かつて三菱との軽自動車合弁会社NMKVを作るまでは、スズキからのOEM供給で軽自動車市場への参入を果たした日産。その第1弾モコが、OEM元のスズキ MRワゴンともども2代目へとモデルチェンジしたのは2006年でした。そして1月にMRワゴンが、2月にモコの2代目が揃ってデビューし、それぞれのメーカーに合わせた微妙な仕様違いという関係はこの代でも続きます。
2代目MRワゴンとは
元になったコンセプトカーがミッドシップのシティコミューターだった名残で、『MRワゴン』と名付けられた軽トールワゴンの2代目は、『ママワゴン』のコンセプトによって、子供を連れた女性の利便性に配慮されたのが大きな特徴で、それは外観にもよく現れており、キリリと引き締まった初代から一転、ヘッドライトはパチリと大きな目のようになって、柔らかい顔つきになりました。
内装は小物入れが豊富になり、大容量の『助手席シートアンダートレー&ボックス』を採用。
後席に乗る子供にも配慮して前後席で温度差を少なくし、前席の乗員にも風が直接当たらないようにする『アッパーベント』(ダッシュボード上部の吹き出し口)を設置。
シフトレバーもコラムシフトからインパネシフトになって、ウォークスルーを維持したまま操作性が改善されました。
そして、デビュー年の12月には、造形が異なった立体的な専用前後バンパーやフロントグリルを装備し、内装をシックな黒でまとめた上で電動格納式リモコンドアミラーなど快適装備や、フォグランプなどを追加したスタイリッシュモデル『Wit』を設定しています。
なお、エンジンは先代から引き続きNA(自然吸気)と60馬力のマイルドターボでしたが、後期で通常版からターボ車を廃止し、モデル末期の2010年5月にはWitからも廃止されてNAのみとなりました。
引き続き日産にもモコとして供給
先代に引き続き日産へOEM供給された2代目モコは、MRワゴンより1ヶ月遅れの2006年2月に発売。
日産のデザインアイデンティティに基づいたフロントグリルをはじめ、ヘッドライトやボンネット、バンパーなどフロントはフェンダーを除きモコ専用のものが与えられ、MRワゴンとの違いがより強調されることとなりました。
他にも内装やボディカラーにモコ専用のものが数多く採用され、ABSもMRワゴンでは後期にようやく全車標準となったものがモコでは最初から標準装備。
さらにはMRワゴンの『助手席シートアンダートレー&ボックス』が、モコでは『すわるとシート開けるとBOX』と名前を変えるなどして、モコとの違いを強調。
バリエーションもMRワゴンの『Wit』に相当するモデルは設定されませんでしたが、代わりに専用カラードフロントグリルなどを装備したオーテック仕様の『エアロスタイル』や、内装をチョコレート系の色でまとめた『ショコラティエセレクション』を設定。
MRワゴンでは廃止されたターボ車がモコではモデルチェンジまで設定されるなど、OEMながら基本的に同じ車という範囲を超えて内外装やメカニズム面でも日産独自色を打ち出し始めたのが、この2代目モコでした。
主なスペックと中古車相場
日産 MG22S モコ G 2006年式
全長×全幅×全高(mm):3,395×1,475×1,610
ホイールベース(mm):2,360
車両重量(kg):850
エンジン仕様・型式:K6A 水冷直列3気筒DOHC12バルブ ICターボ
総排気量(cc):658
最高出力:44kw(60ps)/6,000rpm
最大トルク:83N・m(8.5kgm)/3,000rpm
トランスミッション:4AT
駆動方式:FF
中古車相場:0.1万~92万円(モコ / MRワゴン2代目各型全て)
まとめ
初代モコはフロントグリル違いやスズキのMRワゴンスポーツのようなバリエーションが無いなど、MRワゴンと比べて『脇役のOEM車』という印象がありましたが、実際にフタを開けると日産の販売力でモコの販売台数が上回る結果となりました。
これで日産は自信を得たようで、2代目モコではMRワゴンとは明らかに独自路線を進み、さらにアルトを日産 ピノとして、やはり日産独自仕様での生産を求めるなど、日産がその販売をする車に対して主導権を握りたい気持ちが明らかになっていきます。
結局、日産はオッティ(2代目eK)から三菱との関係を深め、2010年に三菱との軽自動車合弁会社NMKVを設立し、スズキから三菱へと軸足を移していきました。
もしこの時期のスズキがもっと日産に歩み寄っていれば、あるいは三菱ではなくスズキがルノー日産連合入りしていた可能性が・・・などと考えを巡らすと、2代目MRワゴン / モコの違いがより面白く思えてきます。
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