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元々は警察予備隊用小型トラックとして開発、不採用の後に民需向けに発売された、という経緯はトヨタ・ランドクルーザー同様だった初代パトロールですが、出自が出自だけに『いかにも軍用』という無骨なスタイルだった初代から一転、1960年に発売された2代目60系パトロールはイギリス製ランドローバー風のスタイルへ大きくデザインを変えます。そしてこの型は20年も作られたので、インフラ系や消防組織などの予備車両として比較的近年まで健在でした。

2代目日産 パトロール / © TOYOTA MOTOR CORPORATION.All Rights Reserved.
『元は軍用車両』の無骨さから脱したスマートな2代目パトロール

2代目日産 パトロール / Photo by ilikewaffles11
1960年10月にモデルチェンジされて登場した2代目パトロールは、そもそも警察予備隊(現在の陸上自衛隊)用小型トラックとして開発された経緯から、ジープに似た無骨さのあるデザインから一転。
箱型フロントフェンダー、ちょっとくぼんだように配置された丸目2灯ヘッドライトと、その間のスッキリした横長のフロントグリルから受ける印象は、どことなくイギリス製のオフローダーメーカー、ランドローバーを思わせるものでした。
日産は戦後に高度な乗用車技術を手にするためにイギリスのオースチンと提携。
A40サマーセットやA50ケンブリッジを生産していたので、その時にランドローバーの知見も得たのかも?と邪推してしまいます。
しかし強固なラダーフレームに質実剛健な前後リーフリジッドサス、レバー操作で駆動方式の切り替えが可能なパートタイム4WDシステムなどメカニズム面の多くは初代から踏襲しており、引き続き信頼性の高い民生用4WD車として国内外から好評を得ました。
また、ボディタイプはショート(ホイールベース2,200mm)、ロング(同2,500mm)の2種類に、それぞれソフトトップ、ハードトップ、ワゴン、バンといった多くのバリエーションを持ち、用途に応じた選択を可能にしています。
しかしやはりまだRV(レクリエーショナル・ビークル)やSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)などという言葉も無い時代だったので、個人需要はマニアやどうしても特殊な環境で使いたいという人に限られました。
やはりメインは公的組織や海外向け、代表的なのが消防用『ファイヤーパトロール』

ファイヤーパトロール(2代目日産 パトロール消防車) / © Nissan 2018
個人需要が限られたので、1980年代以降のように普通に街中で見かけるような車では無さそうですが、官公庁や消防組織で使われたこともあって、1970年代から1980年代はじめまではそこそこ見かけました。
しかし、1980年代に入ると快適性を備えたRVブームが到来し、官公庁やインフラ系組織・企業向け特殊用途車も新型に切り替わりますが、2代目パトロールはメカニズムが単純にして堅牢だったためか、予備車のような扱いで2010年代まで長く現役にありました。
そして航空自衛隊の電源車や、インド軍の連絡 / 軽輸送車両など軍用車両としても使われましたが、官公庁や公的組織で使われた2代目パトロールの中で、もっとも著名なのは、消防車仕様の『ファイヤーパトロール』です。
大型消防車ほどではないとはいえ、4リッターの大排気量エンジンのパワーを活かした強力な放水用ポンプが使用可能で、かつ車体サイズは小さく4WDなので、火災現場が狭く険しい場所でも突入し、初期消火には大いに活躍。
ファイヤーパトロールはショートボディがホイールベース2,500mm、ロングボディが同2,800mmで全長4,825mm、全幅1,850mmと標準のパトロールより2回りほど大きくなっていましたが、それでもこれほど小型ハイパワーな消防車はそうそう無かったようです。
それゆえ消防団や企業向けの小型消防車としてはかなり長い現役期間を誇り、画像のファイヤーパトロールも名古屋の高級陶磁器・砥石メーカー『ノリタケカンパニー』で1978年に配備、2005年まで実に27年間も実際に消防車として使われていました。
主なスペックと中古車相場

2代目日産 パトロール / © Nissan 2018
日産 60型 パトロール ショートボディ ソフトトップ バン 1972年式
全長×全幅×全高(mm):3,770×1,715×1,980
ホイールベース(mm):2,200
車両重量(kg):1,580
エンジン仕様・型式:P型 水冷直列6気筒OHV12バルブ
総排気量(cc):3,956
最高出力:96kw(130ps)/3,600rpm
最大トルク:294N・m(30.0kgm)/1,600rpm
トランスミッション:3MT(2段副変速機)
駆動方式:4WD
中古車相場:98万円
まとめ

2代目日産 パトロール1978年型。海外仕様には角目2灯ヘッドライト仕様もあったらしい。/ Photo by Riley
現在の目で見れば、ランドローバー的なイギリス車の雰囲気を漂わせつつ、実用車としての無骨なたくましさを併せ持ち、低回転から大トルクを発生する頼もしい大排気量エンジンを持つオフローダーとして、なかなか魅力的です。
今でも良い出物があれば釣りに使いたいという人もいそうですが、あいにくパトロールは海外で大人気な車で、元々少ない国内販売の中古車はほとんど海外に流出してしまい、今や中古車もほとんど出回っていません。
先祖帰りの『原点回帰』で新型スズキ・ジムニー(4代目)が大人気なのを見ると、現代に2代目パトロールのような車が甦ったら案外人気が出るかもと思うものの、国内ヘビーデューティー4WD市場からとうの昔に撤退した日産にそれを求めるのは、少々難しいかもしれません。
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