車のメーター内にあるエンジン警告灯が点灯すると、それは何らかの故障の合図ですが、故障箇所を特定するにはOBD2と呼ばれる自己診断機能を使用します。実は現在ほとんどの車にOBD2が搭載されており、車の故障箇所を特定できるハイテク機能が備わっているのです。
メーターの警告灯は自己診断機能接続の合図
現代のクルマは、いたるところにコンピュータ(ECU)が搭載されており、車の挙動や予防安全技術に役立っています。
また、クルマのECU制御は、運転時の補助的要素だけでなく、故障したときにも有効な役割を担っています。
それは、メーターのエンジン警告灯が点灯した時。
我々ドライバーは、どこかの調子が悪いことはわかりますが、いったいどこが悪いのか、判別は不可能です。
しかし、整備工場やディーラーに修理を依頼すると、「コンピュータでデータを見てみると、◯◯◯が故障しているようです。」と整備士の方が伝えてくれます。
これはクルマとスキャンツールを接続し、搭載されるOBD2と呼ばれる自己診断機能を介してクルマの故障部分を読み取ることができ、整備士はその情報を元に整備を行っているからです。
実は、かなり前から自己診断機能の搭載は義務化されており、クルマをECUで制御・監視して故障箇所を特定する技術は、現在販売されている全てのクルマに装着されています。
OBD2とは
OBD(On-board diagnostics)が最初に搭載されたのは、1968年にフォルクスワーゲンがECUを従来のアナログコンピュータからマイクロコンピュータに変更したことが始まり。
国産車では日産が1970年に簡単な自己診断機能をもたせたECUを初めて採用しました。
それからGMを筆頭に自動車メーカー各社が独自のOBDを開発していきますが、メーカーごとの専用設計だったため、整備する側はメーカー専用の診断機を保有していなくてはならず、診断方法も違っていました。
そこで、全メーカー共通の規格に統一した『OBD2』が制定され、1996年にアメリカ国内で販売されるクルマ全てに搭載が義務化されました。
遅れて2001年には欧州自動車メーカーで、日本では2006年に、2008年10月以降に生産された日本車へのOBD2の搭載が義務化され、OBD2が一気に普及していきます。
そして今では、世界中のメーカーの枠を超え、『DLC(Data link coupler)』と呼ばれるコネクタ形状(台形16ピン)および最低限必要となる信号線を統一させたコネクタ上のピン配置が定められ、『DTC(Diagnostic Trouble Code)』と呼ばれる共通の故障コードを使って故障の内容を特定できる機能を実現させました。
OBD2による故障コードの見方は?
OBD2の開発は、DTCの記録条件や警告灯の点灯条件などを原則、自動車メーカーが設定しますが、保安基準の点灯条件として規定されている『法定警告灯』は、必ず組み込まなくてはなりません。
また、OBD2は常時クルマを監視しており、異常を検知した際はDTCを記録。
メーターパネルのエンジン警告灯が点灯します。
そして、エンジン警告灯が点灯していることを確認したドライバーは、クルマを整備工場に持っていき、整備士はスキャンツールを用いてDTCを調べ、故障箇所を特定するのです。
DTCの見方
DTCは国際標準規格(ISO15031-6)、米国自動車技術会(SAE J2012)等において規格化され、法規により共通定義されているものと、自動車メーカーが自由に定義しているものがあります。
そんなDTCの例として、『P0131』を解析してみましょう。
最初のアルファベットは、”B”、”C”、”P”、”U”のいずれか。
右から2桁の数字は、ISO/SAEで定められたコードか自動車メーカーが定めたコードを表します。
ちなみに、ここが”0″となっているは、ISO/SAEで定められたコードです。
そして右から3桁の数字は『故障の大区分』、4桁5桁の数は『故障の詳細』を表し、0~9およびA~Fまでの16進数が表記されます。
また、それぞれの内容は以下のようになります。
表記 | 内容 | ||
---|---|---|---|
左から1桁目 | B,C,P,U | B:ボデー系(エアバッグ、シートベルト、エアコン等) C:シャシ系(ブレーキ、電動パワステ、車両安定制御装置等) P:パワートレイン系(エンジン、トランスミッション、HVバッテリ等) U:ネットワーク系(各ECU間の通信等) |
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左から3桁目 | 16進数(0~F) | 【例】 P01XX - 燃料、吸入空気計測の故障 P02XX - 燃料噴射系の故障 P03XX - 点火システム、失火故障 |
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左から4桁目および5桁目 | いずれも16進数(0~F) | 【例】 P0121 - スロットルポジションセンサ回路 不良 P0141 - O2センサーヒーター回路 P0151 - O2センサー回路 低出力 |
なお、それぞれのコードが細かく定められていますが、DTCはネットで調べることができ、『P0131』の内容は『O2センサー回路 低電圧』です。
OBD2スキャンツールとは
DTCのスキャンツールは、各自動車メーカーが自社ディーラーのために作ったものでは他社のクルマに利用できず、汎用タイプのものであれば、本体の他に各メーカーごとのプログラムを別途購入する必要があります。
その価格は、30~100万円。
もう少し安価なものであれば、10万円以下の汎用ハンドヘルドタイプのものや、パソコンにスキャン用ソフトをインストールし、PCとクルマのDLCを繋げてDTCを解析するものなどがあります。
しかし、どれも整備に使うプロ仕様のものがほとんどなので、素人が使いこなすのは、かなり難しいのですが、OBD2のデータをオンラインで見れる装置は一般にも販売されています。
OBD2のデータを見るには
個人でも、OBD2のデータを見ることができる装置は販売されています。
一般にOBD2汎用スキャンツールがアマゾンなどのネット通販で販売されており、装置をDLCに装着し、スマートフォンに専用のアプリをインストールしてからBluetoothでペアリングするタイプが人気のようです。
しかも同ツールは、故障時のDTC表示だけでなく、オンラインでバッテリー電圧や吸気温度、毎秒燃料消費など、メーターパネルには表示されない情報も瞬時にスマートフォンに表示されるので、日常でも十分に活躍することでしょう。
まとめ
エンジン警告灯は、ただクルマの不調を伝えるだけでなく、さまざまなECUが監視して故障箇所の特定をしてくれる重要なもの!
年々、ハイテク化が進むクルマは、整備する側に最良の情報を伝えるための技術革新も、続々と行われているのです。
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