日夜世界中の自動車メーカーが通いつめ、走行性能向上のため走り込んでテストを重ねる屈指の難関コース、ニュルブルクリンクサーキット北コース。市販車の性能アピールや自動車メーカーの技術をアピールするために、周回タイムの世界記録を狙うアタックも果敢に行われています。そこで今回は、ニュルで生み出されたジャンルごとの世界記録をいくつかまとめてみました。

 

ニュルブルクリンクサーキット  / © 2010 – 2017 Nürburgring 1927 GmbH & Co. KG

 

FF最速:ホンダFK8シビックタイプR

 

ホンダ FK8 シビックタイプR  / © Honda Motor Co., Ltd. and its subsidiaries and affiliates. All Rights Reserved.

 

まずは読者の皆さんに馴染みの深い、国産FFスポーツから。

ニュルブルクリンクのFF量産市販車の最速記録は、2017年4月に記録された『ホンダ・シビックタイプR(FK8)』による7分43秒8(計測距離20,600m)です。

このジャンルはここ数年、シビックタイプRとドイツのフォルクスワーゲン ゴルフGTI、フランスのルノー メガーヌR.S.が世界最速FFの座を争って三つ巴の日独仏決戦が繰り広げられています(FK8の生産国はイギリスですが)。

現在のタイトルホルダーこそシビックRで落ち着いているものの、メガーヌR.S.は2018年にモデルチェンジし、ゴルフも最新のゴルフVIIIが2019年に登場するようなので、これからまた熱い記録争いが始まるのかもしれません。

 

SUV最速:メルセデスAMG GLC63S

 

メルセデスAMG GLC63S  / ©Mercedes-Benz Japan. All rights reserved.

 

本格オフローダーを除けばすっかり街中を普通に走るのが当たり前になったSUVですが、そうなれば日常域から高速域までオンロードでの走行性能が大きくモノを言うもので、今やSUVといえどもニュルで走りを鍛えるのが当たり前となっています。

しかもスーパーカーメーカーも続々とSUVカテゴリーへ参入しているので、『SUV世界最速アタック』が行われるのは当たり前。

これまで、2017年9月にアルファロメオ ステルヴィオが記録した7分51秒7が最速とされてきましたが、2018年11月に7分49秒369を記録して打ち破ったのは、メルセデスAMGのGLC63S。

Cクラス相当のクロスオーバーSUVにAMGの聖地アファルターバッハの職人が1台1台手組みしたAMG特製4リッターV8ツインターボでかっ飛ぶのですから、直線が速いのは当たり前です。

しかし『グリーン・ヘル(緑の地獄)』の異名をとる難コースのニュルは直線番長でタイムが出るほど甘くはなく、腰高のSUVで世界最速を目指すのはかなりの難事でしょう。

並み居るスーパーカーメーカーがこのアタックを見て黙っているのか、SUVは世界でもっとも熱いジャンルだけに今後が注目されます。

 

量産EV最速:メルセデスSLS AMGクーペ・エレクトリック・ドライブ

 

メルセデスSLS AMGクーペ・エレクトリック・ドライブ  / © 2012 Mercedes-AMG. All rights reserved.

 

2010年頃から市販車が続々と登場した割に「ニュルで鍛えました!」的な話をあまり聞かないEV(電気自動車)ですが、どうやら2013年6月に7分56秒234を記録した『メルセデスSLS AMGクーペ エレクトリック ドライブ』が、2019年1月現在でも量産EV最速のようです。

2013年に41万6,500ユーロ(約5,330万円)で発売された同車は、日本ではあまり馴染みがありませんが、メルセデスAMGのスーパーカーSLS AMGをベースにEV化したもので、最高出力は実に552kw(約750ps)のAWD車。

インホイール式ではないものの各タイヤごとに1個のモーターがあり、状況に応じた駆動力配分をそれぞれのモーターが独自にコントロール。

デフなどを持たない代わりに、そのスペースはバッテリーで埋められ、最高時速は250km/h、最大航続距離も250kmと、その性能自体はスゴイのですがいかにも用途がなさそうです。

実際話題先行で『量産』というほどのセールスはなかったようですが、EV技術の高さをアピールするのには大いに役立ちました。

 

世界最速EVはチャイニーズパワー!NIO EP9

 

NIO EP9  / © NIO 2019 PRIVACY & LEGAL

 

EV普及に熱心で、ついにトヨタすら動かした大市場を抱える中国ですが、もちろんEVやPHEV(プラグインハイブリッド車)、それらのためのバッテリー開発にも注力しています。

大衆車ではBYD(比亜迪汽車)などが有名どころですが、『中国版テスラ』とも呼ばれる高級セダンやSUVのEVへ特化して上昇気流に乗っているのがNIO(上海蔚来汽車)です。

なかでも技術力をアピールするために開発されたEVスーパーカー『EP9』は、4輪独立モーターと大容量バッテリーを除けば軽量化を徹底した記録用マシンで、市販車ではありません。

しかし同車は2017年3月、EV世界最速どころか記録時には純レーシングカーを除く世界最速タイム6分45秒90(計測距離20,832m)を達成。

「ついに中国製EVが世界最速の座についた!」と、世界を驚かせました。

ちなみにNIOはEVレースの最高峰『フォーミュラE』にも参戦しており、今やEVに特化して新たに生まれた自動車メーカーの中では世界最先端のテクノロジーを持つ一社です。

 

総合最速:ポルシェ919ハイブリッドEVO

 

ポルシェ919ハイブリッドEVO  / © 2019 Porsche Japan KK

 

ここまで細かくジャンル別に見ていきましたが「結局イチバン速いクルマは何なのさ?」と気になるところ。

ニュル最速の座は長らくグループCレーシングカーの『ポルシェ956』が持っていたのですが、『最高のポルシェは最新のポルシェ』を地で行くがごとく、ル・マン24時間レースでの使命を終えた『ポルシェ919ハイブリッドEVO』がその記録を塗り替えました。

レースの規則に縛られ、本来持っているポテンシャルを完全に生かしきれていなかった鬱憤を晴らすがごとくアタックし、2018年6月に5分10秒546(計測距離20,832m)を達成!

ポルシェ956の記録が1983年5月に達成した6分11秒13だったので、実に35年ぶりにポルシェ自身の手で1分近くも最速記録を縮めてみせるという、驚異的な速さでした。

 

まとめ

 

ニュルブルクリンク北コースの記録を見ると、各ジャンルでは思わぬ車が記録を持っていたりしますが、さすがに総合最高速となるとしっかりした役者がキッチリ役目を果たして王座をかっさらうという印象です。

他にも細かく分ければ4ドアサルーン最速、ディーゼル最速など数多くの記録があり、また日々タイムアタックが続けられているので、明日にはまた新しい記録が生まれているかもしれません。

ニュルブルクリンク24時間レースの舞台としても毎年注目される『ニュル』は、今後も各国の自動車メーカーが制覇せねばならない難コースとして、新記録を待つ人々を楽しませることでしょう。

 

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