2018年12月に3代目がミドルクラス ハイブリッドセダンとして登場し、話題のホンダ インサイト。2代目以降はトヨタ プリウス対抗馬の4ドアセダンになりましたが一貫してハイブリッド専用モデルで、初代はホンダ初のハイブリッド車。ただしアルミボディの超軽量小型2シーターハッチバッククーペという、実用性よりカタログ燃費一辺倒の燃費スペシャルモデルで、燃費のための軽量化技術が結果的に走りの良さにもつながっていました。

 

初代ホンダ インサイト  / 出典:https://www.favcars.com/honda-insight-ze1-1999-2006-images-118965-800×600.htm

 

ロゴベースのハイテクハイブリッドカーから現実的な燃費スペシャルへ

 

初代ホンダ インサイトの原型、コンセプトカー『J-VX』 /  出典:http://www.allcarindex.com/auto-car-model/Japan-Honda-J-VX/

 

初代インサイトは元々、シンプルなベーシックカー『ロゴ』(1996年発売)をベースに派生モデル展開と21世紀の新たなマイカー像の提案を狙った『J・ムーバー』の1台、『J-VX』として東京モーターショー1997でデビューしました。

その時点で軽量ボディの3ドアハッチバッククーペにホンダ独自のハイブリッドシステム『IMA』(Honda Integrated Motor Assist System)を、これもホンダ独自のCVT(無段変速機)『マルチマチック』と組み合わせるなど、後の初代インサイトとの共通点があります。

ただしIMAへバッテリー代わりに組み込まれたウルトラ キャパシタ(電気二重層キャパシタ)やガラスルーフ、2+2シートなど、コンセプト止まりで終わった装備もありました。

 

初代ホンダ インサイト / © Honda Motor Co., Ltd. and its subsidiaries and affiliates. All Rights Reserved.

 

実際の初代インサイトは1999年11月に発売されました。

ロゴとは異なり初代NSXで経験を積んだ軽量アルミモノコックボディを新造し、各部をアルミや樹脂など軽量素材で徹底的に軽量化。

ホイールベースは40mm延長されたものの2+2シートはやめて2シーターのハッチバッククーペ化し、空気抵抗低減も徹底。

CVTのみならず5速MTも選択可能な燃費スペシャル車になっていました。

おかげでデビュー時、10・15モード燃費35.0km/リッター、2004年10月のマイナーチェンジで36.0km/リッターを記録し、当時はまだ数少なかったハイブリッドカーのライバル、トヨタ プリウスの初代(28.0~31.0km/リッター)、2代目(35.5km/リッター)を上回ります。

とはいえ5人乗り4ドアセダンのプリウスに対して実用性は著しく劣りましたが、少なくとも『ハイブリッドカーを作れるのはトヨタだけじゃない』というアピールには役立ち、初代シビックハイブリッド(2001年)などIMA搭載ハイブリッド車へと繋げていきました。

 

徹底した軽量化とカタログ燃費No.1への意地

 

初代ホンダ インサイト  / © Honda Motor Co., Ltd. and its subsidiaries and affiliates. All Rights Reserved.

 

ホンダ『IMA』ハイブリッドシステムは、モーターのみのEV走行も可能なトヨタ『THS』とは異なり、あくまでエンジン主体でモーターアシストを行うだけで、現在のマイルドハイブリッドに近いものでした。

それゆえモーターアシスト以外のエンジン自体の高効率化と軽量化、空気抵抗低減を徹底的に詰める事が必要で、J-VXに搭載していた充放電が早く大出力なウルトラ キャパシタがコスト面の問題からニッケル水素バッテリーの採用に切り替わった分の巻き返しも必須。

 

初代ホンダ インサイト / Photo by Owen Mathias

 

2+2シートやガラスルーフを断念し、ブレーキキャリパーやロアアームに至るまでアルミ化して軽量化。

リヤタイヤはスパッツで覆い空気抵抗を軽減するなどの涙ぐましい努力に加え、5速MTまで採用して10・15モード燃費35.0km/リッターを達成しました(CVTでは32.0km/リッター)。

おかげでライバルの初代プリウスが改良を加えても、31.0km/リッターに留まったので当時のカタログ燃費No.1の座を保持。

トヨタが2003年9月に2代目プリウスを発売すると、35.5km/リッターを記録したため一時No.1の座を譲りますが、2004年10月のマイナーチェンジで36.0km/リッターと巻き返しています。

しかし、この頃から『とにかくライバルに対して0.1km/リッターでもカタログ燃費を良くして燃費No.1をアピールする』という国産車メーカーの争いが始まり、2016年には三菱自動車燃費偽装事件などの不祥事も出てきています。

 

初代ホンダ インサイト  / © Honda Motor Co., Ltd. and its subsidiaries and affiliates. All Rights Reserved.

 

なお、初代インサイトではカタログ燃費もさることながら、かつてのCR-Xと似たスタイルや、1リッターSOHC VTECエンジンECAが持つ素性の良さに加えてモーターアシストでリッターカーとしてはかなりパワフルな動力性能から走りの面で人気が出ます。

そして軽量化の恩恵でバネ下重量も軽いため、フットワークは軽快。

5速MTを駆使する楽しみもあって『これはエコカーというよりスポーツカーだ!』と激賞されました。

 

初代ホンダ インサイト  / Photo by Owen Mathias

 

しかし、トランクルームはバッテリーを積んだため底が浅くて容量不足。

床面が高い割に仕切りが低いため、ブレーキをかけると後方から荷物が転げ落ちてくる(オプションのラゲッジネットは必須)というラゲッジスペース(荷室)は、2シータースポーツにしても、あまりにも実用性不足。

実用面では通勤など短距離用のコミューター的なものに留まり、JAF競技車両登録も無かったのでモータースポーツの公認メジャーイベントにも出場不可でしたが、あくまで燃費スペシャルのハイブリッドカー販売実証車と割り切って作られていた感がありました。

 

主なスペックと中古車相場

 

初代ホンダ インサイト  / © Honda Motor Co., Ltd. and its subsidiaries and affiliates. All Rights Reserved.

ホンダ ZE1 インサイト 1999年式

 

全長×全幅×全高(mm):3,940×1,695×1,355

ホイールベース(mm):2,400

車両重量(kg):820

原動機型式:ECA-MF2

エンジン仕様・型式:ECA 水冷直列3気筒SOHC12バルブ VTEC

総排気量(cc):995

最高出力:51kw(70ps)/5,700rpm

最大トルク:92N・m(9.4kgm)/4,800rpm

モーター仕様・型式:MF2 交流同期電動機

最高出力:10.0kw(14ps)

最大トルク:49N・m(5.0kgm)

バッテリー形式:ニッケル水素電池20個直列

バッテリー容量:3時間放電率6.5Ah

トランスミッション:5MT

駆動方式:FF

中古車相場:19.9万~99.8万円

 

まとめ

 

初代ホンダ インサイト  / Photo by Michael Pereckas

 

初代インサイトは市販にこぎつけたとはいえ『実験車』あるいは『実証車』としての性格が強く、自動車としての完成度はお世辞にも高いとは言えません。

しかし、初代インサイトで能力が実証されたIMAは、その後シビックハイブリッドやフィットハイブリッド、2代目インサイトといった『実用車』で活き、スポーツハイブリッドとしての資質はCR-Zに受け継がれています。

そして何より『ハイブリッドカーはトヨタしか作れないわけじゃない!』とホンダが名乗りを上げた効果はてきめんで、トヨタはTHSシリーズのハイブリッドシステムを熟成していき、高効率な内燃機関で低燃費を狙うメーカーも続出。

国産エコカーの発展を加速させる、重要な役割を担ったと言えるかもしれません。

 

Motorzではメールマガジンを配信しています。

編集部の裏話が聞けたり、最新の自動車パーツ情報が入手できるかも!?

配信を希望する方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みください!