ソウルオリンピック(1988年)の公式スポンサーだった関係もあり、どうにかデーウ(現在の韓国GM)から高級車市場を奪取したかった韓国の自動車メーカー、ヒュンダイは、共同開発契約を結んだ三菱の『デボネアV』をグレンジャーとして販売。市場奪取に成功しますが、その後も三菱との関係は続くことになり3代目デボネアも2代目ヒュンダイ グレンジャーとして販売されました。
高級車バトルで大勝利、五輪終わってグレンジャー!2代目へ
三菱 デボネアV(2代目デボネア)の発売直前、共同開発契約を結んで初の高級車『グレンジャー』を発売し、ヒュンダイ(現代自動車)は韓国の高級車市場を独占していたデーウ(大宇。現在の韓国GM)『ロイヤル』シリーズに戦いを挑みます。
デーウも『ロイヤル』シリーズへの大排気量エンジン搭載で応戦しますが、ロイヤルが古いオペル レコルトEベースなのに対し、グレンジャーは本国(日本)では3リッターV6エンジンを搭載する最新のデボネアVそのものだったので、見事に勝利。
これでしっかり韓国の高級車市場へ食い込んだヒュンダイは、三菱との関係続行を希望。
1992年10月に発売された3代目三菱 デボネアもまた、2代目グレンジャー(ニューグレンジャー)としてヒュンダイで販売されました。
デーウも失地奪還のため、こちらも日本車で対抗だ!とばかりにホンダと契約。
3.2リッターV6エンジンを搭載するレジェンド(2代目)のライセンス生産版、『アカディア』を1994年に発売します。
しかしヒュンダイは初代グレンジャーの時と同様”ライバルが大排気量エンジンを搭載してきたら、三菱からもっと大きなエンジンを送ってもらう作戦”により、3.5リッターDOHCエンジン(三菱6G74)搭載の最上級グレードを1994年2月に追加。
さらに同年11月には廉価グレードの2.4リッターSOHCエンジン(三菱4G64)を2.5リッターV6DOHCエンジン(同6G73)へ更新するなどの対策を進め、アカディアから高級車のシェアを守り通したのです。
エンジンを除けば3代目デボネアとほぼ同じ。後に派生車ダイナスティを追加。
モデルチェンジに際し『ニューグレンジャー』と呼ばれた2代目グレンジャーも基本的には初代同様、モデルチェンジした3代目デボネアとはフロントグリルなどの細部を除き、外観まで同じ車です。
ただしエンジンラインナップが異なり、当初から3リッター、または3.5リッターV6エンジンを搭載していた3代目デボネアに対し、2代目グレンジャーは当初2リッター直4(三菱4G63)と3リッターV6(同6G72)を搭載しており、発売翌年に2.4リッター直4を追加。
結局はライバルに対抗して3.5リッターV6エンジンを追加した上で、2リッターエンジン搭載の廉価版も設定しており、デボネアよりグレード展開は幅広くなっています。
そして1996年にはいよいよヒュンダイオリジナルデザインの上級派生車『ダイナスティ』が登場。
グレンジャーには存在しないリムジン版(デボネア150がベース)も設定されて、少しずつヒュンダイ独自色を強めていきました。
主なスペックと中古車相場
ヒュンダイ グレンジャー(2代目) 1995年式
全長×全幅×全高(mm):4,980×1,810×1,440
ホイールベース(mm):2,745
車両重量(kg):1,645
エンジン仕様・型式:三菱6G73 水冷V型6気筒DOHC24バルブ
総排気量(cc):2,497
最高出力:127kw(173ps)/6,000rpm
最大トルク:220N・m(22.4gm)/4,000rpm
トランスミッション:4AT
駆動方式:FF
中古車相場:-
まとめ
日本では大幅にボディサイズを拡大し、3ナンバー車ブームに対応した3代目デボネアでも販売不振から抜け出せずに苦しんでいた頃、対馬海峡の向こうでは韓国のヒュンダイが同型のグレンジャーで輝かしい成功を収めていました。
公用車や社用車としても採用された黒塗りのグレンジャーは憧れの存在となり、ヒュンダイの公式サイトでも『当時大型車のトレンドを新たに確立した』と紹介されているほどです。
つまりデボネアはライバルが強力すぎただけで、決して高級車として見劣りする存在では無かったとヒュンダイが証明してくれたわけで、デボネアが1999年11月で生産を終えた後も、2代目グレンジャーの上級派生車ダイナスティは2005年まで生産していました。
ただし、ヒュンダイはまだまだ高級車用の大排気量エンジンなどの独自開発技術は整っておらず、もうひと押しだけ、エクウス(三菱 プラウディア / ディグニティ)で三菱の力を借りる事になります。
なぜならデーウから守りきった高級車市場には、新たにメルセデス・ベンツと提携したサンヨン(双龍自動車)がEクラスの細部を変更してライセンス生産した『チェアマン』が登場し、グレンジャーやダイナスティの地位を脅かしていたからです。
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