名車に歴史あり。中でも車名が長い間絶える事なく使われ続けている車というのは数少なく、大抵はどこかでイメージチェンジやキャラクター、特性やその他が車として大きく変わったので名前も変えて心機一転というケースが多いもの。それだけに、1954年にトヨタ ジープから改名以来、2018年現在まで64年もの間を同じ車名で通してきたトヨタ ランドクルーザーの偉大さは、誰もが感じると思います。では、その初代はどんな車だったのでしょうか?
戦時中に『日本版ジープ』を作っていたトヨタ
太平洋戦争前から中国と満州事変(1931年)以来の激戦を交わしてきた日本では、軍用の4輪駆動トラックや軍用小型乗用車を開発。
トヨタもKC型トラックを4輪駆動化した『KCY型』や、KCY型を水陸両用化した『スキ型』4輪駆動トラックを作りました。
しかし、太平洋戦争開戦後にマレーシアで捕獲したバンタム ジープを見た日本軍は驚き、自分たちが小型軽便、武装も搭載可能な野戦向け乗用4輪駆動車を持たない事に気づいて、トヨタにコピーの生産を命令します。
そして敵味方識別のためか、『外観はジープに似せないように』という注文がついたことや資材不足に難儀しながら、1944年7月に『AK10型小型4輪駆動トラック』として6台の試作車が完成。
四式小型貨物車として採用されますが、結局本格生産には至らずに終わりました。
戦後に警察予備隊向け『トヨタ・ジープ』を開発
第2次世界大戦が終わると早速、KC型トラックの生産から民需の復帰を進めたトヨタはさまざまな困難に見舞われつつもトラック、バス、乗用車と少しずつ新型車の開発を進めていましたが、1950年6月に朝鮮戦争が始まった事で、さらなる新型車が求められます。
そして朝鮮半島に赴かなければいけない米軍に代わって、日本本土の防衛と治安維持を担当する警察予備隊(現在の陸上自衛隊)が発足。
車両は米軍の中古が供与されましたが、急激に膨れ上がる組織に対し、それだけではとても足りません。
そこで、国産車メーカーに対して警察予備隊用の小型4輪駆動車の試作要請が入り、それに応じて各社準備したのが、トヨタ ジープBJ型、日産 4W60、三菱 ジープでした。
もっとも、この要請の裏には「朝鮮戦争で消耗した車両を日本で生産・調達して補充したい。」という米軍の思惑もあったため最初から出来レースというべきで、米軍と同じジープの生産権を得て挑んだ三菱(当時は中日本重工)が受注を獲得。
仕方なくトヨタや日産は国家警察(現在の警察庁)や消防向けのセールスに切り替え、1951年8月にトヨタ ジープBJ型は国家警察向けパトロールカーとして採用されました。
AK10型の経験を元に、少しずつ得ていった信頼
トヨタはジープBJ型を開発するにあたり、SB型1トントラック用シャシーを改良して流用。
しかし、アメリカのジープに相当する2.2リッタークラスエンジンが無く、小型乗用車用S型とトラック用B型しか無かったので、3.4リッターOHVのB型を選択。
当時のカタログを見ると、トランスファーレバーによる2輪駆動(FR)から4輪駆動への切り替えは停止せずとも走行中に可能と書かれているのが興味深いところです。
それらのレイアウトや4輪駆動メカニズムに戦時中のAK10型の経験を大いに参考にして短期間で形にできましたが、それでも1951年8月の国家警察採用から仕様の決定や予算の折衝などに時間がかかり、量産開始まで2年もかかっています。
その後、林野庁や電力会社からも採用され、消防車仕様についてはポンプの駆動にエンジンがパワー不足と指摘されたようで、B型をボアアップした3.9リッターエンジンを搭載。
なお、『F型』エンジンはその後4リッターに拡大した『3F』や、電子制御インジェクション化された『3F-E』が1990年代までランドクルーザー各型などに使われましたが、『B型』については後の(2代目)B型ディーゼルエンジンとは無関係です。
また、ボディのデザインは戦時中のAK10型といくらも変わらない無骨さですが、そもそも警察予備隊向けの軍需用モデルとして開発されたので無理もありませんでした。
主なスペックと中古車相場
トヨタ BJ (ランドクルーザー) 1953年式
全長×全幅×全高(mm):3,793×1,575×1,900
ホイールベース(mm):2,400
車両重量(kg):1,425
エンジン仕様・型式:B 水冷直列6気筒OHV12バルブ
総排気量(cc):3,386
最高出力:63kw(85ps)/3,200rpm(※グロス値)
最大トルク:216N・m(22.0kgm)/1,600rpm(同上)
トランスミッション:4MT
駆動方式:4WD
中古車相場:皆無
まとめ
いよいよ現代まで続く長い道のりを歩み始めたものの、当初の車名『トヨタ ジープ』はさすがに問題があり、案の定ジープの商標を当時所有していたアメリカのウイリス社からクレームが入りました。
そこで当時のトヨタ取締役技術部長、梅原 半二によって1954年6月に『ランドクルーザー』と改名され、以後長い歴史をつむいでいく事になります。
現在日本で販売されている200系ランドクルーザーや150系ランドクルーザープラドの型式に『J』が残っているのはその名残で、ランドクルーザーの型式『J』は実は『ジープ(Jeep)』のJなのです。
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