プロトタイプ熱狂時代の終焉

出典:https://www.carthrottle.com/post/nZvLyF/

ニッサン・R382は、5リッターV12で600馬力のモンスターだった。最後の晴れ舞台1969年日本グランプリでポルシェ917を下し1.2フィニッシュを飾っている(出典:https://www.carthrottle.com/)

GR8型エンジンを搭載したR380は日産との合併後も開発が続けられ、”日産・R380”となってからは谷田部高速テストコースで当時の高速走行世界記録を一度に7つも塗り替えている上、最終型のR380A-Ⅲ型においては、出力は実に245ps/8400rpmにまで達していたと言われ、当時の2リッターエンジンとしては殆ど人知を超えたレベルでした。

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今は無き谷田部・高速周回路で、200マイルに及ぶ過酷なスピードトライアルに臨んだR380。(出典:https://www.carthrottle.com/)

様々な電子制御やVTECなど可変バルブタイミング・リフト機構が存在する現代ですら、2000ccNAで245馬力を出していれば高性能の部類と言えます。50年近くも前に、このGR8型は職人的メカ・チューンのみでこの数字を叩き出していたのです。

日産自動車がプリンス自動車を吸収合併したのは1966年8月。

その後、プリンス陣営も日産ワークスとして日産R380、R381、R382とプロトタイプ・マシンにより国内レースを席巻しますが、来る1970年代、自動車メーカー各社は”排気ガス規制の強化”という死活問題に対処しなければなりませんでした。

この為の技術的対応に専念する、というのを主な理由として、ビッグパワー・大排気量マシンによる対決へと変貌していたプロトタイプマシンによるメーカー対決は1969年の日本グランプリを最後に実質的な終焉へと迎う事となります。

しかし、僅かなオーバーラップを経てここからはツーリングカーによる黄金時代・もとい戦国時代が始まっていくのです。

 

S20エンジンの誕生

出典:http://www.earlydatsun.com/nissanc10.html

PGC10 スカイライン2000GT-R。その歴史は4ドアセダンから始まった。(出典:http://www.earlydatsun.com/)

国内レースのメインストリームがプロトタイプ・カーに移ったあとも、プリンス自動車のフラッグシップだったスカイラインはしたたかな進化を続けており、そんな中で”R38”シリーズの開発者であり、スカイライン開発主査である櫻井眞一郎氏は、レースカーの技術を市販車に注入した究極のGTマシンを作りたい、という構想を持っていました。

「高速ツーリングカーを作りたかったんです。鼻で感じるのではない『匂い』があるというのでしょうか。乗りこなすのは容易ではないけれど、好きな奴にはとことん好きになってもらえるクルマ。嫌な人はよそへ行ってくれるだろうという、男くさいクルマを作ろうと思っていました」

櫻井眞一郎氏談 Racing on No.444 26ページより引用

 

もとより市販乗用車の為の技術開発、そしてレースに勝つ事による宣伝効果がプリンスと日産がレースを戦ってきた大きな理由ですが、櫻井氏はそうしてレースで培ったDNAをそのまま市販車に注入することで、何かとてつもないモノが作れるという思いを持っていました。

ベースとなるスカイラインシリーズは「GC10型」に進化しており、櫻井氏はその最高グレードに位置するマシンの為、GR8型エンジンの最新テクノロジーをベースにした市販エンジン開発するという驚くべき道を選択します。

GR8型の”2000cc”という排気量はそのままに、DOHC24バルブという技術をそのまま投入。

さすがにドライサンプではないものの、前述の通りレースの世界ですら最先端だった技術を市販車に投入することは、インパクトという意味では過剰といえるものでした。

S20エンジンのカットモデル。(出典:https://en.wikipedia.org/wiki/)

S20エンジンのカットモデル。(出典:https://en.wikipedia.org/wiki/)

最新のレースエンジンで使われる技術を、今度は市販車としての強度・メンテナンス性・扱いやすさという実際にはレーシングカーより高いハードルをクリアする為に、一から設計された珠玉のエンジン。

こうして誕生した新グレード『GT-R』の為の市販エンジン、それが「S20エンジン」です。

S20エンジン主要諸元(KPGC10搭載仕様)

  • 冷却方式:水冷
  • 動弁機構:4バルブDOHCリフタ直駆動式直列6気筒
  • 内径×行程:82mm×62.8mm
  • 総排気量:1,989cc
  • 圧縮比:9.5
  • 最高出力:160ps/7,000rpm
  • 最大トルク:18.0kgm/5,600rpm
  • 燃料供給装置:ミクニ・ソレックスN40PHHキャブレター×3
  • オイル容量:6リットル
  • 寸法:810mm×720mm×630mm
  • 乾燥重量:199kg
出典:http://nzeder.net/blog/wp-content/gallery/inspiration/s20engine9.jpg

出典:http://nzeder.net/

そのフィーリングが感動的に優れていたことは、もはや当然でした。

3連装のソレックス・キャブ、DOHCであることを物語る大きなヘッド・カバー、そしてステンレス鋼製の等長マニホールドなど、まるで精密機械のようなその見た目も、現代のクルマでは成しえない、無機質な美しさが漂っています。

1969年2月、通常のスカイラインの2倍近い価格でKPGC10 スカイライン2000GT-Rはデビューを果たすのです。

 

まとめ

Photo by Matt Conaghan

S20エンジン、いかがだったでしょうか?

今回、前編はここまで。

後編では、S20エンジンを搭載したスカイライン2000GT-R(KPGC10)がいかにして戦い抜いたのか。

スカイライン神話と呼ばれているあの時代を、S20エンジンを通して振り返ってご紹介します。

 

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