軽自動車が高品質・高付加価値への道を模索していた1990年代、各メーカーで上級グレードに4気筒エンジンを搭載するのが少し流行った時期がありました。ダイハツもそれまでの3気筒エンジンと並行して4気筒エンジンJBを開発、早速搭載されたのがL500系4代目ミラでした。新規格に移行した5代目以降のミラにはJBは搭載されなかったので、4代目が唯一の4気筒搭載ミラとなったのです。
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まだムーヴもタントも無かった頃、ダイハツの主力だった最後のミラL500系
1994年、ダイハツ ミラはモデルチェンジして660cc第2世代のL500系へと更新されました。
当時のダイハツ軽乗用車はほかにリーザの後継として高級・スペシャリティカー的な役割を担ったオプティがあったのみで、ワゴンRを追撃するトールワゴン、ムーヴがデビューするのは翌1995年のこと。
さらに小型車では一世を風靡したシャレードがボディ拡大で1.3~1.6リッタークラスの車になっており、かつてのコンパクトながらスペース効率に優れ、キビキビ走ったリッターカーとしての魅力を失っていました。
つまり、デビュー時点の4代目L500系ミラは文字通りダイハツの主力車種、ダイハツを背負って立つ大黒柱のような存在だったのです。
そのため、ベースモデル、スポーツモデル、競技ベースモデル、高級モデル、商用モデル、ウォークスルーバン、ミチートと7種類のミラが存在したほか、後にクラシック軽自動車ブームが到来するとクラシックモデルも追加されます。
そしてエンジンは先代L200系ではついに搭載されなかったDOHCエンジンが搭載され、基本的には1980年代前半に開発された550cc3気筒エンジンEBの660cc版、EFに追加してバブル期に開発された豪勢な4気筒エンジン、JBが搭載されたのです。
結果的にはムーヴがワゴンR同様大ヒットとなったため主力の座を降り、次期型L700以降はダイハツ軽乗用車のベーシックモデルとしての道を歩みますが、それ以前に主力だった時代の、最後のミラとなりました。
性格の異なる8種類のミラと、多彩なエンジンバリエーション
L500系ミラは他に量販を見込めるモデルが無い中で多くの役割を求められたため、実に多彩なバリエーションを持ちました。
基準となるのは3ドア / 5ドア2種類ある乗用(5ナンバー)ベースモデル「ミラ」と、3ドアの商用(4ナンバー)のボンネットバンモデル「ミラバン」。
「ミラ」からの派生車種は以下。
【スポーツ系】
・NA(自然吸気エンジン)3ドアのTRおよび5ドアのCR
・TRおよびCRはいずれも4気筒のJB-ELを搭載
・ターボエンジンのTR-XXアヴァンツァート系
・アヴァンツァートとアヴァンツァートGは3気筒DOHCのEF-RLを搭載
・アヴァンツァートRおよび4WDのアヴァンツァートR4は4気筒DOHCのJB-JLを搭載
【競技ベース系】
・FF(フロントエンジン前輪駆動)のX2と、4WDのX4
・装備を簡素化して後付けの許されないクロスミッションなどを最初から装備
・いずれもエンジンは4気筒DOHCのJB-JL
【高級系】
・全車NAのモデルノ
・廉価グレードは3気筒DOHCで電子制御キャブレターのEF-GLを搭載
・上級グレードはFFがJB-ELを、4WDが3気筒DOHCでEFIのEF-ZLを搭載
・限定の特別仕様車、モデルノ・ハローキティバージョンもあり
【クラシックモデル】
・ミラクラシック
・NAのFFはSOHC6バルブ電子制御キャブレター式EF-FLを搭載
・NAの4WDはEF-ZLを搭載
・ターボ車はEF-RLを搭載
「ミラバン」からの派生車種は以下
【ミラ・ウォークスルーバン】
・歴代最後のウォークスルーバンで、唯一運転席側ドアを持つ。
【ミラ・ミチート】
・同じく歴代最後のミチートで、ガルウイング方式で開く荷室を持つ
以上、ベーシックモデルから様々なラインナップを誇り、エンジンも機械式キャブレーター式の3気筒SOHC6バルブから、EFI(電子制御インジェクション)式の4気筒DOHC16バルブインタークーラーターボまで実に多彩です。
後継の新規格第1世代L700系ミラになると、バリエーションはベースモデルとミラバン、ミラジーノの3種類、エンジンも3気筒SOHC、同DOHC、同DOHCターボの3種類しか無くなるので、それ以前のミラが以下に多くの役割を持っていたかがわかります。
L500系ミラそのものの特徴としては、エアバッグやABSなどの安全装備の設定車種が増えたのと、4WDモデルにはパートタイム4WDとフルタイム4WDの2種が混在したこと。
さらにフルタイム4WDはまだ4WDに対応した牽引車両が少なかった時代だったこともあり、車外からのみの操作ながら、故障時モードとして後輪への駆動を切れる機能が備わっていました。
軽量ハイパワーでモータースポーツでも長く活躍
競技ベースモデルのX2とX4が存在しただけあり、先代からの後を継いでダートトライアルやラリーに数多く参戦、同クラスのアルトワークスやヴィヴィオと激しく戦いました。
X2(FF)もX4(4WD)も4気筒DOHC16バルブターボのJB-JLをクロスミッションと組み合わせ、オプションで機械式LSDの装着が可能など本格派。
特に高回転高出力型のJB-JLは低回転からのパンチ力溢れたスズキK6Aターボとの優劣が注目されました。
結果的にはK6Aターボを搭載して軽量のHB21SアルトワークスRがその猛威を振るった時期であり、健闘はしたもののミラX4はアルトワークスRに全く歯が立たず、ダイハツワークスたるDRSがストーリアX4を求めるキッカケとなったのです。
しかし、X2の方は全日本ラリー2輪駆動部門でアルトワークスRに相当する手ごわいライバルがいなかったため、好成績を上げています。
また、1995年に始まったダイハツチャレンジカップでは終盤近くまで軽自動車のクラスでは主力車種として活躍。
X2やX4は元より、NAスポーツ仕様のTRやCR、さらにモデルノをターボ化(あるいはTR-XXアヴァンツァートRの外装モデルノ化)したオリジナルカスタマイズ車が数多く出走していました。
中には、X2にどこから手に入れたのか特別仕様車のハロ-キティバージョン用デカール(原則としてハローキティバージョンの車検証無しには入手できない)を貼った「ミラ・ハローキティX2」まで登場するなど、多彩なL500系ミラが一堂に会する現場となったのです。
最近ではL700系以降の新規格ミラ同様、4WDをベースにフロントの駆動をカットしたドリフト向きのFRミラが、L500系ミラでも登場しています。
主要スペックと中古車価格
ダイハツ L502S ミラTR-XXアヴァンツァートR 1997年式
全長×全幅×全高(mm):3,295×1,395×1,430
ホイールベース(mm):2,300
車両重量(kg):700
エンジン仕様・型式:JB-JL 水冷直列4気筒DOHC12バルブ ICターボ
総排気量(cc):659cc
最高出力:64ps/7,500rpm
最大トルク:10.2kgm/4,000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古車相場:5万~79.8万円(各型含む)
まとめ
現在ではすっかり影が薄くなり、事実上MT車を根強く愛用するユーザーのためのMTモデルと、商用のミラバンのみ細々と生産され続けているダイハツ ミラですが、かつてはミラこそがダイハツの大黒柱だったという時期がありました。
量販モデルはミラのみ、ムーヴはまだ定着するかわからないという時期だったので、とにかくミラであらゆるモデルを作って付加価値を高めるしか無いというわけで、実に多彩なモデルが作られました。
今ではユーザーの求める用途やキャラクターごとに多彩な車種ラインナップが準備されるようになっていますが、20年ほど前はそのほとんどがミラでまかなわれていた時代があり、L500系ミラを振り返ると、そのことがよくわかります。
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