オイルショックが終わった1980年代前半、日本車はターボとDOHCを中心としたパワーウォーズに突入し、電子制御技術も導入されて一気に高性能化の道をたどりました。特に新技術の導入が目立ったのはエンジン系とサスペンション関係。どのような新技術が80~90年代に導入されたのでしょうか。
日産のATTESA
日産がR32型GT-Rのために開発した電子制御トルクスプリット式フルタイム4WDが、ATTESA(アテーサ)です。
元来レース用車両として開発されたR32型GT-Rは、市販用にエンジンをデチューンしても、当時の自主規制値280psがギリギリ。
しかも当時としては280psでも、とてつもないハイパワーで、後輪だけでは駆動力を路面に伝達しきれませんでした。
そこで開発されたのがATTESAで、FR主体のフルタイム4WDです。
走行シーンに合わせてトルクを各タイヤに伝達し、RB26DETT型エンジンの出力を最大限に活かす設定でした。
ATTESAは他にも、R32型スカイライン GTS-4、U12型ブルーバード SSS-R、N14型パルサーGTI-Rなどスポーツ色の強い車種・グレードに搭載され、フルタイム4WDが高性能車の必需品である現代の風潮の先鞭をつけました。
日産のHICAS
1985年にモデルチェンジされたR31型スカイラインには、世界初の後輪アクティブステアシステムであるHICAS(ハイキャス)が搭載されました。
当初のHICASは、高速走行時にハンドルの舵角に合わせて後輪を同位相に最大0.5度までステアし、高速旋回時の回頭性と車体後半の追従性を向上させました。
なお、逆位相も含む4WSは1987年に発売されたBA5型ホンダ プレリュードが採用した機械式4WSが世界初となります。
ホンダのVTEC
吸排気の観点から見た4サイクルエンジンの理想的なバルブ開閉タイミング/バルブリフト量は、低回転時は短め/少なめ、高回転時では長め/多めとされています。
これを実現するために、カムシャフトの端に取り付けられるカムの横断面に円形と楕円形の2種類を用意し、エンジン回転数によってカムを切り替えてバルブ開閉タイミングとバルブリフト量を最適化したのが可変バルブタイミングリフト機構のVTECです。
1989年にモデルチェンジされた3代目、ホンダ インテグラに初搭載され、その後バリエーションを増やしながら進化し、現在では軽自動車も含む全ホンダ乗用車に採用されています。
ツインカムツインターボ
1970年代からトヨタはツインカム(DOHC)エンジンを、日産はターボエンジンをメインエンジンにしながら80年代パワーウォーズを牽引し、ツインカムとターボのどちらが高性能かといった論争が巻き起こりました。
そして1985年に発売されたツインカム24の1G-GE型エンジンにターボを2機装着した日本市販車初搭載のツインカムツインターボ、1G-GTE型エンジンがマークII3兄弟に搭載されます。
その後、日産もR32型GT-RにツインカムツインターボのRB26DETT型、Z32型ZにV6ツインカムツインターボのVG30DETT型を搭載し、ツインカム対ターボ論争は自然と終了する流れとなりました。
まとめ
1970年代後半の日本の自動車産業は排ガス規制とオイルショックの対応に追われ、パワーよりもクリーンな排ガスと燃費を優先した時代でした。
しかしオイルショックも終わり、触媒技術も向上して排ガス規制もクリアできるようになると、失ったエンジンパワーを取り戻す競走が勃発し、数々の技術が市販化されました。
当時、様々なクルマがハイパワー化されていく様子にワクワクした男子は、きっと多かったはずです。
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