1980年代半ば、ソウルオリンピック(1988年)を前にした韓国では、それまで同国内で大宇(デーウ) ロイヤルに独占されていた国産高級車市場へヒュンダイが参入しようとしていました。しかし、同社初の高級車開発という事で時間が足りなかった事もあり、日本の三菱自動車と1985年に共同開発契約を交わして翌年発売されたのが、初代グレンジャーです。

 

初代ヒュンダイ グレンジャー  / Photo by InSapphoWeTrust

 

日韓合作第一弾、初代ヒュンダイ グレンジャー

 

出典:初代ヒュンダイ グレンジャー / 出典:https://ko.wikipedia.org/wiki/%ED%98%84%EB%8C%80_%EA%B7%B8%EB%9E%9C%EC%A0%80

 

1980年代中盤、ソウルで開催された1988年夏季オリンピックを数年後に控えた韓国で、自動車メーカーのヒュンダイが頭を悩ませていました。

なぜならヒュンダイは同オリンピックの公式スポンサーでもあり、何とか韓国を代表するような立派な車を走らせたいと考えていたのです。

しかし同国の国産高級車市場はデーウ(大宇)がオペル レコルト(後のオメガ)をベースに開発した『ロイヤル』シリーズが独占。

当時のヒュンダイは、1978年からドイツフォードの中型サルーン『グラナダ』Mk.IIを生産しており、それ以前にも同じフォードの『タウヌス』20Mを生産した経験がありましたが、独自モデルの開発経験はありません。

同じ頃、海を渡った日本では三菱自動車が1964年デビューでいい加減古くなっていたフラッグシップサルーン『デボネア』の次期モデルを開発していたものの、不安を抱えていたはずの時期でした。

開発そのものは提携していたクライスラーから(アメリカ車としては)小排気量V6エンジンの供給を打診されたことで新型エンジンの採算にメドはつき、後はそれを横置きに搭載したFF大型高級セダンというところまで決まっています。

しかし、今まで法人ユーザーがメインで個人向け大型高級車の販路を持たない三菱ディーラーで、個人向けも含めた新型デボネアの需要はあるのだろうか?という不安。

そこに降ってわいたのが1973年から技術供与契約を結んでいたヒュンダイからの「新型高級車を共同開発したい。」という話で、三菱にとっても渡りに船だった事から1985年に共同開発契約を結びました。

こうして翌1986年に日韓両国で発売されたのが、初代ヒュンダイ グレンジャー(韓国)と、三菱 デボネアV(日本)です。

 

ソウルオリンピックに間に合い、ライバル車にも勝利!

 

初代ヒュンダイ グレンジャー /  出典:https://www.favcars.com/pictures-hyundai-grandeur-l-1986-92-327290-800×600.htm

 

初代グレンジャーが発売された1986年といえばソウルオリンピックの2年前、つまり2020年の東京オリンピックを2年後に控えた、現在(2018年10月)の日本のような状況で、そろそろ2年後につながる国内行事などの話題も増えてくる中、『オリンピックに間に合ったピカピカの新品高級車』初代グレンジャーは、相当インパクトのある存在だったはずです。

三菱と契約した1985年はもう発売前年だったので、共同開発とはいってもヒュンダイが関与できたのは限定的で、おそらくはエンジンラインナップや装備品、内外装の細部と言った商品企画についての部分では無かったかと思います。

なぜならば、日本の三菱 デボネアVが2リッター、あるいは3リッターV6エンジンと全車4速ATの組み合わせだったのに対し、初代グレンジャーは2リッター直4エンジン(三菱G63B)に5速MTを組み合わせて発売されたからです。

ライバルの『デーウ ロイヤル』シリーズが1.5~2リッタークラスのガソリンまたはディーゼルエンジン搭載のため、まず背伸びせずライバルに対抗できる程度で、と考えてもおかしくありません。

デーウも『ロイヤル』シリーズを強化、1986~1988年にかけてフェイスリフトや車名変更、1.9リッター以前のガソリンエンジン搭載全車の電子制御インジェクション化で対抗すると、初代グレンジャーは1987年に2.4リッターエンジン(三菱G64B)を搭載し4速ATを追加。

さらにデーウが1989年3月に韓国初の3リッター直6エンジン搭載車『インペリアル』を発売すると、初代グレンジャーも同年9月に3リッターV6エンジン(三菱6G72)で対抗するといった具合です。

デーウの方は『インペリアル』でも原型は1977年発売の2リッタークラスFR中型車『オペル レコルト』のロイヤル スーパーサルーンにオペル セネター用の古いエンジンを積んでいたので、最新のグレンジャーに対しては世代が違い過ぎました。

ヒュンダイにとっては三菱と話し合ってグレンジャーをバージョンアップしていけば良かったので、最初から勝負がついていたのかもしれません。

 

主なスペックと中古車相場

 

初代ヒュンダイ グレンジャー / ©HYUNDAI MOTOR COMPANY.ALL RIGHTS RESERVED.

 

ヒュンダイ グレンジャー 1987年式

全長×全幅×全高(mm):4,865×1,725×1,430

ホイールベース(mm):2,735

車両重量(kg):1,445

エンジン仕様・型式:G4CS(三菱G64B) 水冷直列4気筒SOHC8バルブ

総排気量(cc):2,351

最高出力:90kw(123ps)/5,000rpm

最大トルク:195N・m(19.9kgm)/4,000rpm

トランスミッション:4AT

駆動方式:FF

中古車相場:皆無

 

まとめ

 

初代ヒュンダイ グレンジャー  / 出典:https://www.favcars.com/images-hyundai-grandeur-l-1986-92-7468-800×600.htm

 

こうして大成功を納めた初代グレンジャーですが、三菱とヒュンダイが高級車を共同開発する関係は、その後も初代プラウディア / ディグニティ(初代ヒュンダイ エクウス)まで続きます。

3代目グレンジャー(グレンジャーXG・1998年)や2代目エクウス(2009年)以降はヒュンダイの独自開発となっていますが、その技術のどこかには今も三菱の血が残っているかもしれません。

ライバルの『デーウ ロイヤル』シリーズが独占していた高級車市場からシェアを奪い取り、三菱の手を離れて独自開発に駒を進め、ついには高級車ブランド『ジェネシス』を立ち上げたヒュンダイにとって、初代グレンジャーは本当に重要なモデルとなったのです。

 

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