名車スバル360以来となる軽自動車定番モデルの座をつかみ、2代目でFF化も果たしたスバル レックス。3代目はフルタイム4WD化や4気筒エンジンを手に入れて、660cc化初期までスバル軽自動車を支えました。ヴィヴィオを後継車として以後忘れ去られるかと思いきや、後年『レックス友の会』によるFドリパフォーマンスで再び表舞台に上がった事でも知られます。
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最後のレックスはヴィヴィオへの橋渡し役
1986年11月、スバルの主力軽乗用車『レックス』は3代目へとモデルチェンジしました。
2代目で既にFF化されていましたがパッケージをさらに煮詰め、ホイールベースを40mm延長。
全高も60mmほどアップして、後のトールワゴンほどではないものの、当時流行だったトールボーイスタイルへ変化し、車内スペース拡充に努めています。
エンジンは当初こそ先代同様の直列2気筒エンジンでしたが、1989年のビッグマイナーチェンジでようやく新型の直列4気筒エンジンEN05を搭載。
かと思えば1990年には660cc化されたので、早々に660cc化されたEN07へ更新されました。
他にもフルタイム4WDやスバル独自の無段変速機ECVTも追加されるなど、サスペンションを除けば次代ヴィヴィオ以降でスバル軽乗用車のベーシックとなるメカニズムを確立したのが、3代目レックスです。
4気筒エンジン・スーパーチャージャー・ECVTと3種の神器が揃う
3代目レックスそのものは当時の軽乗用車として『当たり前の構造とパッケージ』となり、常識的な反面、平凡とも言えましたが、メカニズム的には大きな変更が加えられるとともに、スバル軽乗用車の個性として特筆すべき新開発メカが搭載されます。
特に『3種の神器』的なものを紹介すると1つ目は直列4気筒エンジンで、直列2気筒エンジンのスペースに収めるべくコンパクトにまとめられていました。
そのため、わずか10ヶ月ほどラインナップされた550cc版EN05に続く660cc版EN07や、輸出用の758cc版EN08でもボアアップの余地が無かったのか、ロングストローク化のみで排気量を拡大。
ライバル他社のように1リッター化へも対応するほどの余裕は無かったようですが、結果的に軽自動車用エンジンとしてはショートボア・ロングストロークのトルクフルなエンジンになりました。
2つ目は、まだ2気筒エンジン時代の1988年3月にスーパーチャージャー仕様も追加され、他社がターボ化に走りレックスも先代ではターボ車を設定していましたが、スバルはスーパーチャージャー化とEMPi(電子制御燃料噴射)化でリッターカー並のトルクフル路線を選んだ点。
そして3つ目はスバル独自のCVT(無段変速機)、ECVTを1987年6月に追加した点で、3代目レックスでは念願のトルコン式2速フルオートマチックを追加。
ようやくオートクラッチ式MTから決別してライバル並のイージードライブを実現していましたが、他社とは異なりATの3速・4速化など多段化には進まず、一気に無段変速へと進化させました。
ただしECVTと組み合わせられたのはトルコンではなくオートクラッチ時代を思わせる電磁パウダークラッチで、停止しそうになると「ガチャコン!」と切れ、発進する時は「ドン!」と繋がる少々荒々しいフィーリング。
乗るとすぐ耐久性が心配になり、実際弱点でもあったのですが、走り出しさえすれば滑らかさではトルコン式ステップ(多段)ATが及ぶところではなく、後に2速ATを廃止してATを全車ECVT化した取り組みは画期的でした。
ラリーで活躍した3代目レックス、後年『レックス友の会』がドリフトで大暴れ!
3代目レックスは1987年1月にフルタイム4WDモデルを追加。
それは、他社のようにリアデフ手前にVCU(ビスカスカップリング)を追加する方式ではなく、リアデフ内に左右並列で2つのVCUを設け、センターデフ機能とリアLSD機能を同時に持たせる独自方式でした。
この『ツインビスコ4WD』を引っさげたスーパーチャージャーモデルが参戦した全日本ラリーでは、ダイハツ ミラやスズキ アルトワークスなどと対決。
本格的に勝利を得るようになるには次代のヴィヴィオを待たねばなりませんが、そこまでの繋ぎ役を果たしました。
さらに1992年の生産終了後しばらくして、「そういえばレックスなんて車、あったな~」と思う頃になっても活動していたグループが『レックス友の会』で、いわゆる走り屋にとっては知る人ぞ知る存在でしたが、ドリフトイベントへの参戦で一気にスターダムへ。
当初はドリフト会場に紛れ込んできた一般車扱いでしたが、実は本格的なFドリを披露できる実力と、大型ハイパワー車が多い(というよりレックスに比べれば全車そうだった)ドリフトマシンとの『ギャップ萌え』要素で人気を呼びます。
その『ネタ的においしい』活躍ぶりから、C33ローレル改造パトカー仕様ドリ車との追撃戦や、レックス5台による『レックス友の会5連追走』など、ドリフト界のエキシビジョンイベント要員として活躍し、『レックス』の名声を大いに高めました。
主なスペックと中古車相場
スバル KH1 レックス VX 1989年式
全長×全幅×全高(mm):3,195×1,395×1,410
ホイールベース(mm):2,295
車両重量(kg):630
エンジン仕様・型式:EN05 水冷直列4気筒SOHC8バルブ ICスーパーチャージャー
総排気量(cc):547
最高出力:45kw(61ps)/6,400rpm
最大トルク:75N・m(7.6gm)/4,400rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古車相場:皆無
まとめ
とても5年少々の生産・販売期間で行ったとは思えないほどめまぐるしくエンジンやミッションが変わったレックスですが、基本的には『当時の軽乗用車トレンドをふんだんに取り入れた車』でした。
変に奇をてらうよりも流行に乗って販売台数を稼ぎ、スバル軽自動車の生き残りをかけていた3代目レックスは、派手に開口部を稼いだエアロバンパーやキャンバストップもラインナップされ、オシャレな都会的軽自動車でもあったのです。
それでいてスバルらしくオリジナリティの高いメカニズムが満載だったのが3代目レックスの面白いところでしたが、『レックス友の会』の活躍を最後としてまた急速に歴史の渦に飲み込まれようとしています。
そろそろ550cc時代の軽自動車は維持が困難になりつつありますが、まだ持っている方は大事にして、後世にレックスの活躍を伝えて頂きたいと思います。
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