1990年代半ばにオデッセイ、ステップワゴン、CR-Vと立て続けに大ヒットを飛ばし、スポーツ路線からミニバンとクロスオーバーSUV王国となったホンダ。しかし全てが順調な船出となったわけでもなく、HR-Vのように日本では苦戦したモデルもありました。2018年現在であればフィットをベースに作られたヴェゼルと同様に、
コンパクトカーをSUV化したという
スタイリッシュな車でしたが、当時の日本では少々早すぎたかもしれません。
ヴェゼルの祖先HR-V、1990年代に現る!
1990年代半ばは一連の新時代RVシリーズ、『クリエイティブ・ムーバー』(オデッセイ / CR-V / ステップワゴン / S-MX / ラグレイト)でラグレイト以外は大ヒットを飛ばしたホンダですが、矢継ぎ早に今度は『Jムーバー』というコンセプトを打ち出します。
そして東京モーターショー1997で、いずれも当時のホンダ最新鋭コンパクトカー、ロゴ(1996年発売)をベースに作られた4台のJムーバーのうち、J-MW(キャパ)に続く第2弾として1998年9月に発売されたのがJ-WJことHR-Vでした。
現在までホンダが続けている『最新のコンパクトカーをベースとした派生車展開』はフィット以前、ロゴの時代から既に始まっていたのです。
1.5リッターVTECエンジンを搭載し、テールゲートにはスペアタイヤも組み込むなどオフローダー的イメージを与えたデザインだったJ-WJに対し、HR-Vでは1.6リッターエンジン(VTECおよび通常版)で背面スペアタイヤを廃止。
ヘッドライトは、J-WJが球面部分がボンネットへ向け上方食い込みだったのに対し、HR-Vでは下方食い込みになり、スマートなデザインとなりました。
そして当初3ドアのみだったラインナップも1999年7月にはホイールベース&全長を伸ばした5ドアモデルが追加され、世界的にはともかく日本での販売はあまり目立ちませんでしたが、初期のコンパクト・クロスオーバーSUVとしてそのコンセプトは現在のヴェゼルに受け継がれています。
初期に3ドアのみでスタートしたのが惜しかった!
HR-Vで特徴的だったのは、発売当初3ドアモデルのみでスタートした事でした。
確かに当時はRV(レクリエーショナル・ビークル。SUVと呼ばれる前のジャンル名)でも3ドア車は珍しく無く、ある程度大きなRVでもショートボディは3ドア、ましてやコンパクトRVなら今でもジムニー/ジムニーシエラを見ればわかるように当然のスタイルです。
ただ、同時にステーションワゴンブームもあって5ドア車の利便性が見直された事や、従来は1~2人乗りメインだったコンパクトなハッチバック車でも後席を日常利用するファミリーユースが増えたため、時代は急速に3ドア車を求めなくなっていきました。
そのため用途が特殊で需要の限られる本格オフローダーならともかく、量販車として3ドア車しか無かったのは初期のHR-Vにおいて致命的で、発売当初から「3ドアで大丈夫なのか?」という声は多く寄せられています。
ホンダもそこは念頭においていたのか、あるいは予想外だったのか、3ドアから10ヶ月遅れで5ドア版HR-Vを追加。
ロングホイールベース化で後席の居住性を確保し、最低地上高の高いショートワゴン的なモデルへと変貌させます。
さらに3ドア車ゆえ乗降性の問題がクローズアップされていたのか、5ドア追加と同時に最低地上高も15mm下げられました。
とはいえ、ホンダはHR-VをRVやSUVというより『ワゴンでもクーペでも無い新ジャンル、ジェットフィール・ハイライダー』として売り出しており、キーワードは『アーバン・クール』として都会発デザインを強調していたので、正しく補正された形。
いわば5ドア版こそ本命と言えましたが、最初に3ドア車を先行発売してしまったのが結果的にマイナスではなかったか、5ドアの開発を待って同時発売していればその後の販売実績はだいぶ違ったのでは無いかと、当時の雰囲気を知る人間としては少々惜しまれるところです。
主なスペックと中古車相場
ホンダ GH3 HR-V 5ドアJS4 2001年型
全長×全幅×全高(mm):4,095×1,695×1,580
ホイールベース(mm):2,460
車両重量(kg):1,280
エンジン仕様・型式:D16A 水冷直列4気筒SOHC VTEC16バルブ
総排気量(cc):1,590
最高出力:92kw(125ps)/6,700rpm
最大トルク:144N・m(14.7kgm)/4,900rpm
トランスミッション:CVT
駆動方式:4WD
中古車相場:8.8万~59.8万円
まとめ
日本では残念ながらヒット作とまではいかなかったHR-Vですが、それは単にHR-Vの問題だったとは言えません。
他に市販されたJムーバー、トールワゴンのキャパ(J-MW)、2シーターハイブリッドカーの初代インサイト(J-VX)も今ひとつな結果に終わった事から、そもそもベースとなったロゴのポテンシャルが低すぎた事がまず挙げられます(ロゴ自体もヒット作とは言えない)。
さらに、1.3~1.8リッタークラスのコンパクトSUVは軽自動車との競合もあって成功させるのが難しいジャンルでもあり、ホンダ自身がヴェゼル(2013年12月発売)を大ヒットさせるまで、好調のクロスオーバーSUVでも『鬼門』だった分野です。
そのため果敢に挑んだホンダがその経験を活かして再挑戦に成功するには、技術の進歩と有力なベース車開発、市場の熟成など、HR-Vを発売してからさらに15年の歳月が必要でした。
[amazonjs asin=”B00UN7PM1C” locale=”JP” title=”viz マフラーカッター 45 オーロラカラー CR-V CR-X CR-Z HR-V MDX S-MX VIZ-KMC-AX45-06″]
Motorzではメールマガジンを配信しています。
編集部の裏話が聞けたり、最新の自動車パーツ情報が入手できるかも!?
配信を希望する方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みください!