今や当たり前のように軽自動車を販売している日産ですが、本格的に軽自動車市場へ参入したのは2002年4月発売の初代モコ(スズキ MRワゴンのOEM)から。そして初の軽商用車としてクリッパートラックともども2003年10月に発売したのが、日産初の軽1BOXバン、クリッパーバンでした。後にNV100クリッパーと名を変え、さらに三菱 ミニキャブバンOEMからスズキ エブリイOEMとなって今に至っています。
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日産初の軽1BOX、車名は何とプリンスからの復活!
1990年代半ば以降、深刻な経営危機に陥った日産自動車がルノーとの資本提携で1999年3月にルノー日産連合(ルノー=日産アライアンス)となり、経営再建の一環として軽自動車市場へ本格参入を決めます。
ただし日産は、2002年2月から2年ほど実験的に販売したEV(電気自動車)、ハイパーミニを別にすれば、それまで軽自動車の独自生産を行った経験は無かったため、他社へ供給を求めることとなりました。
そして以下のような経緯で、日産はスズキと三菱が生産する軽自動車を、装備・デザイン面は日産仕様とした上でのOEM供給(他社ブランドの製造と供給)を受けることを決定したのです。
【日産の軽自動車販売とOEM供給、主な出来事】
2001年4月:スズキから軽乗用車のOEM供給に合意。
2002年4月:初めて本格的に販売する軽乗用車、モコ(スズキ MRワゴンOEM)を発売。
2003年8月:三菱から軽商用車(ミニキャブバン / トラック)のOEM供給に合意。
2003年10月:初の軽商用車クリッパーバン / クリッパートラックを発売。
2005年1月:三菱から軽乗用車(eKワゴン / eKスポーツ)のOEM供給に合意。
2005年6月:三菱からOEM供給を受ける初の軽乗用車オッティを発売。
2007年4月:三菱から1BOX軽乗用ワゴン(タウンボックス)のOEM供給に合意。
2007年6月:初の1BOX軽乗用ワゴン、NV100クリッパーリオを発売。
2011年6月:三菱と軽自動車事業の合弁会社NMKVを設立。
2013年8月:スズキから軽商用車(エブリイ / キャリイ)と1BOX軽乗用ワゴン(エブリイワゴン)のOEM供給に合意。三菱の同車種独自生産終了を受けた変更。
2013年12月:軽商用車NV100クリッパー / NT100クリッパー(トラック)、1BOX軽乗用ワゴンNV100クリッパーリオのモデルチェンジでスズキからのOEM供給に変更、今に至る。
2013年6月:NMKVで開発した軽乗用車第1号、デイズを発売。2014年2月に第2号のデイズルークスを発売し、今に至る。
このうち、初の軽商用車となったクリッパーバン / トラックは三菱からのOEM供給合意と同時に車名も発表され、1958年にプリンスが発売。
1966年に日産に吸収合併された後も1981年までの間、3代にわたって販売された商用車、クリッパーの名がつけられました。
その理由としては、以下のように発表されています。
・長年、日産の商用車の車名として、ユーザーに広く親しまれていた名前である。
・軽商用車部門で今後、積極的にプレゼンスを高めていきたいとの思いから、伝統ある名前を採用。
ベースとなった6代目三菱 ミニキャブバンは三菱最後の軽1BOX商用車
その当初、軽乗用車はスズキから、軽商用車は三菱からOEM供給を受けることにした日産ですが、選ばれた6代目三菱 ミニキャブバンはどんな車だったのでしょう?
1998年10月に改正されて現在に至る軽自動車新規格が誕生したのを受け、1999年1月にモデルチェンジしたのが6代目ミニキャブバンでした。
同時にモデルチェンジされたミニキャブトラックともども8年ぶりのフルモデルチェンジで、改められた衝突安全基準に合わせて全長と全幅を拡大。
セミキャブボディとしてフロントにクラッシャブルゾーンを設けています。
ホイールベースはトラック(2,200mm)とは異なり長めの2,390mmとして車室を広く取るように配慮され、後席を畳めば当時クラストップの容積を誇る荷室を確保。
エンジンは燃費や環境性能に優れる3G83型リーンバーン仕様で、4速ATやボタン操作で2WD / 4WDの切り替えが可能なイージーセレクト4WDを採用。
スペック的には平凡ながら、低速からトルクフルかつ高速巡航性能や安定性も得ています。
特筆すべきは、当時の軽1BOXバンのほとんどがテールゲート左右にテールランプを配置したのに対し、ホンダ アクティバンともどもバンパーにテールランプが配置され、左右開口部幅を狭めない大開口部テールゲートを採用していた事です。
つまり、登場時のライバル車の中でも屈指の使い勝手を誇り、最優秀軽1BOXバンを争う存在だったのは間違いありません。
しかし、三菱の販売力もあって販売台数が低迷したためか、モデルチェンジはそれ以降行われずにビッグマイナーチェンジを繰り返しながら継続販売されていたので、日産へのOEM供給はまさに渡りに舟でした。
その後2013年11月に日産へのOEM供給を終了。
2014年2月にはガソリンエンジン版の販売を終了して日産ともどもスズキ エブリイのOEMへ移行しますが、EV版のミニキャブMiEVは今なお三菱オリジナルのまま販売中です。
日産 NV100クリッパーGX / GXターボと三菱 ミニキャブバン ブラボー
ミニキャブバンに設定のあった2シーターモデルが無いことや、2005年1月以降はフロントグリルが日産オリジナルデザインになったことを除き、日産 クリッパーバンは三菱 ミニキャブバンと大きな違いはありませんでした。
それは、2012年1月のマイナーチェンジ時に、日産のビジネスカー車名基準の変更により『NV100クリッパー』へと改名(同時にトラックも『NT100クリッパー』へ改名)してからも、変わっていません。
ただしこのマイナーチェンジ時に、1BOX軽ワゴンの三菱 タウンボックスおよびOEM供給版クリッパーリオが廃止されたのに伴い、新グレードが追加されました。
それが商用1BOXバン登録のままながら、豪華内装とターボエンジンも設定された軽ミニバン仕様、三菱 ミニキャブバン ブラボーおよび日産 NV100クリッパーGX / GXターボです。
ブラボーは4代目ミニキャブ時代の1989年に登場、RVブームに乗った豪快内装や過給器つき(初代ブラボーはスーパーチャージャー、2代目はターボ)の仕様でした。
また、2代目に設定されたブラボーGTなど、直列4気筒DOHC20バルブインタークーラーターボを搭載した軽1BOX最強クラスの豪華エンジンも搭載していましたが、新規格で乗用登録のタウンボックスを後継として、一時消滅していたものです。
そしてエンジンこそ3気筒のSOHCターボとDOHC自然吸気でおとなしめになりましたが、12年ぶりに商用登録でミニキャブの1グレードという扱いながらブラボーが復活。
NV100クリッパーにも『GX』および『GXターボ』として設定されました。
ちなみに、乗用登録のタウンボックス / NV100クリッパーリオはその後スズキからエブリイワゴンをOEM供給されて復活しますが、ミニキャブバン ブラボーとNV100クリッパーGX / GXターボは現在も設定され続けています。
主なスペックと中古車相場
日産 U71V クリッパー バン ハイルーフGL 2003年式
全長×全幅×全高(mm):3,395×1,475×1,890
ホイールベース(mm):2,390
車両重量(kg):890
エンジン仕様・型式:3G83 水冷直列3気筒SOHC12バルブ
総排気量(cc):657
最高出力:35kw(48ps)/6,000rpm
最大トルク:62N・m(6.3kgm)/4,000rpm
トランスミッション:5MT/4AT
駆動方式:FR
中古車相場:3.3万~93万円(クリッパーバン / NV100クリッパーのみ。特装車除く。)
まとめ
日産初の軽商用車であり、三菱にとっては最後の独自開発・生産軽商用車となった初代日産 クリッパー(NV100クリッパー) / 6代目三菱 ミニキャブ。
日産にとっては単なる軽自動車ラインナップの拡充だけでなく、ビジネスカーの拡充で法人販売によい影響を与え、三菱にとってもスズキOEMに切り替わるまで長く軽商用車を生産できたという意味で、両社にとって良い提携となりました。
今ではどちらもスズキOEMモデルになっていますが、三菱独自生産が終わってからまだ4年半ほどなので、以前のモデルもまだしばらくの間は、街のあちこちで走り続けるはずです。
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