C-HRでようやくコンパクトSUVの大ヒット作を得たトヨタですが、それ以前に販売していたのはダイハツからOEM供給を受けたラッシュでした。ラッシュはトヨタが求めたC-HRのようなクロスオーバーSUVでは無かったものの、『視点が高くて気持ちいいコンパクトカー!』という絶妙なCMで10年もの間販売されたラッシュは、本格的な悪路走破力を備えたSUVでもあったのです。

 

トヨタ ラッシュ  / Photo by James Willamor

 

キャミに続くダイハツOEMコンパクトSUV第2弾

 

トヨタ ラッシュ 出典:https://www.favcars.com/photos-toyota-rush-2006-08-111123-800×600.htm

 

かつて2代にわたり販売されたブリザード、1999年から販売されたキャミと、トヨタは小型SUVの供給をダイハツに頼っていましたが、2006年1月にキャミ後継として発売されたラッシュもまた、ダイハツ ビーゴのOEM供給版でした。

しかし軽自動車版『テリオスキッド』をベース(発売自体はテリオスより後)に持つキャミとは異なり、インドネシアのアストラダイハツ(1992年設立)で生産していた最低地上高の高い3列シートFRミニバン、ダイハツ セニアをベースとしており、軽自動車版はありません。

セニアにトヨタ版『アヴァンザ』の1.5リッターエンジンを搭載し、キャミ(テリオス)同様のセンターデフロック機構つきフルタイム4WDやビルトインフレーム式モノコックボディが組み合わせられていました。

また、サスペンションはフロントがストラット+コイルスプリング、リアが5リンクリジッド+コイルスプリングで強靭とも快適性や操縦性重視とも言えませんでしたが、構造は単純で低コスト。

日本ではショートホイールベースの2列シート5人乗り仕様コンパクトSUV扱いでしたが、本家ビーゴともども東南アジアを中心とした海外仕様にはロングホイールベースの3列シート7人乗り仕様も存在します。

そのためクロスオーバーSUVより優れた悪路走破性と、3ドアの小型本格オフローダーより使い勝手が良く低コストなのが特徴的で、日本仕様にも4WD車には5速MT車を設定。

センターデフロックや高い最低地上高を駆使すれば、『いざという時には頼れる奴』でした。

 

『視点が高くて気持ちいいコンパクトカー』という宣伝で正解だったラッシュ

 

ラッシュの宣伝は、基本性能とはかなりかけ離れている上に、SUVとしての紹介は全くされない独特な宣伝方法がとられました。

代表的なのは哀川翔やお笑い芸人を起用したTVCMで、乗った瞬間に奇声を上げて驚くほど視点が高い、つまり着座位置が高く周りがよく見えるコンパクトカーとして宣伝されたのです。

そんな、「乗ればわかる、視点が高くて気持ちいい!見晴らしのいいコンパクト、ラッシュ!」という紹介は間違ってはいませんでしたが、SUVとしての紹介は一切無し。

CMだけ見ると単に高価なコンパクトカーにしか見えませんが、『乗れば叫ぶほど驚く。』というキーワードで、とにかく販売店に足を運んでもらい、細かい説明はそこで行おうという意図があったのかもしれません。

あまりに複雑でCMで納得させるには機能が多すぎるモデルが増える中、先代のキャミで起用されたダンシングベイビー同様、CM出演者やキャラクターのノリでとにかく人目を引く戦略でしたが、CMで一言もSUVとして紹介がないのはやや寂しさを感じます。

もっとも、本格的に悪路走破性の高い5ドアSUVを必要とするユーザーには、CMの内容だけでも十分だったようで、雪国を中心にラッシュは見かける機会が多い車でもありました。

そう考えるとラッシュのCMは決して勢いだけのものではなく、SUVに関心の無いユーザーへのアピールが目的だったと言えるのではないでしょうか。

 

主なスペックと中古車相場

トヨタ ラッシュ / 出典:https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/vehicle_lineage/car/id60012600/

 

トヨタ J210E ラッシュ 4WD G 2006年式

全長×全幅×全高(mm):3,995×1,695×1,705

ホイールベース(mm):2,580

車両重量(kg):1,180

エンジン仕様・型式:3SZ-VE 水冷直列4気筒DOHC16バルブ

総排気量(cc):1,495

最高出力:80kw(109ps)/6,000rpm

最大トルク:141N・m(14.4kgm)/4,400rpm

トランスミッション:5MT

駆動方式:4WD

中古車相場:37.9万~220.5万円

 

まとめ

 

トヨタ ラッシュ / Photo by Jason Thien

 

C-HRを後継として大ヒットさせた一方、それに先立つ数ヶ月前には日本国内でラッシュの販売を終了してしまったトヨタですが、そのため一部ユーザーにとっては少々困った事となりました。

ソコソコでも良いのでクロスオーバーSUV以上の悪路走破性があり、3ドアのジムニーやジムニーシエラには無い5ドアのコンパクトSUVには、数はそう多くないながらも根強い需要があったのです。

しかしトヨタが販売をやめると単体での販売には難があるのか、ダイハツも本家ビーゴの国内販売を終了。

軽5ドアSUV『テリオスキッド』も2012年で販売を終了していまったので、5ドアコンパクトSUVを求めるユーザーは行き場を無くす事に。

そのためダイハツディーラーなどへ後継車販売を求めるユーザーの声も度々聞かれましたが、2017年にモデルチェンジを果たした2代目ラッシュ/3代目ダイハツ テリオス(海外ではテリオス名で継続していた)は3列シート7人乗りのロングボディのみ。

できればショートボディ版、無理ならロングボディのままでも日本での販売を再開して欲しいという声は意外に多いようで、最近出てきたスズキが新型ジムニーの5ドア版(おそらくシエラ)を発売するという噂には、ラッシュ/ビーゴの販売終了で困っているユーザーのスキマ市場という根拠があるのです。

 

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