3代目(1998年)以降は、ヒュンダイのフラッグシップからアッパーミドルクラスサルーンへと転身し、日本への輸出も開始されたグレンジャーは2005年に4代目へモデルチェンジ。翌年には日本でも正規販売が開始されてパワフルなLPG車も輸入され、タクシーや個人など購入したユーザーからは高い評価を得ています。しかし2010年にはヒュンダイ自体が日本市場から撤退したため、グレンジャーの名で日本へ輸入されたのは4代目が最初で最後となりました。
『洗練された極上のバランス』がコンセプトのアッパーミドルクラスサルーン
2005年5月に韓国本国で発売された4代目ヒュンダイ グレンジャーは『洗練された極上のバランス』をコンセプトとし、ボディサイズこそ先代より少々大きくなった程度(日本の基準で考えるとかなり大柄)とはいえ、デザインや質感などの高級感は確実にアップしていました。
エンジンも先代までは、まだ三菱が開発したエンジンのライセンス生産版『シグマ』エンジンが残っていましたが、4代目にしてついに三菱の血から独立。
いずれもヒュンダイオリジナルの『シータ』『ミュー』『ラムダ』を搭載。
特にサブネームはありませんが、2代目(ニューグレンジャー)や3代目(グレンジャーXG)同様に通称がつくこともあり、その場合は開発コードから『グレンジャーTG』と呼ばれます。
また、当時ヒュンダイは日本市場への進出を試みていた時期だったため、『XG』の名で輸入された先代に続き4代目も2006年1月に正規輸入販売を開始。
今度は『グレンジャー』を名乗り、ヒュンダイジャパンのフラッグシップモデルとなりました。
なお、北米など日本以外への海外市場では『ヒュンダイ アゼーラ』の名で輸出されており、日本市場へは投入されなかったパワフルな3.8リッターV6版『ラムダ』エンジン搭載車も設定されています。
日本市場初の輸入LPG車は、最新技術でパワフル!
日本で正規輸入販売されていたのは3.3リッターV6版『ラムダ』エンジン搭載グレード『3.3GLS』がメインでしたが、特徴的だったのは2006年11月から追加されたLPG仕様グレード『Q270』です。
日本では、その頃LPG車の主要ユーザーだったタクシー会社でプリウスなどのハイブリッド車の採用が拡大し、その他ガソリン車のLPG車転換もエンジンのハイテク化で年々高額になりつつあったので、自動車用燃料としてのLPG市場が縮小していく危機感がありました。
そこで、2004年度に伊藤忠商事などが行った、海外製LPG車の安全性実証調査にヒュンダイはボルボとともに協力。
XG(3代目グレンジャーの日本名)のLPG車で調査や日本でのナンバー取得の可否、国産LPG車との比較を行い、有望という結果が出ます。
それを踏まえて発売されたグレンジャーQ270は、2.7リッターV6LPG版『ミュー』エンジンを搭載。
当時まだトヨタも市場投入していなかった電子制御液化インジェクション(燃料噴射)式で、日本市場の量産LPG車としては史上初めて100kwを超える121kw(165馬力)を発揮。
出力のみならず、レスポンスなど運転感覚はガソリン車と全く遜色無く十分以上にパワフルで、タクシーだけでなく個人向けの一般販売も行われて、購入したユーザーからは高い評価を得ました。
ちなみに首都圏など大都市圏ではタクシーへの使用実績もあるので、乗った事がある人もいるかもしれません。
主なスペックと中古車相場
ヒュンダイ TG27L グレンジャー Q270 Lパッケージ 2006年式
全長×全幅×全高(mm):4,895×1,865×1,490
ホイールベース(mm):2,780
車両重量(kg):1,650
エンジン仕様・型式:L6EA 水冷V型6気筒DOHC24バルブ 電子制御LPG液状噴射
総排気量(cc):2,656
最高出力:121kw(165ps)/5,400rpm
最大トルク:245N・m(25.0kgm)/4,000rpm
トランスミッション:5AT
駆動方式:FF
中古車相場:72万円(ほぼ皆無)
まとめ
当時の国産車より先進的だったLPG車の設定など、なかなか意欲的だった4代目グレンジャー。
内装に使われている樹脂部品の品質がイマイチで、エアコンの効きも車格にしては若干の難ありという点を除けば、ガソリン車/LPG車ともに動力性能やサスペンションセッティング、快適性などは同価格帯の日本車より劣らないどころか部分的には勝るという評価すらあります。
筆者もかつてミドルクラスセダンの『エラントラ』に試乗した時に感じましたが、韓国車はボディサイズに対する車格や品質の考え方が日本車よりアメ車に近く、日本車の感覚では車体の大きさに対し、一部内装の品質に疑問を持つかもしれません。
しかし走り出してしまえば、サスペンションの剛性感や操作フィーリングなど、ヘタな日本車では及ばないクオリティに達している部分もあり、単に車作りの考え方、力を入れる部分が異なるだけという事に気付かされます。
日本ではブランド力の構築を成し遂げられないまま撤退したのが非常に惜しまれますが、いつかまた日本市場へ参入することがあれば、最新型のグレンジャーを試してみたいものです。
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