『軽スペシャリティカー』というジャンルはどうしても影が薄くなりがちなのか、大ファンでも無い限り、ついつい忘れられがちになってしまいます。長きにわたり軽自動車シェアNo.1だったスズキでも同社のセルボは他モデルに対してマイナー感が漂いますが、中でも1番レアなのが2代目セルボかもしれません。

 

スズキ初のターボ車、2代目セルボ CT-G  / Photo by JOHN LLOYD

 

初代のコンセプトを受け継ぐ女性向け軽スペシャリティクーペ、2代目セルボ

 

2代目スズキ セルボ / 出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BA%E3%82%AD%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%83%9C

 

チープさを極めつつ47万円という超低価格で実用的な車を作り、軽自動車に軽ボンネットバン革命を起こした初代アルト(1979年)のデビューで、軽自動車は新たなステージに進む事になります。

つまり1~2人乗れれば不満の無いパーソナル コミューターとなり、それまで目指してきた『一家に1台』から『1人に1台』時代の主役を演じますが、多感な若者、あるいは女性向けにはもう少し背伸びした車種としての軽スペシャリティカーの必要性が出てきます。

スズキでは既に初代アルト以前から、軽スポーツクーペのフロンテクーペをベースにサイズアップし、オイルショックや厳しい排ガス規制の影響で省エネ低排出ガスがパワーより優先される時代向けのパ-ソナル コミューターとして初代セルボを販売していました。

そして2代目セルボへのモデルチェンジにあたっては、初代アルトとアルトのベースモデルたるフロンテ(5代目)がベースとなってFF化され、引き続き女性をメインターゲットとする軽スペシャリティクーペとして登場したのです。

しかしエンジンは4ストローク化されたとはいえグロス29馬力(後に31馬力)、車重は500kg代前半なので普通に走る動力性能でしたが、スポーツを名乗るにはもっと強力なエンジンを待たねばならない時代でした。

 

フロンテのクーペ版、そしてスズキ軽自動車初のターボもあり

 

2代目スズキ セルボ / 出典:https://zh.wikipedia.org/wiki/%E9%88%B4%E6%9C%A8Cervo

 

そもそもパーソナル コミューター(個人向けアシグルマ。いわゆるゲタ車)と考えるだけならアルトやフロンテで十分なのですが、『ちょっと違う車に乗りたい』というユーザー層、特に女性を主要ターゲットとするためにフロンテをベースに2ドアクーペとしました。

そのため初代に引き続き、女性向けなのにクーペ?と現在(2018年9月)の視点からは奇妙に感じますが当時としてはそれが当たり前で、アメリカから入ってきた『セクレタリーカー』つまり女性向け通勤車とはクーペであるという文化の影響があったかもしれません。

そして2代目セルボも軽スペシャリティクーペとしてリアウィンドウを寝かせてガラスハッチ化、FF車でありながらテールゲートは持たず、車高はライバル車に比べ1,300mm以下とガッチリ低く『実用性よりデザイン重視』の2+2シーター車。

フロンテの前半分に初代セルボと少し似ている後ろ半分をくっつけたようなスタイルでしたが、丸目2灯のアルトやフロンテと異なり角目2灯ヘッドランプ、フロントグリルやバンパーの形状も変えたので、だいぶ雰囲気は変わっています。

さらに女性ユーザーメインと言いつつ1983年6月にはスズキで初のターボ車を設定(CT-G)。

そのため一時期男性ユーザーもターゲットに入れた宣伝が行われましたが、結局最後は再び女性ユーザーメインに。

1980年代前半の軽ターボ車は後の軽スポーツ路線と異なりまだまだ爆発的パワーとはほど遠く、2代目セルボ用のターボもインタークーラーなど無いのにエアインテークをボンネットに配するなど、あくまで『気分』でした。

 

主なスペックと中古車相場

 

2代目スズキ セルボ / © TOYOTA MOTOR CORPORATION.All Rights Reserved.

 

スズキ SS40 セルボ CT-G 1985年式

全長×全幅×全高(mm):3,195×1,395×1,295

ホイールベース(mm):2,150

車両重量(kg):560

エンジン仕様・型式:F5A 水冷直列3気筒SOHC6バルブ ターボ

総排気量(cc):543

最高出力:25kw(40ps)/6,000rpm

最大トルク:46N・m(5.5kgm)/4,000rpm

トランスミッション:5MT

駆動方式:FF

中古車相場:43万~59万円

 

まとめ

 

2代目スズキ セルボ / 出典:https://zh.wikipedia.org/wiki/%E9%88%B4%E6%9C%A8Cervo

 

結局、2代目セルボはクーペながら動力性能は期待されたほどではなく、外からはガラスハッチのみでしかアクセスできないラゲッジなど実用性に欠け、狙い通りの人気は得られないまま3代目デビューまで6年も販売されました。

その割に街中で見かける機会も少なかったことから販売実績が思わしくなかったことが伺えますが、それでも2代目セルボのフロントマスクだけは多くの人々が目にすることとなります。

2代目セルボをベースにピックアップトラック化、1983年2月に発売されたマイティボーイはちょっとしたヒット作となり、現在まで語り継がれる名車となったのです。

今や語り継ぐ人も少なく、歴代セルボの中で最も販売期間が短いながら『横丁小町セルボ』と愛された3代目以上にマイナーな存在となった2代目セルボですが、名車マイティボーイのベースとして歴史に名を残しました。

なお、現在では希少性が高い軽スペシャリティクーペゆえか、あるいはマイティボーイの人気にも引っ張られてか、中古車市場でのプレミア度はかなり高くなっています。

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