目まぐるしく変化する路面コンディション、並みのマシンでは完走する事すらままならない難攻不落のテクニカルなコース。それらを巧みに攻略し、しかも誰よりも速く駆け抜けた者のみが手にする事のできるチャンピオンの称号。1997年から始まった通称WRカー時代に君臨した歴代チャンピオンはいったいどのような人物であり、そして彼らが駆ったのはどんなマシンだったのか。1997〜2003年のチャンピオンマシンをご紹介します!

 

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%A9WRC

モンテカルロのSSを駆け抜けるカローラWRC(出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/

 

ワールドラリーカーとは?

出典:http://www.stylizedfacts.com/STi/2005/03/wrc_2005.html

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トヨタ セリカ、三菱 ランサーエボリューション、スバル インプレッサ等、数多くの日本車が活躍したグループA規定によるWRCが終焉をむかえ、1997年から新たな車両規則として採用されたのがワールドラリーカーです。

あくまでもグループAから派生した規定であるというスタイルで考案されたため、4WDターボを基本としています。

FIAはグループA末期に課題となった厳しい最低生産台数規定を改定し、比較的小規模なメーカーでも参戦出来るよう配慮されました。

駆動方式の変更等が認められた事でベース車の自由度が上がり、最盛期には7つのワークスチームが参戦する賑わいを見せます。

しかし開発競争の激化はモータースポーツの常であり、WRカーも参戦コスト高騰が顕著となった2010年に終焉をむかえました。

FIA主導のカテゴリーとしては長命な部類に入るWRカー(14シーズン)。

その間には名ドライバーの世代交代が進み、新たなチャンピオンも多数誕生しています。

ちなみにWRカー規定の採用に先立って、2リッター自然吸気エンジン搭載の2WD車 ”F2キットカー”を新規定として採用しようとする動きも見受けられたのですが、その当事者であるはずのフランス系メーカーがWRC本格参戦を敬遠したため、結局は不採用になったというエピソードも・・・。

それではいよいよ、ここからWRカー時代を彩った歴代チャンピオンを一挙ご紹介していきます!

みなさんの記憶に残っているマシンやドライバーは登場するでしょうか?

出典:https://pt.wikipedia.org/wiki/Prodrive

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1997Mitsubishi Lancer Evolution Ⅳ(トミ・マキネン)

出典:http://www.mitsubishi-motors.co.jp/motorsports/01photo/wrclib.html

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WRカー規定導入の初年度となる1997年。
スバルとフォードがそれぞれ新規定に沿ったマシンを投入してくる中、三菱は従来どおりグループA使用のランサーエボリューションⅣを開幕戦から使用しました。
当時のWRカーは“グループA改”といった印象で、まさに手探り状態。
そうした中でグループA仕様のまま正常進化させたランサーを駆るマキネン選手は、スバルのコリン・マクレー選手に最終戦で追い上げられるも、1ポイント差で逃げ切ってチャンピオンを獲得しました。

1998Mitsubishi Lancer Evolution Ⅴ(トミ・マキネン)

出典:http://www.mitsubishi-motors.co.jp/motorsports/98WRC_j/CATALUNYA/l11.htm

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前年後半に投入されたトヨタの新兵器カローラWRC、フルアクティブデフとセミATで武装したインプレッサWRC、それらのライバルを打ち負かしてまたもやチャンピオンに輝いたのは三菱のトミ・マキネン選手です。
5戦カタルーニャから投入されたエボⅤは、全幅をエボⅣ比で8cm拡大。
この年はグループN選手権でもタイトルを獲得しており、ランサーの中でも最強とされているのがエボⅤです。
カローラWRCを駆るカルロス・サインツ選手と熾烈なポイント争いが繰り広げられますが、最終戦では両者共にリタイア。
12戦終了時の2ポイント差が勝敗を分けました。

1999Mitsubishi Lancer Evolution Ⅵ (トミ・マキネン)

出典:http://www.mitsubishi-motors.co.jp/motorsports/99wrc_e/sanremo/photolibrary.html

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ラリー界の鉄人、マキネン選手の強さは留まる所を知りません。
グループA時代の1996年から数えて4年連続のチャンピオン獲得です。
有利な規定であるはずのWRカーを寄せ付けないランサーとマキネン選手の組み合わせは最強!
前年まで共に三菱で戦っていたリチャード・バーンズ選手がスバルへ移籍し、そこへトヨタのディディエ・オリオール選手を交えた三つ巴の戦いとなりましたが、最終戦でリタイアしたにも関わらずマキネン選手が2位に7ポイント差をつけて勝利しています。
エボⅥは最初で最後の2段主翼化されたウィングを搭載していましたが、他のWRカーに対して翼面積が大きくなりすぎる点をFIAから指摘され、下段翼とトランクの隙間を塞いで参戦していました。
同年からプジョー、シュコダ、セアトのワークスチームが参入。
 

2000Peugeot 206 WRC (マーカス・グロンホルム)

出典:http://www.wrc.com/en/wrc/about-wrc/more-/history/2000-2009/page/811-837-672--.html

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グループBでの20516F2キットカーを世に知らしめた306マキシ等、各年代で重要な役割を担ってきたフランスの獅子が再び強さを発揮した2000年。
前年から投入されていた206WRCは、ベース車両があまりにコンパクトなマシンであったため、参戦にあたってバンパーを延長した206GTというグレードを市販車に追加。
そうすることでWRカーの全長規定(4m以上)をクリアしたというエピソードがあります。
206WRCはツーリングカーレースで406に搭載されていたエンジンを採用。
誰も止めることが出来ないと思われていたトミ・マキネン選手の連覇を阻止したのは、同じフィンランド人のマーカス・グロンホルム選手でした。
1999年にプジョーへ加入したグロンホルム選手は、それまでチームやマシンに恵まれず不遇の時代を送っていました。
206WRCを手にした彼は、短いホイールベースを活かした俊敏なコーナリングで4回の優勝を飾り、見事チャンピオンを獲得!
フィンランド最強の苦労人に初めてスポットライトが当たった瞬間でした。

2001年 Subaru Impreza WRC(リチャード・バーンズ)

出典:http://www.sgmracepaint.co.uk/gallery.php

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この年からGD型にモデルチェンジしたインプレッサWRC。

前年に投入されたGC型最終仕様はGD型へのスイッチを見越して大部分を新設計したテスト車両的存在であり、そこで入念に準備を進めた事で新型インプレッサは当初から高いパフォーマンスを発揮しました。

新たな武器を手に入れたリチャード・バーンズ選手は高い確率で表彰台に立ち、第13戦オーストラリアでは1勝を飾っています。

戦闘力を増したフォード フォーカスのコリン・マクレー選手、暫定WRカー仕様のエボ6.5を駆る鉄人トミ・マキネン選手とタイトルを争いますが、シーズン後半でコンスタントにポイントを獲得したバーンズ選手が見事逆転!

自身初のチャンピオンに輝きました。

 

2002年 Peugeot 206 WRC (マーカス・グロンホルム)

出典:http://www.carenthusiast.com/20020316_wrc2002corsica_review_af.html

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206WRCは参戦4年目となり、マシンの熟成度は非常に高いレベルへ到達していました。

引き続き206WRCを駆るマーカス・グロンホルム選手は、卓越したドライビングでシーズン通して他を寄せ付けない速さを発揮。

ターマックキングの異名を持つジル・パニッツィ選手と共に、2人だけで14戦中8勝を記録しています。

シーズンが終わってみれば、ランキング2位のペター・ソルベルグ選手にダブルスコアをつける圧倒的勝利となりました。

ちなみにセバスチャン・ローブ選手がWRCで頭角を現してきた年でもあり、新世代の活躍を予感させました。

 

2003年 Subaru Impreza WRC(ペター・ソルベルグ)

出典:http://www.wrc.com/en/wrc/news/april/subaru-poll/page/1339--12-12-.html

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ヘッドライト形状が前年までの丸目から涙目に変更された2003年のインプレッサWRC。

更なる低重心化と軽量化を推進した内容となっており、空力面でも改良が加えられました。

この年からリアウィングが垂直ウィンの付いたスプリッターウィングに進化しています。

シーズン序盤こそシトロエンやプジョー勢の背中を見ながらの展開となりますが、中盤以降に4勝を挙げ、ポイントランキング上位に躍り出ました。

最終戦をむかえた時点で、シトロエンのサインツ選手・ローブ選手、プジョーのバーンズ選手、そしてソルベルグ選手の4名が5点以内でチャンピオンを争う大激戦に。

バーンズ選手が病気欠場、サインツ選手が序盤にリタイアする中、ソルベルグ選手はSSベストタイムを連発する気迫の走りを見せます。

結果ローブ選手を抑えて4勝目を飾り、自身初のシリーズチャンピオンに輝きました!

 

まとめ

みなさん、いかがでしたでしょうか?

グループAからの派生レギュレーションとして繁栄を極めたWRカー。

今回は1997年から2003年までの歴代優勝マシンをご紹介させていただきました。

長い歴史の中で、技術の粋を集めた名マシンの誕生や、伝説的ドライバーの世代交代等、私たちモータースポーツファンに数多くの話題を提供してくれました。

2017年から新たなステージに突入するWRCですが、その前に往年のマシンやドライバーたちを復習してみるのもいいかもしれませんね!

 

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