日本で本格的なRVブームが起こり始めるのは三菱 パジェロ(初代1982年発売)以降という意見も多いと思いますが、国産RVの草分けとして新型車を登場させたのは、それから数ヶ月早い1981年9月に発売された初代いすゞ ビッグホーンでした。後発のパジェロや日産 テラノに足をすくわれがちでしたが、次第に市場に認められていき、一時期はSUV王国を築いたいすゞの中核車種へ成長します。

 

初代いすゞ・ビッグホーン(海外版トゥルーパー) / 出典:https://www.favcars.com/isuzu-trooper-ii-2-door-1983-86-photos-396685.htm

ライバル同様ピックアップトラック派生のRV、初代ビッグホーン

 

初代いすゞ・ビッグホーン(海外版トゥルーパーII) / Photo by RL GNZLZ

 

RVブームがいつから始まったのか?については議論の余地が残る話題ですが、1980年代前半から続々とRVの新型車が登場したのを見ると、1970年代末には既に『乗用車テイストを持つ本格クロカン4WDを求めるユーザー』をメーカーが意識していたのは明らかです。

そしてフォルテをベースにした三菱 パジェロ(1982年)、ダットサントラックをベースにした日産 テラノ(1984年) 、ハイラックスサーフをベースとしたランドクルーザープラド(1990年)と同様、ピックアップトラックやそのSUV版をベースにRVは作られていきました。

また、いすゞがそれらに先駆けた1981年9月に発売した初代ビッグホーンも、ピックアップトラックのファスターを4WD化したファスター・ロデオをベースにしており、同クラスのクロカン4WDが40系ランドクルーザーくらいしか無い中、いち早く『垢抜けたSUV』としてデビューしたのです。

ただし、各社まだ「RV(レクリエーショナル・ビークル)とは何ぞや?どういう車をユーザーは求めているのか?」を暗中模索している状態で、結果的に初代ビッグホーン(当初社名はロデオ・ビッグホーン)は先行者としてのリスクを一身に負ってしまいました。

そのためレジャー向けオフローダーは1960年代に発売した2WD(FR)のユニキャブ以来、乗用車志向の4WDなど1980年に発売したファスター・ロデオが初めてであり、国産車メーカーの中でも開発余力が非常に乏しかったいすゞは大苦戦。

それでも1991年までの約10年という長いモデルライフを通してRVを学んだいすゞは、デザイン変更やメカニズム強化、ラインナップの充実といった改良を施して商品性を上げていきます。

そしてモデルチェンジの頃には本来持っていたクロカン4WDとしての素性の良さと合わせて評価を上げ、乗用車独自生産撤退後もSUVメーカーとして存続したいすゞを支える中核車種に成長しました。

 

最初は商品性不足で悪戦苦闘、末期はイルムシャーやロータスモデル追加

 

初代いすゞ・ビッグホーン(海外版トゥルーパーII) https://www.flickr.com/photos/juanelo242a/27648727695/

 

初代ビッグホーンの初期はお世辞にもRVとしての商品性が高いとは言えず、根本的には2代目へのモデルチェンジを待たねばならなかったとはいえ、初代が販売されている間にも初期と末期では別な車かと思うほどの段階的改良が施されました。

初期はトラックシャシーに飾り気が少なく、丸目2灯ライトのおかげでイギリスのレンジローバーに似ている点が強調されてしまった無骨なデザインで、本格的な悪路走破性を持つパートタイム4WDに、重い車重に対し貧弱な乗用車用エンジンといかにもチグハグ。

それでもユニキャブの頃と違って4WDメカニズムを組み込んだ事により、レジャー用オフローダーを求めるユーザー層の存在が救いとなりましたが、商品性を上げようといすゞは悪戦苦闘します。

重量級ボディに搭載された非力なディーゼルエンジンをターボ化し、その結果耐久性が不足した駆動系にはトラック用を流用。

貨物登録(4ナンバー)しか無かったラインナップにも乗用登録(5ナンバー)のワゴンモデルを追加し、なぜか2ドアしか無かったロングボディに4ドアを追加しました。

レンジローバーに似過ぎていると言われたフロントマスクも角目2灯ヘッドライトへの変更やフロントグリル、バンパーの変更で近代的RVスタイルへと変わっていきます。

また、モデル末期にはアスカやジェミニと同様、いすゞと提携していたイルムシャー(イルムシャーRなど)やロータス(スペシャルエディション・バイ・ロータス)も追加され、ようやく初期のカクカクした業務用オフローダー的な雰囲気はだいぶ払拭されました。

そして内装の充実などの課題は2代目に持ち越しつつも、2.8リッター直噴ディーゼルインタークーラーターボへの更新でパワフルさを増すと、RVの中ではタフさも兼ね備えた本格派として、ユーザーからの信頼を勝ち取っていったのです。

 

主なスペックと中古車相場

 

初代いすゞ・ビッグホーン / COPYRIGHT© TOYOTA MOTOR CORPORATION.All Rights Reserved.

 

いすゞ UBS52 ビッグホーン 2ドアワゴンロングLS 1984年型

全長×全幅×全高(mm):4,420×1,650×1,800

ホイールベース(mm):2,650

車両重量(kg):1,505

エンジン仕様・型式:C223 水冷直列4気筒ディーゼルOHV8バルブ ターボ

総排気量(cc):2,238

最高出力:64kw(87ps)/4,000rpm

最大トルク:183N・m(18.7kgm)/2,500rpm

トランスミッション:4MT

駆動方式:4WD

中古車相場:62.8万~158万円

 

まとめ

 

初代いすゞ・ビッグホーン(海外版トゥルーパー)  / Photo by Niels de Wit

 

初代ビッグホーンは新型RVとしては真っ先に発売されたにも関わらず、十分な商品性とともにデビューした後発のライバルへ追い越されていき、1980年代半ばにはかなり影が薄い存在となっていました。

しかし、そこから粘り強く巻き返したいすゞの努力は実り、バブル景気の中ではライバルと真っ向勝負を行う体制を整えたのです。

こうしてビッグホーンはミューや5ドア版ミューウィザードを従えたいすゞRV軍団の旗艦となり、日本市場でのいすゞ最後の戦いに挑むために大型・高級化を図るべく、1991年10月に最初で最後のモデルチェンジを迎えるのでした。

 

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