1958年発売のスバル360以来、乗用車にせよ商用車にせよリアエンジン リアドライブのRRレイアウトで通してきたスバルの軽自動車ですが、ボンネットバン全盛となるとスペース効率の面で、FF化は何としても必要となります。そして、スバル1000以来FF車を作ってきたとはいえ、直列エンジンを横置きしたスバル初のジアコーサ式FF車、2代目レックスの誕生で、スバル軽自動車は大きく変わる事になりました。
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業界標準のFF車へと歴史的大転換!『広く軽く丈夫に』のための数々の工夫
1972年の初代デビュー以来、当初のスポーティルックから時代の要請に合わせたハイルーフのボンネットバンまで、苦心しながらライバルへ対抗するための変化をしてきたスバルの軽自動車、レックス。
しかし、時代が実用性の高さを求め、そして車両本体価格も安価なら低燃費で維持費も経済的、そして車内は広くオートマチック設定も。
イージードライブで間口も広いという『軽ボンネットバン』の時代が到来すると、いよいよ初代レックスに限界が到来します。
そもそも360cc時代の設計のまま拡幅して550cc時代に対応、オートマが無い代わりに電磁パウダークラッチを使った『オートクラッチ』式2ペダルMT車で対応したと言っても、そのままでは中が急に広くなったり物が載せやすくなるわけでもありません。
新時代の軽自動車は、FRを選択した三菱 ミニカを除けばFF車が標準となっており、メカニズムはフロントに集約されてリアは簡素で中は広々。
レックスもモデルチェンジに当たって360、R-2、初代レックスと続いたRRレイアウトを捨て、FFに大転換したのです。
また、スバル1000(1966年)以来FF車を作り続けてきたスバルなので、フロントエンジン 前輪駆動のメリットはよくよく承知していましたが、そこから当時のレオーネに続く道は全て水平対向エンジンを縦置きした前輪駆動、または4WD。
直列エンジンをデフと直列配置して横置きにしたジアコーサ式FFは初めてだったので、メカニズムは小さく、しかし整備性は悪化させない配慮とキャビンを極限まで広くするパッケージを決めなくてはいけません。
さらに、車内を広くしても乗降しにくければ意味が無いのと、バンモデルでは広い荷室を有効活用するためもあって開口部も大きくする必要があり、ダミーモデルを作ってひとつひとつ確かめていきました。
そして開口部が広くなってもボディ剛性は落とさず、しかも軽く作らなければいけないために、コストが厳しくなるのは承知でボディ全体の44%に軽量高強度の高張力鋼を使用し、ピラー端末部などの結合部も工夫。
錆対策に防錆鋼板の使用とサイドシルの塩ビ系アンダーコートなど、単にFF化しただけではなく、かなり贅沢な作りとなったのです。
ボンネットバンのコンビとスペシャルティカー的なセダンの2本立て。4WDやターボも追加
こうして1981年9月に初のモデルチェンジを迎えて登場した2代目レックス、通称『FFレックス』は、流行に沿った3ドアボンネットバンの『レックスコンビ』と、従来型の5ドアセダン『レックス』が設定されていました。
また、レックスコンビはリアバンパー上からガバッと大きくテールゲートが開き、もちろんリアにエンジンなどなく後席を倒せば広いラゲッジスペースにストレス無くアクセス可能。
ボンネットバンの方程式である『1~2名使用でラゲッジの使い勝手が良い』構造が取り入れられました。
そして、当初は5ドアのみでしたが後に3ドアも追加されたセダンは、テールゲートからしてテールランプやナンバーの上からのみ開き、ガラスハッチよりは広いものの、使い勝手よりはボディ剛性を重視しているように見え、4名乗車時の快適性は高そうです。
こうした作り分けはコストの上昇につながりそうですが、軽スペシャリティカーにセルボを擁したスズキ、リーザのデビューを控えたダイハツとは異なり、1車種であらゆるユーザーの要望に答えなければならないスバルの事情があったのかもしれません。
1982年9月には、アメリカなどで例はあったものの、日本ではおそらく初となる通販専用車『ディノス レックス』が登場。
フジサンケイグループの通販会社としてフジテレビで放映するテレビショッピングや通販カタログ雑誌で展開していたディノスが『あったらいいな、のコレクションです』と、ディノスオリジナルの内外装や各種装備を施したモデルです。
キャッチコピーのひとつである『お招きしましょ。私のセダンへ』のとおり5ドアセダンのみの設定だったようで、主婦層にとって便利そうな車を追求していました。
後の日産 MujiCar1000(無印良品)やヤマハモービルメイツ AMI(チケットぴあ)同様、後が続かなかったところを見ると好評だったとは言い難いようですが、垢抜けないイメージのある当時のスバルとしては珍しいチャレンジです。
しかしスバルらしい硬派路線はもちろん健在で、1983年10月には4WD車(パートタイム4WD)が追加されたほか、同年12月には41馬力を発揮する当時クラス最強レベルのターボエンジンも追加。
また、4WDの追加はスズキやダイハツと同月でしたが、2代目レックスのみは4WDのリアサスペンションにも独立懸架を採用。
FF車のセミトレーリングアームに対して4WDはストラット式と、これまたコストのかかりそうな作りでしたが、まさに『4WDのスバル』の面目躍如。
1984年9月には軽自動車初の4WDターボも発売しますが、スバルの軽自動車用ターボエンジンはこれが最初で最後であり、ある意味貴重なモデルです。
もっとも、4WDにせよターボにせよ追加されたのはボンネットバンのレックスコンビのみというのが時代を感じさせるところで、セダンは内外装がスポーティなものの、それに見合った動力性能を得ることはありませんでした。
主なスペックと中古車相場
スバル KM2 レックス コンビ4WDターボ 1984年式
全長×全幅×全高(mm):3,195×1,395×1,385
ホイールベース(mm):2,255
車両重量(kg):670
エンジン仕様・型式:EK23 水冷直列2気筒SOHC4バルブ ターボ
総排気量(cc):544
最高出力:30kw(41ps)/6,000rpm(※グロス値)
最大トルク:58N・m(5.9kgm)/3,500rpm(※同上)
トランスミッション:5MT
駆動方式:4WD
中古車相場:16.8万~39万円
まとめ
レックスのFF化はひとまず成功と言えて、4WDやターボ車の設定といった『新時代の軽自動車』への対応にもトップメーカーのスズキやダイハツに追従することができました。
唯一難点だったのはトルクコンバーター式オートマチックを設定できなかったことで、シフトレバーを動かすと電磁パウダークラッチが切れるオートクラッチ式2ペダルMTで対応していましたが、この課題は次の3代目レックスに持ち越しとなります。
他にパートタイム4WDや2気筒エンジンも時代を感じさせたものの、フルタイム4WDの軽自動車が登場するのは1987年頃で、ダイハツや三菱もまだ2気筒エンジンの時代だったので、2代目レックスはほぼ時代の最先端を行く軽自動車だったのは間違いありません。
そしてこの2代目レックスの成功が、スバルの歴史上唯一のFFコンパクトカー、ジャスティにもつながっていきます。
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