後にBMWへ電撃買収されてしまいますが、1980年代のホンダは英ローバー社と技術提携を通じた深い関係があり、買収間近とさえ言われていた時期がありました。その頃に両者で共同開発された小型セダン『コンチェルト』は、単なるEFシビックセダンの兄弟車かと思いきや、なかなか味わい深いヨーロピアン調の車だったのです。
ヨーロッパの香り伝わる4/5ドアセダン、コンチェルト
1972年に発売した初代シビックに生産資源のほとんどを集中するという大博打に成功し、アコードやプレリュードなど順調に車種ラインナップを増やしていったホンダ。
1978年設立のプリモ店、1985年のクリオ店とベルノ店の設立で販売網も3チャネル化。
同クラスながらバッジエンジニアリングにとどまらない、性格の違う車種の販売も可能になったため、シビックやアコードと同クラス、あるいはその中間的車種が誕生していきます。
そして1980年代前半までで代表的だったのがベルノ店のバラードやクイントでしたが、設立後しばらくプリモ店とクリオ店で併売されていたシビックがプリモ店専売となり、その後継車種的なポジションで1988年6月に発売されたのが、コンチェルトでした。
基本的には4代目EFシビック(1987年9月登場)をベースに、当時技術提携していた英ローバー車と共同開発した独立トランク付き4ドアノッチバックセダン / テールゲート付き5ドアハッチバックセダンで、日本仕様と欧州仕様ではサスペンションなどが異なり、欧州仕様はローバーの姉妹車とともにイギリスでローバーの工場が生産しています。
また、登場時期や当時のクリオ店車種ラインナップ内ではシビックセダンの後継に当たりますが、車格はシビックとアコードの中間と位置づけられ、1.3リッターの廉価グレードが存在しないなど、シビックより若干高級という路線は後のドマーニまで受け継がれました。
ゆとりあるキャビンに5ドアボディ、先行採用されたイントラックなど特徴的
コンチェルトは一見すると角ばったスタイルやサイズ感からEFシビック4ドアセダンの前後デザインを変えた程度にも見えますが、ルーフを高めてヘッドスペースを稼ぎ、後席ドアの後ろにリアクォーターウィンドウを設けた6ライト構成で採光性も良好。
つまり内装の質感や居住性の高さが『シビックより少々車格が上』である根拠で、シビックと異なりマイナーチェンジ後までDOHC版のZCエンジンは搭載されず、DOHC VTECのB16Aに至っては最後まで搭載されなかったあたりに、性格の違いも現れています。
また、当時の日本ではまだあまり受け入れられなかった5ドアセダンのラインナップも、日本車離れした雰囲気を感じさせるのに一役買っていました。
また、コンチェルトで初装備となったのが『INTRAC(イントラック)』と呼ばれた4WDシステムで、簡単に言えば通常の4WD車でリアデフに当たる部分にVCU(ビスカスカップリングユニット)を左右2個配置し、左右後輪への駆動力配分とデフに代わって差動制限まで行います。
ちなみにイントラックが採用されたのは上級グレードのみで、他は通常のセンターVCU式リアルタイム4WDが採用されていましたが、当時ホンダでは『A.L.B(アンチロックブレーキ)』と呼んでいたABSとスタンバイ4WDを両立できる画期的なメカニズムでした。
残念ながらコストや重量面から後に廃れたものの、イントラックは後にシビックなどにも採用され、さらにシビックセダン4WD同様のスーパーロー付き5速MT(通常の5速ギアと別に、スーパーローがあった)など、コンチェルトの4WDは、その姿とは裏腹になかなか本格的でした。
主なスペックと中古車相場
ホンダ MA3 コンチェルト 4ドアセダン JX-i 4WD 1989年式
全長×全幅×全高(mm):4,415×1,690×1,415
ホイールベース(mm):2,550
車両重量(kg):1,140
エンジン仕様・型式:ZC 水冷直列4気筒SOHC16バルブ
総排気量(cc):1,590
最高出力:88kw(120ps)/6,300rpm
最大トルク:142N・m(14.5kgm)/5,500rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:4WD
中古車相場:78万円(ほぼ皆無)
まとめ
コンチェルトは後継の初代ドマーニ同様、シビックセダンと似ていながらも、スポーツ性よりは快適性、居住性、質感といった面でヨーロッパ風テイストを売りとする、ちょっと毛色の違った車でした。
知名度ではシビックやアコードほどでは無かったものの、後の『プレミアムコンパクト』を先取りしたようなコンセプトは一度乗ればなかなか好感が持てたもので、国産車の中では少し時代の先を行っていた1台です。
惜しむらくは、当時バブル景気の日本ではロールーフの4ドアハードトップ全盛期だったので、コンチェルトはいわば流行を外していましたが意外と街ではよく見かけ、流行に流されない実直なユーザーに好まれた1台かもしれません。
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