1951年に誕生した日産 パトロールは、警察予備隊向けジープとして入札に参加した同期、三菱 ジープやトヨタ ランドクルーザーと共に代を重ねつつ歩んできましたが、来たるべき『RVブーム』へ向けてイメージを一新。1980年に登場した3代目からは日本国内で『サファリ』を名乗りました。

 

初代日産 サファリ(3代目パトロール)  / © TOYOTA MOTOR CORPORATION.All Rights Reserved.

 

日本国内では『サファリ』へ改名。RVブームへGO!

 

初代日産 サファリ(3代目パトロール)  / Photo by RL GNZLZ

 

日産の本格4WDオフローダー『パトロール』は、1980年6月にモデルチェンジを迎えようとしていましたが、その頃の日本ではあるジャンルの自動車がブームを迎えようとしていました。

その後1990年代半ばまで続く『RVブーム』(RV=レクリエーショナル・ビークル)の本格到来は初代三菱 パジェロのデビューからとなりますが、そもそもオイルショックによる省エネや厳しい排ガス規制をようやく乗り越えようとしていた1970年代末、既にその萌芽はあったのです。

そのため三菱(初代パジェロ)、トヨタ(60系ランドクルーザー)、いすゞ(初代ビッグホーン)は乗用車ライクな内外装の新型車、あるいはモデルチェンジ版をデビューさせようとしていましたが、日産はパトロールのイメージについてかなり深刻に考えていたようでした。

 

初代日産 サファリ(3代目パトロール)  / Photo by Spanish Coches

 

2代目パトロールまでは警察や消防、官公庁などに使ってもらったり、ロクなインフラも無い新興国へ輸出するには良かったのですが、ひたすらシンプルかつタフで頑丈なものの、快適性とは無縁なスパルタンさは乗用車的なRVとは相容れません。

いわば作業服にほっかむりをして地下足袋を履いたお父ちゃんが、ある日突然都会のクラブで踊れと言われるようなもので、モデルチェンジで内外装を刷新した程度では『もしかして無理してる?』と言われてしまいます。

少なくとも日産ではそれに近い事を考えたようで、海外向けは3代目パトロールとして今まで通りタフでスパルタンなイメージを通してもらう一方、日本国内向けは思い切って車名を変えることにしたのです。

そして1980年代~2000年代日産RV艦隊の旗艦、初代サファリが誕生します。

 

やはりタフでスパルタンな舞台が似合ってしまう初代サファリ

 

初代日産 サファリ(3代目パトロール) ダブルキャブ消防ポンプ自動車 / 出典:https://detroit-diesel8.livejournal.com/tag/%D1%81%D0%BF%D0%B5%D1%86%D1%82%D0%B5%D1%85%D0%BD%D0%B8%D0%BA%D0%B0

 

こうして1980年6月に発売された初代サファリ『160型』は、完全新設計されたシャシーに2代目パトロールより近代的な乗用車らしい見栄えがするようデザインされたボディを載せていました。

そしてカラーリングやメッキパーツの仕様、内装の豪華さなどで勝負するも、RVブームで主役となったのはフロントサスペンションがダブルウィッシュボーンで独立懸架、乗り心地やハンドリングも乗用車に近づけたパジェロやビッグホーンなどです。

しかし、誰もが乗用車ライクなオフローダーを求めていたわけではありません。

実際に使うかどうかはともかく『本物』を求めるユーザーに、初代サファリは受け入れられました。

 

名作刑事ドラマシリーズ『西部警察』でも活躍した初代サファリ / 出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%94%A3%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%AA

 

また、ファイヤーパトロールが大活躍した消防でも引き続き需要はあり、日産がスポンサーについた名作刑事ドラマ『西部警察』シリーズの劇中では初代サファリ改造の特殊車両が高圧放水銃を振りかざして大暴れ!

個人ユーザー向けは、同じ4輪リーフリジッドの60系ランドクルーザーに押され気味でしたが、本来あるべき舞台に上った時の初代サファリのたくましさは決してライバルにヒケを取りませんでした。

 

 

このようにRVブームへ対応するために『パトロール』からのイメチェンを図った初代サファリでしたが、どこか軽い、あるいは優等生過ぎるライバルを横目に、しっかり根強いファンを獲得したのです。

なお、1983年に強力な3.3リッターディーゼルターボや5速マニュアルミッション、ハイルーフ仕様などが追加された『161型』へマイナーチェンジ。

余裕ある動力性能や使い勝手の向上により、サファリ党のユーザーを喜ばせました。

 

主なスペックと中古車相場

 

初代日産 サファリ(3代目パトロール)  / 出典:https://www.nissan-global.com/EN/HERITAGE/1980.html

 

日産 KR161 サファリ 4WD ハードトップ標準ルーフAD 1985年式

全長×全幅×全高(mm):4,230×1,690×1,845

ホイールベース(mm):2,350

車両重量(kg):1,880

エンジン仕様・型式:SD33 水冷直列6気筒ディーゼルOHV12バルブ

総排気量(cc):3,246

最高出力:70kw(95ps)/3,600rpm

最大トルク:216N・m(22.0gm)/1,800rpm

トランスミッション:5MT

駆動方式:パートタイム4WD

中古車相場:128万円(160型・161型総合)

 

まとめ

 

スペイン陸軍第29軽歩兵連隊『イザベル・ラ・カトリカ』の初代日産 サファリ(3代目パトロール)。後方は同国の汎用高機動車VAMTAC。 / https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Un_Nissan_Patrol_y_un_Uro_VAMTAC_ambulancia_de_la_BRILAT_(15449322615).jpg

 

当初の目論見とは少々違うベクトルとはいえ、結果的に根強いファンの獲得に成功したサファリは、1987年以降の2代目で『たくましさをカッコ良く見せる方向』でライバル達とはまた違う進化を遂げていきました。

一方で初代サファリは2代目登場後もフェイスリフトを受け、日本国内向けとしては主に消防用で生産が続き、スペインでは21世紀初頭まで生産が続けられるロングライフモデルとなり、同国の陸軍では近年も稼働している姿が撮影されています。

 

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