日産が初代マーチをベースに尖ったデザインを施し限定販売。大人気となったパイクカーシリーズ3部作の第2弾であり、もっとも数多く生産されたのがパオです。ドアヒンジをあえて半分表に出すなど『簡素ながらオシャレ』な車で、

1980年代末期に

シトロエン2CVを作ったらこうなりそう、というデザインが特徴でしたが、コンセプトはレトロというより『冒険』でした。

 

日産 パオ  / Photo by Michael

 

日産パイクカー第2弾は、非現実性と冒険心を満たすデザインが魅力

 

日産 パオ  / Photo by mstk east

 

1987年、初の日産パイクカー『Be-1』が世の中にセンセーションを巻き起こし、レトロカーという新ジャンルが生まれつつあった年の東京モーターショーで早くも日産パイクカーの第2弾が発表されました。

一見すると素っ気ないくらい簡素で、骨組みに無造作に貼り付けたようなボディパネルにはドアのヒンジすら半ば露出し、前後バンパーは見た感じパイプそのもの。

のっぺりとした平面で、ガラスハッチのみ開けることも可能な上下2分割テールゲートの緩やかなカーブはシトロエン2CVを思わせます。

ドアには当時ほとんどの国産乗用車から無くなりつつあった三角窓や後席脇のリアクォーターウィンドウには柱が横に走り、何事かと思えば下半分が内側から押し出されて開くフリップアウト式で、三角窓と両方開けばエアコンは不要なほど風が抜ける構造。

そして内装はスチールむき出しでメーター類やスイッチ類は最低限な上にオーディオやエアコンのスイッチすら質素で、『貧相』一歩手前でオシャレにまとめあげた『素材感』に圧倒されますが、それでいて中身はもちろんただの自然吸気版初代マーチです。

1989年1月に3ヶ月限定で予約を受付けて発売し、実に3万台以上を生産、日産パイクカーシリーズ最多販売台数を誇りました。

 

レトロカーにあらず、あくまで本物では無い『気分』をいかに高めるかに全力

 

日産 パオ / Photo by Niels de Wit

 

Be-1でレトロカーという言葉が一人歩きし始めた事や、デザインが1950~60年代あたりにヨーロッパで作られていたコンパクトカー的な部分もあった事から、やはりレトロカーの一種と捉えられることもあるパオですが、コンセプトはかなり異なります。

例えばアフリカの奥地を荷物を屋根まで満載した車に乗り込み、冒険に出かけるような気分をいかに味あわせるか、パオを前にして、そして乗り込んで走り出した時にどこまでその『気分』に浸れるかが主眼であり、一言で言えば『アドベンチャー』がコンセプト。

デザインされた当時にアメリカ西海岸などで流行し始めていた『バナナ リパブリック』という服飾ブランドにヒントを得て、レトロというよりは『都会に似合わないはずのものをオシャレに着こなす』と考えた方がいいかもしれません。

作業服や釣り用のベストをファッションに取り入れるのと同じような感覚で作られたのがパオであり、気分は高めつつあくまで本物ではない、というのもポイントです。

それゆえエンジンはマーチ用の自然吸気SOHCエンジンでミッションも特別なものではなく、4輪駆動の設定はもちろん無し。

『気分』の全ては車の性能ではなくデザインに求められ、それに成功したゆえのBe-1に続く大ヒットを記録。

そのコンセプトは後にサニーをベースとしたパイクカー的ステーションワゴン『ラシーン』や、ダイハツの軽トールワゴン『ネイキッド』でも蘇り、そのたびに熱心なファンを生んでいます。

 

主なスペックと中古車相場

 

日産 パオ  / © Nissan 2018

 

日産 PK10 パオ キャンバストップ 1989年式

全長×全幅×全高(mm):3,740×1,570×1,480

ホイールベース(mm):2,300

車両重量(kg):760

エンジン仕様・型式:MA10S 水冷直列4気筒SOHC8バルブ

総排気量(cc):987

最高出力:38kw(52ps)/6,000rpm

最大トルク:74N・m(7.6kgm)/3,600rpm

トランスミッション:3AT

駆動方式:FF

中古車相場:19万~180万

 

まとめ

 

日産 パオ  / Photo by peterolthof

 

わずか3ヶ月の予約期間で多数のオーダーを抱え、3万台以上が生産されたパオは今でも中古車市場に100台ほど流通しており、生産台数、流通台数ともにパイクカー随一と言えます。

希少性の薄さか、はたまたシンプルな造形がカスタム魂をくすぐるのかカスタマイズ例も多く、マーチスーパーターボのパワーユニットを組み込んだり、2代目マーチ用のCG13エンジンを組み込んだ例も。

そして日本車離れした無国籍感と時代を超越したデザインによって、今なお古くも新しくも無い独特の雰囲気を漂わせており、そのデザインを実現するためにBe-1同様、樹脂パーツを多用したり防錆鋼板の広範囲な採用でサビに強いことも現存台数が多い一因かもしれません。

今でもピカピカにして乗っても構わないのですが、あえてサビだらけ風のウェザリングペイントを行い、『冒険から帰ってきた歴戦の車』風を装うのもまた一興。

メンテナンスが可能な環境さえあれば、まだまだ楽しめそうな1台です。

 

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