2017年にトヨタがハイラックス(10代目)を久しぶりに発売しました。ダブルキャブのみの設定で高価ではありますが、冷え切ったピックアップトラック市場の買い替え需要を喚起して新風を吹き込む原動力になると話題に。そんなハイラックスのルーツを探ると、1960年代にトヨタと業務提携する前の日野が開発、後にトヨタ車となってハイラックスの前身となったブリスカに辿り着きます。
打倒『ダットラ』!をライバル達と目指した日野ブリスカ
トラックといえば、キャビン下にエンジンを搭載したキャブオーバー型が現在主に見かける形式ですが、かつては小型から大型まで乗用車のキャビン後方を荷台にしたようなボンネットトラック、今で言う『ピックアップトラック』が主流でした。
小型トラックも戦前からトヨタやダットサン(日産)が軍民問わず人気で、戦後も民生用として作り続けた両社の1t積みトラックのうち、ダットサントラック、後の通称『ダットラ』のシェアが圧倒的。
というのも、1960年代までの乗用車にはラダーフレームを持たず軽量なモノコック構造をいち早く採用したメーカーもありましたが、まだトラック用ラダーフレームに乗用車ボディを乗せたものも多く、日産などはその典型的な例でした。
しかし、それを逆手に取るようにダットサン210系セダンや初代ブルーバード用を強化したラダーフレームに同系統のエンジンを搭載し、デザインもほぼそのまま流用。
トラックなのに乗用車みたいでカッコ良くて内装も豪華!もちろんフレームは堅牢でエンジンもトルクフルで扱いやすい!
特に320系『ダットラ』はヒット作となった310系ブルーバードのトラック版として大人気となりました。
そしてライバルもそれに対抗すべく、トヨタ ライトスタウト、ダイハツ ハイラインなどを登場させるも及ばなかったのですが、そうしたライバルの1台が、1961年に初代モデルが発売された日野 ブリスカです。
コンテッサのFRトラック版ブリスカ、トヨタ車へ
ブリスカはルノー4CVのライセンス生産(1953-1963年)を経て、1961年の初代コンテッサでオリジナル国産4輪乗用車市場に参入した日野自動車が、同年デビューさせた750kg積み小型トラックでした。
それは初代コンテッサの893ccエンジンを流用しつつ、リアエンジン後輪駆動のRRレイアウトではなく、キャビンから後方に荷台などの架装が容易で積載時のトラクションに優れたフロントエンジン後輪駆動のFR方式を採用したもの。
1列シートのシングルキャブのみならず、2列シートのダブルキャブ、後方までクローズドボディのラゲッジを持つライトバンなどもラインナップされましたが、1965年5月にモデルチェンジして1t積みトラックに格上げ、『ダットラの牙城』に挑みます。
そしてエンジンをコンテッサ1300用に載せ換えて、ブリスカ1300と改名。
シングルキャブのみと割り切って、デザインもコンテッサに合わせるなど320系『ダットラ』に対抗しました。
しかし、1966年10月にトヨタとの業務提携で事実上傘下入りし、同時期に同じ運命をたどったダイハツとは異なって乗用車や小型トラックから完全撤退したため、コンテッサともどもブリスカも短命に終わるかと思いきや、ライトスタウトの販売実績が好ましくないトヨタでは、以後小型トラックを日野に任せ、新型車を開発するまでのつなぎとして、ライトスタウトと並行してブリスカの生産・販売も継続。
トヨタ ブリスカとして再出発させたのです。
結局、新型車がデビューするまで生産が続けられ、1968年3月にライトスタウトともども生産終了。
なお、その新型車が初代ハイラックスであり、つまり現在まで10代続くハイラックスのご先祖こそがブリスカなのでした。。
主なスペックと中古車相場
トヨタ GY10 ブリスカ 1967年式
全長×全幅×全高(mm):4,265×1,640×1,545
ホイールベース(mm):2,520
車両重量(kg):1,035
エンジン仕様・型式:水冷直列4気筒OHV8バルブ
総排気量(cc):1,251
最高出力:46kw(63ps)/5,500rpm(※グロス値)
最大トルク:97N・m(9.9kgm)/3,000rpm(※同上)
トランスミッション:4MT
駆動方式:FR
中古車相場:皆無
まとめ
現在まで残るメジャーな日本の自動車メーカーの中で、独自の乗用車や小型トラックを販売していた歴史がもっとも短く、しかし熱くユニークな車を作っていた日野自動車。
現在でもダカールラリーのカミオン(トラック)部門にレンジャーを毎回出場させるなど、『走りに熱いメーカー』として知られますが、ブリスカもまた、その熱い想いが結実した1台だったと言えます。
だからこそトヨタは自ら開発したライトスタウトより、ブリスカを開発した日野の腕を買ってハイラックスの開発を任せるようになったので、その情熱は決して無駄にはなりませんでした。
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