru/booklets/115-honda-crossroad-1993-lj.html

 

ホンダ最高級のV8エンジン搭載本格オフローダーだったクロスロードですが、同じOEMでも国産だったいすゞ車のように部品の手配は容易ではなく、他にローバーOEM車があったわけでもありません。

従来のホンダ車とも他のOEM車とも異なりすぎたゆえ、販売店(ホンダベルノ店)としてもいささか特殊すぎて、どこのディーラーでもアフターケアができると限らないのが難点だったようです。

さらには初代クロスロード発売わずか2ヶ月後の1994年1月、ローバーグループがBMWによって突然買収されると、ホンダは同グループとの提携をすぐさま解消してしまいました。

そのため、技術提携で開発したローバー車への部品供給などローバーグループとの関係は続きましたが、当時のホンダ関係者にとって初代クロスロードの販売を続けるのは複雑な気分だったのではないでしょうか。

なお、初代クロスロードについて、ホンダ公式HPの『今まで販売したクルマ(中古車カタログ)』にOEM車は掲載していないため、販売期間が不明瞭です。

公式のニュースリリースで1993年11月に発売された事は確認できますが、販売終了時期は諸説あって要領を得ないためホンダに直接問い合わせたところ、「明確な時期は回答できる資料が無いものの、1996年に販売終了しています。」との回答でした。

どうも1996年2月に本家ディスカバリー同様299万円のお買い得グレード『V8i 5ドア』を追加後、短期間で販売を終了したようです。

 

[amazonjs asin=”B07599YLNK” locale=”JP” title=”カーズ/クロスロード MovieNEX ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド Blu-ray”]

Motorzではメールマガジンを配信しています。

編集部の裏話が聞けたり、最新の自動車パーツ情報が入手できるかも!?

配信を希望する方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みください!