電気自動車や自動運転の話題がメディアを賑わせている昨今ですが、レシプロエンジンでありながらハイブリッド車に匹敵する、驚異の燃費を叩き出したエンジンがあることをご存知ですか?マツダはかつて血の滲むような思いをして作り上げたロータリーエンジンから、ひたむきに内燃機関に向き合い、ひたすら燃費を改善した結果、DE型デミオで30km/リッターの数値を記録。その技術力を現代に示したのが、ご存知『SKYACTIV』シリーズです。

 

MAZDA 2(欧州仕様)©︎MAZDA

 

SKYACTIVって何?

ディーゼルとガソリンの良い部分を組み合わせた理想のエンジン開発をマツダは続けています。 / ©︎MAZDA

 

2010年にマツダの次世代技術として発表された、燃費改善に関する一連の技術のことを『SKYACTIV TECHNOLOGY』と総称します。

その領域はエンジンのみに止まらず、トランスミッションやボディ、シャシーにまで及び、クルマ全体で燃費向上に取り組むマツダの苦労と努力の結晶としてSKYACTIVは生まれました。

ガソリンエンジン:SKYACTIV-G

ディーゼルエンジン:SKYACTIV-D

オートマチックトランスミッション:SKYACTIV-DRIVE

マニュアルトランスミッション:SKYACTIV-MT

ボディ:SKYACTIV-BODY

シャシー:SKYACTIV-CHASSIS

SKYACTIVの取り組みはエンジンだけではなく、ボディやシャシーの軽量化も含まれる。 / ©︎MAZDA

このSKYACTIVが革新的である理由のひとつに、主要コンポーネントの設計時期を統一した点が挙げられます。

従来の自動車開発ではエンジンやトランスミッション、プラットフォームといった主要なコンポーネントは設計時期が異なり、バラバラのタイミングで開発されてきました。

しかし、スカイアクティブテクノロジーは自動車を構成する要素技術を包括的かつ同時に刷新することで、製作誤差による性能の個体差を極小化。

カタログ通りのスペックを全数保証するというポリシーを貫いており、マツダの矜持と言っても過言ではありません。

このような取り組みをデミオのような価格帯の製品から行うことは、費用対効果を考えても異例なこと。

それだけマツダが燃費に対して本気である事を、理解していただけたと思います。

 

エンジンに命を賭ける

マツダが追い求め続けてきたガソリンエンジンとディーゼルエンジンの良いところを掛け合わせた理想のエンジン。それが『SKYACTIV-X」です。

通常のガソリンエンジンはスパークプラグによる火花で着火し、ディーゼルエンジンは圧縮により着火していますが、新たにガソリンエンジンで圧着着火を制御する独自技術『SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)』の開発に成功。

2019年に北米で発売開始されるMazda 3(アクセラ)より順次採用されることが決定しており、SPCCIが走行性能にどのような影響を与えるのか、注目が集まっています。

 

伝説の名機 P3-VPS

©︎MAZDA

 

これまでのSKYACTIVの歴史の中で、絶対に振り返っておきたい名エンジンがSKYACTIV-Gの第一弾として先代デミオ後期型に搭載された、P3-VPSです。

吸排気にVVTを備え吸気側は電動式クールドEGRを用いて筒内酸素濃度を抑え、燃焼温度を下げることでノッキングを回避。

圧縮比14.0を実現するという、トピックに溢れるエンジンでした。

しかしデミオのモデルチェンジにともなって大幅な見直しが行われ、VVTは吸気側が油圧となり、排気側のVVTは廃止。

高性能版ともいえるディーゼル仕様をラインナップするために、ガソリン仕様は徹底的なコストダウンが図られて、圧縮比は12.0に下げられましたが、それでも高いことに変わりありません。

JC08モード燃費も25.0km/リッターから24.6km/リッターに低下していますが、先代はCVTとの組み合わせだったためにカタログ燃費を狙いやすかった一面もありました。

しかし現行のDJ型では6速ATもしくは6速MTとの組み合わせのため、低速トルク重視に振って実用燃費の向上を図っています。

P3-VPS “SKYACTIV-G 1.3”

 

直列4気筒 1298cc エンジン
内径×行程:71.0mm×82.0mm
圧縮比:12.0
最高出力:68kW/6000rpm
最大トルク:121Nm/4000rpm
給気方式:NA
カム配置:DOHC
ブロック材:アルミ合金

 

まとめ

 

MAZDA 3(アクセラ)/ ©︎MAZDA

 

かつてオイルショックの波に揉まれ、マツダは大黒柱とも言えるロータリーエンジンの火種を一時的に鎮めざるを得なくなりました。

しかし、エンジニアたちは決して諦めることなく、ロータリーエンジンの燃費を改良し続け、コスモAPで再びロータリーエンジンは再点火。

残念ながら現在、ロータリーエンジンはマツダのラインナップに加わってこそいませんが、EVやハイブリッド技術に頼らず、純粋にエンジンの性能を見直して同等のパフォーマンスを発揮させているところに、マツダのエンジンに対する並々ならぬこだわりを感じずにはいられません。

近年そのデザイン性が評価され、人気が高まっているマツダ車ですが、クルマとしての基本的な性能にも目を向けると、決して見掛け倒しではなく”才色兼備”な1台であることがよくわかると思います。

Motorzではメールマガジンを配信しています。

編集部の裏話が聞けたり、最新の自動車パーツ情報が入手できるかも!?

配信を希望する方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みください!