現在のマークXに集約される以前、1980年代から1990年代にかけてトヨタの『マークII 3兄弟』全盛期がありました。その中でも最後発だった初代クレスタは当時もっとも新しいトヨタディーラーとして実験的意味合いも兼ねていたビスタ店で取り扱われ、保守的なトヨタ車の中で異彩を放つ存在として比較的若い感性を持つユーザー向けに人気となり、カスタムカー需要も長く続いていきました。

 

初代 トヨタ クレスタ  / © 1998-2018 TOYOTA MOTOR CORPORATION.

 

 

ビスタ店誕生

 

開業当初のトヨタビスタ店。手前がブリザードでその奥がクレスタ。 /  出典:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/text/leaping_forward_as_a_global_corporation/chapter2/section1/item4.html

 

1970年代前半、厳しい排ガス規制やオイルショックによるガソリン価格高騰という『逆風』にさらされた日本の自動車業界でしたが、1970年代末には環境性能、経済性を高めつつかつての動力性能を取り戻すメドがついてきていました。

もっとも、その逆風をどう乗り切ったかについてはメーカーごとに差異がありますが、損失を最小限に抑えつつレースなど高性能車向けの開発資源を市販車向けに振ったトヨタは、国内シェアNo.1の座を不動のものとしていったのです。

とはいえトヨタ自体も、そして何より販売店(ディーラー)の経営も厳しい中ではありましたが、さらなる販売体制増強のために、それまでの4チャンネル体制(トヨタ店・トヨペット店・トヨタカローラ店・トヨタオート店)に次ぐ第5の販売チャンネルを立ち上げます。

こうして1980年4月、5番目を表す『V(ファイブ)』、トヨタの勝利を表す『V(Victoryの頭文字)』を頭文字とした『ビスタ(Vista)店』が誕生。

訪問販売からショールーム販売への転換し、日曜営業の開始などトヨタディーラーでも実験的性格を担いました。

また、車種もそれに合わせた『保守的なトヨタとしては斬新』なラインナップを狙い、ダイハツの小型クロカン車 タフトのトヨタOEM版ブリザードとともに、ビスタ店専売車種として登場したのがクレスタです。

 

元祖ハイソカーの1台

 

初代 トヨタ クレスタ  / 出典:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/vehicle_lineage/car/id60006067/

 

初代クレスタは『マークII3兄弟』の、マークII(トヨペット店扱い・1968年登場)、チェイサー(トヨタオート店扱い、1977年登場)に続く末っ子として登場しました。

兄貴分は1980年10月にX60系としてモデルチェンジしますが、クレスタはそれに先立つ同年4月にX50系として登場し、4ドアセダンと4ドアハードトップをラインナップしたX60系に対し、デザイン違いの4ドアハードトップ1本槍で勝負します。

そして、後のマイナーチェンジでクレスタもX60系に統一されますが、兄貴分よりやや高級かつ若々しいデザインが与えられていたクレスタは『新世代の個人向け高級乗用車』の代表として人気を獲得。

このジャンルは後々ハイソサエティカー(上流階級向け高級車を指す和製英語)を略した『ハイソカー』と呼ばれるようになりますが、その人気をソアラと共に牽引したのが初代クレスタでした。

 

初代から伝統の『スーパールーセント』などクレスタ独自の魅力

 

後期型に追加されたスーパールーセント・ツインカム24 /  出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Toyota_Cresta

 

兄貴分のマークIIは保守的で『クラウンの前に買う高級車』、チェイサーはそれより若々しい『マークIIのスポーティバージョン』的な位置づけだったのに対し、初代クレスタは『新しい高級イメージ』を売りにしており、兄弟達に先立つ4ドアハードトップ車でのデビューや、最上級グレード『スーパールーセント』でイメージカラーとなった2トーンカラーが代表的。

ボディ前後のデザインなど、フロントのドアパネルを除けば兄弟達とは外装も大きく異なったのです。

後に兄弟車にも採用されて当たり前とはなりましたが、軽量コンパクトで防振・低騒音でスムーズに吹け上がる『レーザー』シリーズエンジン、1G-EUの採用も先行して行われ、わずか数ヶ月違いとはいえ「新しきはまずクレスタから。」という雰囲気がありました。

デザインやコンセプトは最後の5代目まで兄弟車よりやや高級というイメージを貫きますが、その始まりが初代クレスタで、それゆえVIPカーや『ちょっと特殊なカスタムカー』需要でもクレスタの人気は高く、マークIIやチェイサーよりやや格上に見られています。

 

主要スペックと中古車相場

 

初代トヨタ クレスタ スーパールーセント  / 出典:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/text/leaping_forward_as_a_global_corporation/chapter2/section1/item2.html

 

トヨタ GX51 クレスタ スーパールーセント 1980年式

全長×全幅×全高(mm):4,640×1,690×1,395

ホイールベース(mm):2,650

車両重量(kg):1,205

エンジン仕様・型式:1G-EU 水冷直列6気筒SOHC12バルブ

総排気量(cc):1,988

最高出力:125ps/5,400rpm(グロス値)

最大トルク:17.5kgm/4,400rpm(同上)

トランスミッション:4AT

駆動方式:FR

中古車相場:55万~219万円(各型含む)

 

まとめ

 

最初のマークII登場以来コンセプトがコロコロ変わって安定しなかったマークII3兄弟ですが、この初代クレスタがハイソカーブームを牽引したことにより、ようやく安定を見ることになります。

同時期のマークII / チェイサーもクレスタに近いデザインをしていたとはいえ4ドアセダンはまだまだ保守的でしたが、クレスタ人気で主流となった4ドアハードトップがその後の3兄弟、そして現在のマークXまでに至る路線を決定づけました。

特に比較的若くて新しさを好むユーザー層がこの種の高級乗用車に乗るようになったのは初代クレスタの影響が大きく、安っぽく見られないためにこだわった高級感により、同クラス乗用車でマークII3兄弟が圧倒的なシェアを誇るようになっていきます。

そうした栄光あってか、現在でも中古車市場ではタマ数こそ少ないものの比較的高値で売買されており、特に2トーンカラーのスーパールーセントは1980年代日本車ファンなら素通りできない1台です。

 

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